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Stjomulaus Nott

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眠れない夜。包み込んでくる夜陰。 でもそれは怖いことじゃない。 時にうずくまり、時に手を伸ばし、時に思考を巡らせる。私を形づくる大切な時間。
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記事一覧

辿るみち ただ一歩まえを

月あかり わずか

踏みだす恐れも また同じく

踏みはずす楽しみも そこに

Night World 〜第四夜 暗い森で 〜

Night World 〜第四夜 暗い森で 〜

ほら。見上げてごらん。
お父さんが見てくれているよ。
初めて手を繋いだ帰り道でも
些細な喧嘩から仲直りした河原でも
大切な言葉をくれた湖岸でも
あなたを抱き上げた、あの日の夜も
いつだってあなたのお父さんは
夜空と一緒にいたの。
だから空さえあれば大丈夫。
私もあなたも守られている。
そう心配なんていらないよ。
きっときっと大丈夫だから。

それじゃあ。ねえ、お母さん。
宙さえ見えない今の私は

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Night World 〜第三夜 流れる星のもとで 〜

Night World 〜第三夜 流れる星のもとで 〜

どうして。
こんなことになってしまったんだろう。

私の腕の中で彼女は瞼を閉じ横たわり、苦しげに呼吸を荒げている。その動きが、息が少しずつ弱まっていることが。触れる細い肩から、少しずつ少しずつ温度が失われていくことが。
どうしようもなく怖くて。怖くて。怖くて。

だれか、たすけて。
彼女を。私を。わたしたちを。
どうかお願いだから。いい子になるから。
ほかはもう、望まないから。
だれか、だれか。お

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Night World 〜第二夜 導き手からの試験〜

Night World 〜第二夜 導き手からの試験〜

「うわぁ…」

星の扉を潜り抜けると、砂浜とはまったく異なる固い煉瓦の踏み心地。花でしょうか、それとも果実?どこからか漂う甘い香りが、微かに。そして何より、目の前に黒々と広がる夜の森が、私たちを圧倒しました。その中を一本の煉瓦道がまっすぐに伸びています。

「ねぇ。あれは遊園地かな?」

隣で彼女がつぶやきました。道の先には色とりどりのイルミネーションがまとわり光る、私たちの2倍の高さはあろうかと

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Night World 〜 第一夜 星のとびら 〜

Night World 〜 第一夜 星のとびら 〜

重い扉を開くと同時に、清冽と呼ぶにふさわしい冷たく容赦ない空気に包まれた。鼻の奥がツンっとします。私は今一度、厚手のマフラーをゆるゆると整えて、服と身体の間にあるほんの小さな隙間へ冷気が忍び込まぬよう、無駄な抵抗を試みました。

気持ちが負けてしまわぬうちに、扉を閉めて夜の闇へ。かちゃりと小さな音を立てて鍵を閉め、くるりと振り返って歩き出します。いつもの通い慣れた夜の道。いつか父さんに教えてもらっ

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 #Walpurgisnachtで聴きたい10曲

#Walpurgisnachtで聴きたい10曲

Aimer Hall Tour 2022 “ Walpurgisnacht ”

ツアーが始まって埼玉県三郷を皮切りに、
北海道・静岡そして神戸2days !
今日時点で5公演が開催されました。

神奈川からツアーが始まる私としては、Twitter上で交わされる歓喜の声に「良かった!」と思いながらも、一日千秋の思いで待つことしかできず。

うらやましい!はやく自分もライブに行きたい!
Aimerさ

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カタチにできない コトバにならない

けれどもソコにあるおもい

アオのひかりにみちびかれ

もぐり さがし ひろっては すてて

そのうちにふとおもいだす

つたわりつながりあたたかいのは

けしてアタリマエじゃないことを

だからタカラモノになることを

#Aimer

神でなく人にこそ

神でなく人にこそ

太陽の下では癒されない傷を、夜の闇なら包み込むなんてまやかしだ。すべてを白く染めて隠してしまう雪と同じく、闇はその黒の中に傷を隠すにすぎない。

視界から隠れ、自らでさえ見えなくなっても、痛みは鋭く、時に鈍く神経を伝う。そこになおも痛みの元凶が居座ることを愚直なまでに主張する。

闇の中に誰かがいること。だから不安。
あるいは誰もいないこと。だから不安。
頼りとなる人が寄り添うこと。だから安心。

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Feel like leaving it to the flow

かなしみも、よろこびも。こわいくらいに猛スピードで流れていく毎日だけど。
ときに自分を許せるときくらいは、流れに任せたいものです。
#Aimer #おもかげ

思いがけず暖かな師走の雨に
卯月の雨を思い出す。

傷ついて折り畳まれたあの翼は
怯えず空をつかめているだろうか。

果てない闇が広がる空でも
その先にある陽を目指して。

家路を辿る

家路を辿る

日の暮れかけた歩道脇の駐車場で、兄妹が縄跳びの練習をしている。交互にひとつの縄跳びを使い、二重跳びの回数を競っているらしい。歳のころは中学、いや小学校の高学年くらいだろうか。

順調に回数を重ねられる兄に対し、妹の旗色はすこぶる悪い。跳べて四回、いや三回。一度の挑戦で毎回、十数回を跳ぶ兄とは比べるべくもない。

喧嘩にならなければいいけど。
そんな風に思っていると、そのうち妹は片手に両方の持ち手を

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まよいご

まよいご

あなたに届けたはずの声は
いつの間に迷子になっていたの
ひかりを嫌い覆った布が
あなたの居場所を隠してしまった

あなたに贈ったはずの言葉は
いつしか意味を変えてしまった
込み上げるものを抑えた果てに
ほんとが何かもわからなくなった

教えて 信じられる私を
あなたが寄り添い あたためた
姿を変えるまえの私を

聞かせて たとえ残酷でもいいから
あなたが瞳と記憶に刻んだ
あるがままの私の姿を

選手宣誓

選手宣誓

新たに出会った病のせいで、私の生活も気づくと大きく変わってしまった。
毎日をのんべんだらりと暮らしていると、世界はすぐに私を置いていこうとする。
もしかしたら置いていかれても困らないかもしれないが、なんだかあわてて情報を得ようとパタパタともがいてみる。

だいたいが、あわてて情報を「もっともっと」と欲しがる時点で、すでに負けているのだ。
泥縄とはよく言ったもので、勝負はすでについている。
それなら

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記念日

記念日

今日は結婚記念日。
結婚というイベントは瞬間だけど、
そこへ向かい、そこから続く日々は生活そのもの。

振り返るとなんてことない出来事ばかりで、
だからといって代替なんてきかないことばかり。
お互いにお互いだったから、こうなった。
そんな当たり前の特別ばかりだと思う。

たかが13年。偉そうな格言なんてありえない。
されど13年。積み重ねてきた大切な時間。

当たり前で流れていきそうな時間や感情が

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