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ねこのちょきんばこ(K.Iくん)

この記事は2020年8月19日にホームページにて掲載したものです。

きょうは、ちょきんばこを作りたいんや」

Kくんが何かを「作りたいんや」と言った日には、僕は覚悟を決める。(笑)


>>おかしのいえ(2019/8/9)


腕まくりをして、エプロンの紐をキュッと締め直す。よし、どこからでもかかってこい、と気合を入れる。(笑)

「お金がたまる金ピカの貯金箱を作りたいんや。」

Kくんは500mlのペットボトルを大事そうに抱えて持ってきた。今回の設計図は工作の本ではなく、彼の頭の中にあるようだった。

「ここに切れ込みをいれて、お金を入れられるようにしたいから。手伝ってくれ。」

そう言ってお金を入れる穴の位置を指で示した。
いつもの僕だったら「はいはーい」だなんて言ってカッターナイフを取り出すんだけど、相手はKくんだ。
彼の頭の中の綿密な設計図とずれると大変だ。(笑)

切り込みを入れる箇所に、Kくんはペンでガイドを書いた。それをなぞって僕が切った。

「ねこの形にしたいんや。色は金。だから金色の折り紙を貼りたい」
いい考えだね。金色の猫。いかにも、お金がたまりそうなデザインだね。

意欲的なKくんに、折り紙でなく紙粘土を提案してみた。そこにアクリル絵具の金色(たまたま前日に買ったのだ。Kくんなんだかツイてるね。)を塗り重ねるなんてどうだろう。

Kくんは「いいかんがえや」と気に入ってくれた。


紙粘土をつけるのにはすこしコツがいる。しっかりとこねて、紙粘土が乾かないうちにくっつける。乾いてきたら水を少し取り、湿らせながら混ぜる。時間との勝負だ。
Kくんは、ぼろぼろに乾いていく紙粘土に向き合い、一生懸命に形を作っていった。とちゅう「むりや」と弱音を吐きながらも(笑)、最後まで諦めずにやり遂げたよ。
(ぼろぼろに乾いていく紙粘土と、ぼろぼろに崩れていくKくんの心を見かねて、妹のHちゃんがサポートしてくれてた。)


紙粘土が乾いたあとで、いよいよ金色の絵具を塗りはじめた。金色の絵具だなんて!なんて贅沢なんだろう。ひと昔前にはこんなもの簡単に手に入らなかった。いい時代だ。


なんとなく遠慮しながら、絵具をうすーくうすーく伸ばしていくKくん。気を遣ってくれているのだろうか。「遠慮なく使いなよ」と僕はどんと構える。大富豪の気持ち。


金の絵具が乾いた上に、今度は銀の絵具で手足としっぽを描いた。
僕はてっきり、お金を入れる穴が前面だと思っていたので、「後ろからお金を入れるんだね」と声を掛けると、Kくんはこんなふうに理由を話してくれたよ。

「誰かが家に入ってきて、この猫を見つけるとするやろ。それでお金を入れるとこが見えてると、貯金箱やとバレて盗まれてしまうやろ。だから後ろなんや。」

とてもよく考えてある。笑

仕上げに、いかにもお金がたまりそうな目つきの顔を描けば、金色の猫の貯金箱のできあがり。
りっぱな貯金箱ができた。大金持ちになれそうだね。


p.s.
金色の絵具を塗るときに、机に新聞紙を敷いた。
あとから写真を見て気づいたんだけど、たまたま彼が選んだ新聞の、たまたま開いた広告面。
そこにはなんと、ロレックス。
こんなことってある?
Kくん、早くも金運を呼び込んでるんじゃない?(笑)

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