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800字日記/20221027thu/111「流れる秋の景色」

目覚める。カーテンを開ける。快晴だ。やけに暑い。体が重い。昨日の夜に暖房をつけたせいか力が湧かない。携帯のアプリをひらいて一時間そのままの姿勢で麻雀をする。枕元でネコが甘えた声で鳴く。

「よっこいしょ」

と言って立ち上がった自分に肩を落とす。こんどは黙って布団を持ち上げる。足元に、黒い小さな魚の鱗のようなホコリを見つける。顔をあげるとエアコンがある。台所でフィルターを水洗いする。

キッチンのホコリを外へ掃き出そうと玄関を開ける。すると、裏山から涼しい風がびゅうと入ってくる。ネコがトイレと風呂場の隅に隠れておどおどする。ネコはまだ裏手に出たことがないのだ。

部屋で悶々としていてもしょうがない。出かけよう。塩おにぎりを作る。夏から残ったカルピスを水筒に入れる。気が変わる。机に座ってものを書く。

ネコが棲家から起きだす。あくびをしてベランダに行く。陽を浴びると擦り寄ってくる。体が痒そうだ。毛を梳かすと気持ちよさそうにゴロンと腹を見せる。

伸び伸びするネコを見てまた気が変わる。やはり気晴らしに外にでる。

ペダルを踏む。茶色い畑で、ひこうき雲で、河原でまた立ち止まる。春からずいぶんと大きくなった川鵜が西へ羽ばたく。鴨は数十把まとまって水面に浮かぶ。コンクリート橋、水面に映る夕陽、田んぼの刈り入れ後によく見る白いラップに巻かれたヤツ。ググる。稲ホールクロップサイレージというそうだ。刈り入れた跡に群がるゴイサギ、阿修羅の道祖神、稲刈りの老婆、秋菊、コスモス、秋の夕陽に染まる。

稲ホールクロップサイレージ
扉に「辨天宮(べんてんぐう)」と彫ってあるのもある…
馬に乗る阿修羅。道祖神?


国道を出て、海沿いを北へと走る。空港を過ぎて、店休日と書かれたプレハブの唐揚げ屋を過ぎた十字路までくると、陽は落ちて、辺りは急に暗く、肌寒くなった。パーカーを着る。来た道を帰る。空港を過ぎて漁港に架かる橋を渡っていると別府大分方面へと帰る車のテールランプが数珠につながる。


寒い。体が冷える。けど外に出て良かった。秋を感じた。

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