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せけんデザインとは

社名にこめた意味について

富山にUターンした後、「ワールドリー・デザイン」という会社をつくりました。全国津々浦々の「まちづくり」に関わってきた経験をもとに、大好きな写真や文章やデザインを通じて、地域をエンパワーメントできるような仕事をしたいと思い、2011年に起業しました。

会社のWEBやブログにも書いてはいますが、改めて、社名にこめた思いを整理してみたいと思います。

グローバルはほんとうに素敵なのか

「ワールドリー(Worldly)」とは、世俗的、俗世の、世間のという意味。どちらかというと泥臭くて野暮なイメージの言葉だと思っていました。

社会人になってすぐの頃、「Think glovally act locally」という言葉を知りました。「地球規模で考えながら、しっかりと地域に足を付けて活動する」という素敵な意味に取れますよね。理想は高く持ちながらも、活動は足もとから地道にというふうにも解釈できる、「まちづくり」をやっている人の多くが好きなフレーズです。

ある時、ふと、「glovally」に考えるってどういうことだろう? と考えたんです。市場や経済はどんどんグローバル(global)になっていますから、今や、グローバルに考えるのは普通なんじゃないかな?。わざわざスローガンにして大切にすべきなんだろうか?と。

確かに、技術革新が進み、海外の人と気軽につながれたり、好きなものを共有できたりするのはとても素敵なことですよね。でも、本当によいことばかりでしょうか? わかりやすいものや強いものが、世界じゅうに広まる一方で、ある地域でしか通用しない考え方や価値、歴史、文化などの凸凹がどんどん見えなくなり、いつのまにかなくなってしまうのではないか?という危機感も覚えたんですね。

あれ? グローバルに考えるって、世界を画一的に捉えるってことでもあるんじゃないだろうか。「Think glovally act locally」は、経済や技術だけでなく、考え方を世界フラットにした上で、ローカル(local)で活動するっていうふうにも取れてしまう。・・・それって、何だかめちゃめちゃ危険な感じがする!

のどかな田んぼの真ん中に、グローバル企業のロゴの入った自販機のある風景は、すでに誰もが見慣れた風景になっていないでしょうか。便利で楽しく、物質的に豊かになったことは確かですが、それらと交換に失っているものもあるのではないでしょうか。世界標準を世界の隅々の地方に持ち込むことで、そこにしかなかった価値や存在が消えてしまうのは、とても味気ないと思うのです。

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ワールドリーという価値観

「世界を思って地方で活動する」というだけでは、なんだかダメな気がする・・・。そんなことを何年も、もんもんと考え続けながら、東京⇔地方を行き来する日々を送っていました。

そんなある日、栃木へと向かう東武鉄道のなかで読んだ本の中で、「ワールドリー(Worldly)」という言葉を知りました。

世間とか世俗とかいう意味ながら、広い視野も示すのだと書いてあり、「人生経験が豊富で、かつ洗練されており、地に足が着いている」という意味もあると紹介されていました。

「これだ!」と思いました。大切なのは地方で活動することそのものではなく、地方にある無数の小さな営みや存在にしっかり目をむけながら活動していくことなのだ!と、目の前の霧が晴れるようでした。

もし、会社をつくるときがきたら絶対「ワールドリー(Worldly)」を使うぞ!と、ほのかに柿の種の匂い漂うボックス席で、誓ったことを覚えています。

小さくても粒のたった存在を大切にしたい

日本の津々浦々にお邪魔しながら、毎度感じていたのは、そこに住む人にとっては身近すぎてあたり前で、見落としそうなくらいたわいないものでも、よそ者の私の目にはとても力強くて魅力的な宝物に映るということでした。

そういうものたちは大概、まったく宝物のそぶりをしていません。びっくりするほど無防備に、そしてあきれるほどたくさん、ごろんごろんにその辺に転がっています。周りの人たちもほとんどそれに意識を向けていません。(意識を向けている人もいましたが、少し角度が違うな~と思っていました。これについてはまた別の機会にお話してみたいと思います)

そして、これらは、止まらない均質化によって、世界共通の愉快なものたちと置き換えられて、減少の一途をたどっているのです。

時間も空間も、そして人間関係も限られた中ですが、そういうものを全力で探して見つけて磨いて愛でていかねば!・・・そう思ったのが、ワールドリー・デザインをつくるきっかけでした。

最初は、たったひとりで「せけんデザイン」と名乗ってきましたが、来月で、とうとう10期目となります。吹けば飛ぶような活動に可能性を感じて集まってきてくれたメンバーたちは、年代も特技も役割も違うけれど、地に足を付けて、大切なこと・もの、ひとつひとつに向き合って、その価値を認めながら、よりよいかたちにしたり、愉快に使ったりしていきたいという気持ちは同じだと思います。

これからもゆるゆると、土地や人々が持っている力を引き出しながら、面白くて楽しくて温かい地方をつくっていけたらと思います。


起業の前後で書いた他サイトの記事も、もしよければご覧ください。
こちら、けっこう赤裸々めです。


起業のbefore・afterがわかる、日々のつぶやきは以下のブログに。富山に移住直後は毎日何本も書いていましたが、最近は1カ月に数本のゆるゆる更新です。

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