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400字日記(リニューアル版)

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400字日記をリニューアル 日記に通底するテーマ 「すべては作家人生のために」 400字に入れること➡︎日々に見た感じたもの(具象) 四百字をどのような形式で見せるか? ➡︎「第…
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2022年10月の記事一覧

800字日記/20221030sun/114「冬の足音」

尿意で目覚めて急いでトイレに立つ。昼過ぎだった。明け方はなん度もトイレに立った。買ったばかりの掛けふとんがふかふかで温かでちょうど良く汗をかかないぶん尿が溜まったのか。 起きて冷蔵庫を開ける。朝食は奮発するか。昨晩、アイデアが浮かんだ自分への褒美だ。ソーセージにスクランブルエッグを焼く。これが褒美なんて情けない。ノルマは月末だ。カレンダーを見る。十月は三十一日あった。猶予が一日、延びた。 そうじを終えて、ひとふんばり書こうとパソコンをひらく。ネコが足に絡んでくる。心を鬼に

800字日記/20221029sat/113「秋のマルチタスク」

目覚めると正午だった。快晴。秋晴れだ。LED球がつけっぱなしだった。立つ。スイッチを消そうと伸ばした肩にするどい痛みが走る。針を刺すような激痛だ。肩はまったくあがらない。四十肩か。ロードバイクのメンテも必要だが自分のメンテもやらねば。お金がかかりそうだ。 そうじをする前に、洗濯機に衣類を放ってまわし、ホットプレートでみそ汁を湯煎しながらすこし書く。小ネギも入れようと思い、冷蔵庫に戻ってタッパーを取り出す。ネコは机の脇の寝床にもぐって寝る。 ひと段落。寝床のネコの写メを撮ろ

800字日記/20221028fri/112「たゆたう記憶とカメムシ」

ガシャン。下の道路でゴミを集積する金属製の網の箱が閉まる音がした。塵埃車がきたとなるともう昼過ぎか。目を開ける。今日はくもりだ。と思った矢先、おや? カーテンが開いている。枕元で猫がひなたぼっこして、ぼくを見ている。 夜明けにネコをベランダに出してそのまま洗濯機をまわしたのか。その時に窓を閉め忘れたか。としても、西のこの部屋のカーテンが開いているとは関係ないが。そう思っていると、芋づる式に昨日の記憶がよみがえる。 昨晩の深夜二時にみそ汁を作って食べた。具はキャベツと豆腐と

800字日記/20221027thu/111「流れる秋の景色」

目覚める。カーテンを開ける。快晴だ。やけに暑い。体が重い。昨日の夜に暖房をつけたせいか力が湧かない。携帯のアプリをひらいて一時間そのままの姿勢で麻雀をする。枕元でネコが甘えた声で鳴く。 「よっこいしょ」 と言って立ち上がった自分に肩を落とす。こんどは黙って布団を持ち上げる。足元に、黒い小さな魚の鱗のようなホコリを見つける。顔をあげるとエアコンがある。台所でフィルターを水洗いする。 キッチンのホコリを外へ掃き出そうと玄関を開ける。すると、裏山から涼しい風がびゅうと入ってく

800字日記/20221026wed/109「味のないおにぎり」

起きた。昼過ぎだ。天気は良い。体が重い。はて昨日が思い出せない。部屋に新しい掛け布団がある。買いに行ったのだ。スマホをひらく。自分の日記を見る。ロードバイクで走った、空のあおさ、風のつめたさ、ひろった手袋、缶コーヒーをくれた老人を思いだす。が、この湯気たつ美味そうなうどんははてどんな味だったか? 美味しかったはずだが。 あっぱれな秋晴れだが気分はふさぐ。齢からくるものか季節性のウツかわからない。こういった類のふさぎになると、決まって味覚が壊れる。なにを食べても美味しく感じな

800字日記/20221025tue/108「温かい缶コーヒー」

耳元でネコが鳴く。目覚める。窓の外で風がびゅうびゅうとうなる。そのうなりは春や夏とはちがう。乾いた冬の音だ。 ネコを追ってベランダにでる。朝焼けだ。肌寒い。毛布に包まりなおす。布団が欲しい。ネコが走りまわってうるさい。起きる。洗濯機をまわして、台所を整頓して、ネコのトイレを変えて、洗面台をみがく。納豆ごはんを食べると眠くなった。 正午に起きる。部屋の掃除は済んでいた。部屋をでて隣町にむかう。 刈り入れが終わった田を抜けて国道を南へはしる。曇っていて風は冷たい。 ゴム手

800字日記/20221024mon/107「するどい女将さん」

十月も終わりだが部屋はまだ暖房をつけていない。ネコは、夜、ぼくが起きているとブランケットを敷いたひざに乗ってくる。汗ばむと、おりて暗い隅に涼みに行く。 部屋のどこかにいるのはわかっているのだが、ぼくは不安になって、どこにいるの? と声をかける。夜も深まった頃合いだ。 関東から大分にきて二年目。突如、ぼくはなにかに突き動かされて、車で片道一時間をかけてペットショップへ行った。ウィンドウショッピングと思って足を運んだだけだったのだが。 「みなさん、おなじことをいわれます」

800字日記/20221023sun/106「マシューはマイ・シュー」

目覚める。九時。はだ寒い。体内リズムは戻りつつある。昨晩はあたたかかった。今頃は東京にいる予定だった。羽毛ふとんは春に処分していた。いずれ買わねば。 オナラがでる。朝方に頻繁に用を足したが、また尿意が催してトイレに行く。汗をかかないぶんが溜まったのか。ながい小便をする。昨晩に飲んだビタミン剤で小便の色が異様に黄色い。リポビタンDのようだ。 「こら、やめなさい」 股の下に前足をかけたネコが便器のなかをのぞく。レバーを引いて流すと、音でネコが逃げていく。 ドアを閉めて便座

800字日記/20221022sat/105「まるくなった背中」

先日、別府まで往復八十キロをロードバイクで走った。別府で温泉に浸かりたかったが、折り返し地点で温泉は眠くなる。用を済ませて帰ってきた。 途中、やはり銭湯に入った。バッグに洗面具はあった。のれんをあげると番台でみかんを売っていた。みかんの時期ですね。受付に五百円玉を置く。アパート近くのホームセンターにいまごろ並んでいるな。思いだした。 男湯ののれんを分ける。神棚の横に備え付けのせんぷうきが回っていた。だれも居ないので紐を引っ張って止める。コインドライヤーがある鏡台でスマホが

800字日記/20221021fri/103「冬の気配」

目覚めた。九時。秋晴れだ。が、からだは重い。朝までした読書のせいかもしれない。ネコが起こしにくる。寝たまま手を伸ばしてカーテンを開ける。畳に陽があたる。ネコが寝そべる。 目覚める。十時半。床から起きて、せんべい布団を干してネコにカリカリをやる。 「おはよう。今日もがんばろう」 あいさつをすると、ネコは勝手がすっかり分かったようにベランダにでて、ひなたで毛づくろいをする。その間にぼくは掃きそうじをする。終わると、僕の足にネコがまとわりつく。 「わかった。あそぼうか。出か

800字日記/20221017mon097/「心が揺れた一日」

目が覚める。蒸し暑い。昼前だ。窓を開ける。猫はベランダにでる。携帯を見るとYさんからメールが届いていた。こちらは曇り、次回から写メを送らないという。肩を落とす。 こちらは青く晴れた空だ。眺める。ベランダの洗濯機に両手をついて、自分をなんとか勇気づける。夏に二歳になったネコは元気いっぱいだ。僕の机やパソコンや天窓にまで飛びまわる。ネコじゃらしを咥えてくる。無視をしていると甘え声で鳴く。ボールを投げると狂ったように追いかけまわす。 畳の部屋であぐらを掻(か)いてネコとあそぶ。

800字日記/20221020thu/102「そうじのルーティン」

目覚める。十時。からだが汗ばんでいる。耳元ではネコの声が甘く鳴く。ネコにカリカリをあげる。ベランダにでる。完璧な秋晴れだ。ふとんを干してせんたっきをまわす。 部屋のそうじをする。カーテンをレールにひっかけて、邪魔なものは押し入れに入れる。床に散らかったスリッパ、和室にあるせんぷうき、ネコじゃらし、目覚ましどけい、読書用メガネ、本などだ。洋間の机やソファのイスに、藁(わら)でできたネコハウス、ネコが隠れる段ボール箱、ブランケットをのせる。天窓にこまごまとしたものをのせる。ダイ

800字日記/20221019wed/101「みかんの時期」

目覚める。昼よりもずいぶん早い時刻だった。顔をあげると机にメモ紙が見える。かかりつけの医師からの手紙だ。 睡眠リズムをととのえる方法 朝一定の時刻に起きて 日光を浴びる(くもりの日の窓辺で十分)。 2022 10/14 蘆宮 ひどい字だ。みみずがのたうっているようだ。医学部を出て、規模の大きなセンターの医局部長がかく字には見えない。が、こういう字は人間味を感じてぼくは好きだ。 話はシンプルに見える。が、問題がある。ぼくは毎朝一定の時刻に目覚めることができない。ぼく

800字日記/20221018tue/100「別府まで走る」

九時五二分。ロードバイクで別府にむかう。サイクルショップでタイヤ交換のためだ。片道四〇キロの道のりだ。階段をおりて外にでた。秋晴れだ。 となりの杵築市にきた。十時半だ。ハイペースだ。腰がいたむ。それからあやふやだった頭の地図が裏目にでる。平地の道をはしるはずが峠の国道を登っていた。後ろから十トントレーラーが数珠つなぎにやってくる。あおられる。怖くて歩道をはしる。右手に赤松温泉。寄りたい誘惑をふりきって峠をおりる。 海が広がる。別府湾だ。崖の下の浅瀬はマリンブルーだ。吸いこ