Aoi

大学時代から自分と家族関係の問題に対処するため、独学で臨床心理学、心理療法等を学び続け…

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大学時代から自分と家族関係の問題に対処するため、独学で臨床心理学、心理療法等を学び続けてきました。苦悩を伴う出来事や経験は、最終的には内なる宝に変容していきます。それは、奪われることのない独自の宝珠であり、その内的成長過程をサポートし合い、一緒に学んでいけると嬉しいです。

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セラピストの立場について

わたし自身が経験を通して考察した「セラピスト」という立場について、記述したいと思います。 わたしは、家族問題を抱えた環境で幼少期から10代を過ごしてきました。 わたしの母は夫婦・嫁姑関係性の問題に苦悩する状況であっても離婚しない代わりに、 自分の子どもに対して過度の期待と干渉を向けるようになっていきました。 それは「子どものために辛くても頑張る」という、ある種の自己犠牲的・献身的愛情表現、ともいえるものでもありましたが、 高校生のわたしにはこの過干渉によるストレスに耐え切

    • ギフトと自由 ―時空を超えて物語がつなぐ力― / 「ファンタジーと言葉」 ル=グウィン

      ある物語、歌(詩)、絵に出会ったとき、 これは、わたしのことをいっている―― わたしだけにわかる、きわめて個別の、何らかのサイン―震撼を受け取る。 わたしの物語だ。わたしの歌だ! 自分の運命を予見する――わたしの、わたしたちの未来の体験を、直観的、電撃的に受信する。 運命の輪がある方向に向かって、グルっと、ゆっくり動き出す。 ある物語によって、自分の意識の深い部分で、何かが息を吹き返すように、動き出す。ある自律性を持って。 ル=グウィンの晩年の作品「西のはての年代記Ⅰ~

      • その人がその人でいること ―存在と経験の価値― / 「イヤシノウタ」 吉本ばななさん

        吉本ばななさん「イヤシノウタ」から。 ――わたしもわたしの書いたものも、誰のことをも癒すことはできない。 ただ、その人の中に埋まっている、その人だけの癒しのコードに触れて、活気づけることはできる。 自分の足で歩む力を奮い立たせることはできるかもしれない。 わたしにできるたったひとつのことは、そのことだ。―― ああ、ばななさんの言葉だ、あのまっすぐで、純粋なふくらみのある言葉たちだと、心にじんわり、懐かしい感覚がよみがえってきました。 10代、20代の頃は、吉本ばななさんの

        • 小説を書くこと ―創作行為と毒素ー / 村上春樹さん×河合隼雄さん 対談

          わたしは村上春樹さんのファンではない(好きな作家として挙げることはない)にもかかわらず、「羊をめぐる冒険」以降の作品(エッセイは除く)は、大体読んできています。 ファン層以外でも継続して読ませてくれる。これは、すごいこと。 ファンとは違って、彼の作品だから読むという強い思い入れや期待もなく、基本的には、友人か図書館で借りれたら読む、読みたいものがなくなれば読む、程度の関心しか持っていないのですが―― こんな読者にも、他では味わったことのない、不思議な感覚(テイスト)を覚え

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        • ギフトと自由 ―時空を超えて物語がつなぐ力― / 「ファンタジーと言葉」 ル=グウィン

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          魔女修行 ―簡単なことをやり続けること― /「西の魔女が死んだ」 梨木香歩さん

          梨木香歩さんの処女作「西の魔女が死んだ」は、河合隼雄さんに見出され出版、のちに映画化もされた有名な作品です。 わたしもこの作品に感動しました。わたしは、自分の心に強く深く響いた本とは、長くお付き合いしたいと思っています。 そうした本との出会いを、その一冊一冊との読書体験を、大切にしたい。 この作品の次に、梨木さんのエッセイ「春になったら苺を摘みに」「ぐるりのこと」を読み始めたのですが、とても驚きました。 梨木さんは、聡明で思慮深い女性だろうとは予想していましたが、その思考運

          魔女修行 ―簡単なことをやり続けること― /「西の魔女が死んだ」 梨木香歩さん

          固有のファンタジーを生きる ―「わたし」と「わたしを超えるもの」とのつながり― / 河合隼雄さん 語録②

          前回の記事に続き、ファンタジーについて書いていきたいと思います。 人は、自分の人生の物語をつくりながら生きていますね。 現実の生活で起こる大小の出来事を、これまで構築してきた認知・信念体系と整合性を取りながら組み込んでいき、意識的にも無意識的にも、取捨選択と、何らかの意味付けを行っています。日々、人生脚本をつくり続けている。 河合隼雄さんは著書や講演で「ファンタジーをもつこと」「ファンタジーを生きる」など、現代における「ファンタジー」の重要性をいわれています。 なぜ「フ

          固有のファンタジーを生きる ―「わたし」と「わたしを超えるもの」とのつながり― / 河合隼雄さん 語録②

          イデオロギーからコスモロジーの転換 ―自我形成とsoul-making― / 河合隼雄さん 語録①

          心理療法家・河合隼雄さんが他界されて13年経ちますが、河合さんが遺されたもの――その生涯をかけて取り組まれた活動は非常に大きいものと改めて感じます。 その特徴として、ご自身の専門分野を基軸として、研究領域を拡大され日本文化の研究にも貢献されたこと、また、西洋と東洋、意識と無意識、個人と社会などの「橋渡し」役として、一般人向けの講演や執筆活動にも熱心に取り組まれたことが挙げられます。 やはり、日本初のユング派分析家としてのアカウンタビリティ(説明責任)を強く感じて実践されてこ

          イデオロギーからコスモロジーの転換 ―自我形成とsoul-making― / 河合隼雄さん 語録①

          夢分析 ―創造的な退行と内的世界の体験― /「ユングと心理療法」 河合隼雄さん

          河合隼雄さんの著書「ユングと心理療法 心理療法の本〈上〉」(講談社プラスアルファ文庫 1999)から、主にユングの心理療法に対する根本的な考え方と、ユングが重要視した「夢」の分析について紹介します。 まずは、「文庫版まえがき」から、世間のカウンセリングや心理療法への関心の高まりと、その実態の認識との解離に対する、河合隼雄さんの想いが綴られています。 「カウンセリングによる成功例をついつい書いてしまい、読者の中に『こんないいことを自分もやってみよう』と思う人が出てくるのも当然

          夢分析 ―創造的な退行と内的世界の体験― /「ユングと心理療法」 河合隼雄さん

          フォーカシング ―やさしさの関係に包まれる体験過程― その1

          「フォーカシング」とは、自分にやさしく接触(コンタクト)する態度で、自分の身体に注意を向け、「フェルト・センス」と呼ばれる、言葉になっていない、微妙で意味を含んだ身体感覚を丁寧に感じて、それを言葉で表していくプロセスです。 フォーカシングの創始者ユージン・ジェンドリンは、シカゴ大学のロジャーズの元で学び、ロジャーズの研究グループによるカウンセリングの成功と失敗の比較研究に参加し、この研究から、成功と相関性があるのは、クライアントが「何を」話したかではなく、「いかに」話したか

          フォーカシング ―やさしさの関係に包まれる体験過程― その1

          「世界の中にありながら世界に属さない」 吉福伸逸さん

          吉福伸逸さんを知ったのは、「仏教のコスモロジーを探して―深くて新しい仏教のいま―」という仏教をめぐる田口ランディさんの7名の対談集でした。 ―菩薩が「一切衆生救済」のために戻ってくる、「人を救う」という発想が入ってきた途端に、僕は仏教は堕落したと思う ―「人を」としたところで、自己と衆生という分裂を起こしている この吉福伸逸さんの発言は、衝撃的で強烈な印象を与えました。他の対談の方よりも鮮烈に! 「菩薩の請願」の発想は人を癒すことができない―― わたしは何度読み返しても、

          「世界の中にありながら世界に属さない」 吉福伸逸さん

          「<こころ>の軌跡」 近藤章久先生

          今回は、精神科医の故・近藤章久先生の著書「<こころ>の軌跡」について、ご紹介したいと思います。 近藤先生の「<こころ>の軌跡」を一読した時に、 すごい本に出逢った、わたしにとってとても大切な本になる!と直観的に感じたのです。 前回の村瀬嘉代子さんの著書との出逢いにも似た感覚でした。 ホーナイの精神分析と禅精神科医でカリーン・ホーナイの高弟である近藤先生。 ホーナイの精神分析は、フロイトの理論を一部批判し、人はこれまで自己防衛反応によって作り出してきたイリュージョン(幻想)を

          「<こころ>の軌跡」 近藤章久先生

          村瀬嘉代子さん ―その1

          臨床心理士(公認心理師)の村瀬嘉代子さん(以下、敬称は「さん」で統一します)は、臨床心理士を含め対人援助職従事者には非常に著名な方であり、長年心理臨床の第一線で活躍しておられる方です。 わたしは村瀬さんの心理臨床の事例記事を読んで感銘を受けて、ファンのように次々と著書を読んでいきました(笑)。 わたしと同じような方は多くいらっしゃると思います! 最初は、村瀬さんの文面から伝わってくるお人柄や、心理臨床への強い想いや一貫した真摯な姿勢に、ただすごい――と純粋に感動しました。

          村瀬嘉代子さん ―その1