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硝子の薔薇

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レズビアンだと噂の少女瀬良清香が妙に気になる日崎美晴。あることをきっかけに話すようになり、彼女に隠された事実を知っていく。
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硝子の薔薇 11

硝子の薔薇 11

 そのまま私たちは鈴子ちゃんの家へ向かった。鈴子ちゃんが私の家に来ることはあっても、私が鈴子ちゃんの家に行くことはあまりないのでどこか新鮮だ。

 鈴子ちゃんの家は古いアパートの小さい部屋。お母さんが帰ってきている姿はめったになく、ものをあまりおいていない。あるのはギターと布団と、机と大きな辞書だけだ。

 鈴子ちゃんはぐったりしているさやかちゃんを布団に寝かせ、そして慣れた手つきでけがの処置をす

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硝子の薔薇 10

硝子の薔薇 10

 それからしばらく、清香ちゃんとは会えず、そしてLINEも来なかった。一度だけ「今何してる?」とか送ったけど既読も付かないままだ。最後のあのぎこちない雰囲気といい、なにかあったんじゃという心配もあっただけに何をしてもそわそわしてしまい、落ち着かない。

 鈴子ちゃんとは相変わらずだけど、「あれからあの清香ちゃんどうしてんの?」とかそういう話は一切出なかった。私からしてみようかなとも思ったりしたが、

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硝子の薔薇 9

硝子の薔薇 9

 しばらく下らない話をしていたが、そろそろいい時間だし帰ることにした。

 そして、清香ちゃんと並んで帰っていたときのことだ。

「おっ、美晴じゃん」

 前から見覚えのある背の高い人が。間違いない、鈴子ちゃんだ。デート中らしく知らない女の人が彼女の腕を抱いていた。

「あっ、やほ・・・」

 よりによってこんなデート中に会うだなんて・・・。本当に、1番遭遇したくない場面だ。

「スズ、この子誰よ

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硝子の薔薇 8

硝子の薔薇 8

 もやもやした気持ちのまま、説明会は進んでいき、そして終わった。

 バス停でバスを待ちながら、今日のことを話す。

「あー、終わったね。お疲れ様!」

 あれから清香ちゃんはずっと楽しそうだった。バンドの演奏で相当テンションが上がったんだろう。

「うん。お疲れ様」

「ほんと余計に勉強頑張んなきゃな-って思い始めた!」

 すごいなぁ。やりたいことが明確なんだな、高校で。

 私なんか、大学進

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硝子の薔薇 7

硝子の薔薇 7

 それからしばらくして、8月2日。東高の説明会の日になった。

 あの日から清香ちゃんとはLINEはちょくちょくしていたものの会ってはいなくて、実に1週間は会っていない。

 意識をしていなくても早くに目が覚めて、意識をしていなくても身支度に時間をかけていた。

 いつもだったら適当に髪の毛を縛っていくのに。でも、たぶん高校の先生たちは見た目とかも見てくるだろうから、変に気合いが入っていてもおかし

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