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砂の城(創作大賞投稿作品)

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6年前に小説家になろうで書く予定だった消された恋愛話を改稿して纏めております。【創作大賞2024初参加】 暗い部分も多いですが、人の感情揺れ動きとリアル重視。 ハッピーエンドです…
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#日常の幸せ

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第39話 忍sideー 未来へ

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第39話 忍sideー 未来へ

「結局、麻衣ちゃんと一緒には住まないのか?」

 いつもならこの時に呆れた、と言われるのだが、弘樹はいつもとは違い笑顔で妙に寛大だった。多分、麻衣の態度が変わった事が大きな要因だろう。
 麻衣はなんだかんだで、弘樹の嫁である雪ちゃんの親友。──そりゃあ旦那としてはどちらの事も心配に決まっている。

「まあ、結局はこのスタンスが俺達にとって一番いいからな。雨宮“先生“、いつもご馳走様」

「全く……

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第40話 傷跡

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第40話 傷跡

「佳奈ちゃんなんだけど、来月中旬に退院して、予定通り児童保護施設に行けるみたいなんだ」

 私は弘樹さんの報告を聞いて自分のことのように嬉しくなった。彼女は自らの力で薬が無くても前を向いて歩けるようになったのだ。
 弘樹さんは麻衣ちゃんのお陰と言ってくれるが、私はただあの子に過去の自分を重ねてしまっただけ。
 例え彼女がこれから先、苦労しても親を恨まないで欲しい。誰に何を言われても、子供には罪はな

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第42話 これから【完】

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第42話 これから【完】

 雪ちゃんの妊娠は半年前に判明されていたのだが、安定期を待ってこの企画をずっと考えていたらしい。
 私と忍は妊娠中のナイーブな時期に散々雨宮夫婦に迷惑をかけてしまった。妊婦を夜中に走り回らせたり、弘樹さんから赤裸々に語られる仰天エピソードにはもう苦笑するしか無かった。

 次に話し始めた彩は大学を突然中退した私を心配してずっと行方を探してくれていたらしい。
 お互いその間に携帯電話が変わり、電話帳

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