見出し画像

「インセプション」から創作ヒントを / 20240626wed(4191字)


夕方に鬱を打開する案が思いつく。

犬を飼えばいい。

毎日犬と散歩する習慣を身につける。
なぜ猫にしちまったんだ!
と猫を見る。
「散歩できる猫だったらな」
横で丸くなる猫には言えない。

映画「インセプション(クリストファー・ノーラン監督)」を観た。
三度目。
前日に「五次元に収縮展開する章」のプロットを五本(章の分量的にはあと五本が必要だが)をどうにか書いた。アイデアを絞り上げた感じがあってテンションが上がって躁っぽくなった。眠れなかった。前日の揺りもどしなのか鬱になったのかも知れない。体調は梅雨も関係しているはずだ。薬も変えた時期だ。躁鬱の起伏の原因は、正直わからない。


映画は、夢の中の夢の中の夢に潜入する物語。
緻密なプロットと完璧な展開だった。

今般の小説「上陸者たち(第二部)」はメタフィクション(正確にはSFメタフィクション)だ。
⑴「第一部(200枚)」で楽しめる。
⑵「第二部(600枚)」で楽しめる
⑶「第三部(200枚)」で楽しめる。
⑷「第一部」「第三部」だけでも楽しめる。
⑸「三部作」を通しで楽しめる。
「第二部」は「三部作」では絶対的に必要な作品ではない(そのわりに一番熱を入れて書いているが)。しかし、読んでしまうと《上陸者たちの世界はガラリと変わる》ガジェット的小説。と言えばいいだろうか。

第二部のモチーフ:セナノート(五次元展開収縮する折り鶴)
登場人物たちは、セナがノートに書いた物語の登場人物(極端にいえばノートの切れ端に書かれた殴りがきのメモ)たちだ。彼らはセナノート(第二部)のそこかしこに点在する。

■問題が発覚。
本来であれば、登場人物たちはセナノートのキャラであるので、じぶんが生きる(セナが書いている)世界では、どんな奇妙な事象が起きても、それが奇妙とは思わないはずである。
唯一、二章の「ある時点=スーパー白馬事件」でリョウはその事象に気づく(セナのノートの中身を見てしまう)。

「おれってセナがノートに書いた文字なのか?」ってリョウが気づいた時点で「メタフィクション」となる。

僕(筆者である僕)が大失敗しかけた(いまから急いで修正をかける)のは「筆者が読者を意識(読者に小説をわかりやすく読んでもらおう!)するばかりに、物語の異変にキャラたちがいちいち反応していた」これは物語の矛盾だ。

■□■□■

⚠︎いま書きながらリアル修正しております。
順番としては
⑴この記事を書いた(1213字)。
⑵この部分を改稿中に思いつく。
⑶短歌の「解説:というか作品紹介」のアイデアがくっつく。
⑷例文でこねくりまわす。
⑸★今日の締め(2567字)➡︎このシーンを「五次元に収縮展開する章」のプロットのひとつに追加。


登場人物
忍(56歳:東京組の元オヤブン)
グシ(29歳:北陸組の大男)
辰(北陸組の若頭、26歳)
ヒロちゃん(21歳、忍の付き人)

場所:トンネルのなか
車=フィアット500(グシが運転する。助手席は忍。後部座席に辰とヒロちゃん。なぜか四人は鮨詰めで同席している)
時刻:キャラたちがそのシーンの中に存在することに「いつ」気づくか?


五次元に展開収縮する章 セナノート


(前から雪崩がやってきます。)

ところでおれたちはどこからおれたち?

「ところで、おれたちはいったいどこからトンネルに入ってたんだ? 」
 忍はトンネルの闇の奥をみつめて言った。
 グシはハンドルをにぎったままフェンダーミラーに一瞬、なにかが映ったのを確認した。「と…… だった。
「記憶にないな」
 忍が首を傾げてサンルーフを見上げる。すると、ウィィィィン。と勝手に開いた。
「まるで夢の始まり見たいですね」
 ヒロちゃんは笑った。
「うめえこと言うじゃねえか」
 忍は後部座席にふりむいてにやりと笑った。
「そういえばたしかに、おれたちがいつ始まったのか。記憶にない」
 辰は首をなんども傾げる。
「まえ! まえをみてくだせえ! 真ん前からな雪崩と大鳥居が、く組んず解れつに、こっちに押し寄せてきます…… 」
 グシは息をのんでハンドルを強くにぎった。
「まぁここはひとつ落ち着けや。トンネルのなかで前から雪崩と大鳥居が迫ってくる、それのどこがおかしいんだよ。そんなのいっつものことじゃねえか。なあヒロちゃん。おい急ブレーキはするなよ、トンネルで怖いのは玉突き事故だ。そっちのがおっかねえや」
 忍は大声で笑った。なあ、ヒロちゃんよ。ははは、そうですね。よくありますよね。サンルーフが捲れ上がって、カタカタと鳴った。辰は黙ったまま前方の真っ暗闇を見つめた。
「ああああァ! この、このままだと、な雪崩に車ごとの呑まれちまいますよ! 」
 グシはぶるぶるとさけんだ。
「いいじゃねえか。たかが雪崩ぐらいでビクビクすんねえ。雪崩はなんでも呑みこのむもんだ。それが雪崩だ。がっはっは。なあヒロちゃんよ。雪崩と大鳥居の一個や二個に呑みこまれて、おれらが死ぬわけでねえし」
「はい。雪崩や大鳥居に呑みこまれてもおれたちは死なないと思います」
 ヒロちゃんは答えた。辰は黙っていた。
 グシは目を丸くして悲鳴をあげる。
「グアァ…… 」
大鳥居の朱色の足が飛びだした雪崩は黄色いフィアット500を呑みこんで消えた……。
闇のなか深くから豪放磊落な笑い声が聞こえてくる。
「ときが逆にもどりゃあ、おれらは生き返るんだろ? 」
「はい。ときが逆にすすめば、ぼくたち生き返ります」
「それって、ビデオテープの巻き戻しみたいってことですか? 」


(以下、実験テキスト)

 。すまきてっやが崩雪らか前

「 ?かすでとこてっいたみし戻き巻のプーテオデビ、てっれそ」
「すまり返き生ちたくぼ、ばめすすに逆がきと。いは」
「 ?ろだんる返き生はられお、あゃりどもに逆がきと」
。るくてえこ聞が声い笑な落磊放豪らかく深かなの闇
。……たえ消でんこみ呑を005トッアィフい色黄は崩雪たしだび飛が足の色朱の居鳥大
「 ……ァアグ」
。るげあを鳴悲てしく丸を目はシグ
。たいてっ黙は辰。たえ答はんゃちロヒ
「すまい思といなな死はちれおもてれまこみ呑に居鳥大や崩雪。いは」
「しえねでけわぬ死がられお、てれまこみ呑に個二や個一の居鳥大と崩雪。よんゃちロヒあな。はっはっが。だ崩雪がれそ。だんもむのこみ呑もでんなは崩雪。えねんすクビクビでいらぐ崩雪がかた。かえねゃじいい」
。だんけさとるぶるぶはシグ
「 !よすまいまちれま呑のとご車に崩雪な、とだままのこ、のこ !ァああああ」
。たみつ見を闇暗っ闇暗っ真の方前ままたっ黙は辰。たっとタカタカ、てっが上れ捲がフールンサ。ねよすまりあくよ。ねすでうそ、ははは。よんゃロヒ、あな。たっ笑で声大は忍
「やねかっおがのちっそ。だ故事き突玉はのい怖でルネント、よなるすはキーレブ急いお。んゃちロヒあな。かえねゃじとこのもつっいのなんそ。よだんいしかおがこどのれそ、るくてっ迫が居鳥大と崩雪らか前でかなのルネント。やけ着ち落つとひはここぁま」
。たっぎく強をルドンハでんのを息はシグ
「 ……すまきてせ寄し押にちっこ、につれ解ずん組く、が居鳥大と崩雪ならか前ん真 !えせだくてみをえま !えま」
。るげ傾もどんなを首は辰
「いなに憶記。かのたっま始ついがちたれお、にかしたばえいうそ」
。たっ笑とりやにていむりふに席座部後は忍
「かえねゃじう言とこえめう」
。たっ笑はんゃちロヒ
「ねすでいた見りま始の夢でるま」
。たい開に手勝と。ンィィィィウ、とるす。るげ上見をフールンサてげ傾を首が忍
「ないなに憶記」
。たっだ ……と」。たし認確をのたっ映がかにな、瞬一にーラミーダンェフままたっぎにをルドンハはシグ
。たっ言てめつみを奥の闇のルネントは忍
「 ?だんたてっ入にルネントらかこどいたっいはちたれお、でろこと」

■□

■では、これを読者に「ああ、このシーンのこのキャラは11歳の男の子のノートの登場人物だからね。気づいてないんだよね」と思わせる描写は?

★はて、このシーンでは、四人はみな同じもの(闇のなかの雪崩)を見ているのだろうか?
じぶんの小説作品を筆者が解説するのは、野暮だ。
だが、プロット制作の一環として。

⑴グシは無免許(忍に実地訓練やれば乗れるんだといわれ運転している状況)だ。運転初心者で突如の前方からきた「ただの障害物」に焦ってのセリフなのかも知れない。
⑵忍は心のなかではこの異様な事態に焦っている。だが、オヤブンである建前上、皆の前で焦りの顔などは見せられない。だから部下のヒロちゃんにしれっと確認をしている。
⑶ヒロちゃんは素直に答えている。が、ヒロちゃんが答えているのは「玉突き事故」についてだ。
⑷辰は信じがたい光景を目撃しているが、グシも忍もヒロちゃんもどうやらこの前方からの雪崩は普通のことだといっている。それが真実なのか測りかねている。

■□

★今日の締め
⑴⑵⑶⑷が筆者が分類(きっちり把握)できれば、筆者はそのシーンをなんとか書ける。「なんとか書ける」というのは「読者が読んで、ある程度の読み応えがあるシーンが書ける」ということだ。

「インセプション」は、まず標的に、ここは夢だと気づかせて、じぶたちはあなたの味方です。と信じこませる。主人公たちは標的の夢の深層界への同伴者となって物語は次の階層の夢、次の階層の夢へと進むんでいく。
非常に巧妙にできている。


「インセプション」は「メタフィクション」ではない。「インセプション」は夢がモチーフ(物語の舞台)だ。だが、夢はテーマそのものではない。テーマは主人公と元妻との愛(妻は主人公との愛の夢に埋没して現実に戻れなくなった=妻が虚無に陥って自殺した過去、心の傷)だった。標的にも主人公にも希望を持たせた。オールハッピーエンドというのも高評価(ぼく個人的に)だ。


文芸のメタフィクションは諸刃の刃だ。メタフィクションが失敗すると物語に没入していた読者は興ざめしまう。

短歌:
「ここはどこ?」
言った時点で
ネタバレだ
虚実の境界
違和を揺さぶれ

解説:というか作品紹介
「虚人たち(筒井康隆・著)」
この登場人物たちは、みんなじぶんが「虚人たち」の小説内登場人物だと知っていて、敢えて「あー、おれってそういえば、この世界の脇役だったんだよねー。だから別に話しかけられないほうが、いいと思うんだー」みたいに「脇役を演じている脇役たち」が凄かった。この作品はメタフィクションの傑作中の傑作です。


この記事が参加している募集

よろしければサポートおねがいします サポーターにはnoteにて還元をいたします