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800文字日記/20220403sun/030

耳元で猫の声がする。9時。また寝る。頭を猫にひっ掻(か)かれる。14時。足を猫に噛(か)まれる。外は晴天だ。土手を自転車で立ち漕(こ)ぎする中学生を見る。音楽をかけると猫が部屋を走り回る。掃除をする。ロードバイクを担(かつ)いで外に出る。

山手へ向かう。日本共産党の街頭演説を通り過ぎた。紫色の紫木蓮や桃が咲く庭を通り過ぎる。ワイパーが立つ車とバケツがあるガレージを通り過ぎる。畑で老婆が腰を曲げて草を毟(むし)る。県道に出、峠(とうげ)を上る。桜が散った新緑を左手にペダルを踏む。

二つ目の橋で止まる。左へ行く。左右に畑と集落が点在する山間の道を走る。両脇の菜の花畑に紋白蝶(もんしろちょう)が飛び交う。左の部落の畑は連翹(れんぎょう)が満開だ。

ガードレールに沿った桜並木の向こうに集落が見える。橋の下に小川を整備する重機が見える。右奥に集落が見える。前方は山々に挟(はさ)まれた谷間(たにあい)だ。葛道(つづらみち)が伸びる。

坂が急になる。集落に入る。石垣に芝桜(しばざくら)が咲き、庭に紫花菜(むらさきはなな)と大犬(おおいぬ)の陰嚢(ふぐり)とノースポールと八重山吹(やえやまぶき)とチューリップを見事に植える家を通り過ぎた。息を切らせ集落の出口にくる。左に曲がる。急な下り坂になる。

ローギアにする。前傾姿勢になる。息があがる。真下を向き、車体を左右に揺らす。左右は段々畑だ。左の溝に孑孑(ぼうふら)が沸(わ)いた虫柱(むしばしら)が立つ。

隧道(ずいどう)の前に立つ。奥から轟音(ごうおん)が聞こえる。待つ。ライトをつけた車が走り去る。隧道の中は冷たい。吐息がこだまする。隧道を抜けると左に採掘場がある。前方から単車が迫る。二つ目の長く暗い隧道を抜けたガードレールの向こうは崖(がけ)だ。ここから急坂を一気に下る。

肘(ひじ)と膝(ひざ)を畳(たた)み、前傾姿勢になり腰を落とす。前方を注視する。左右ブレーキは手を掛けたままだ。カーブでは逆側に重心をかける。背後に気配を感じるが気のせいだと自分に言い聞かせる。風圧がすごい。左の藪(やぶ)から鶯(うぐいす)が飛び立つ。県道に出るまでノンストップだった。

安心した途端だった。車用の菱形(ひしがた)の反射板に前輪を直撃させた瞬間だった。パンクだった。(798文字)


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