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砂の城(創作大賞投稿作品)

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6年前に小説家になろうで書く予定だった消された恋愛話を改稿して纏めております。【創作大賞2024初参加】 暗い部分も多いですが、人の感情揺れ動きとリアル重視。 ハッピーエンドです…
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#リアル重視

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第21話 忍sideー 親愛

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第21話 忍sideー 親愛

 俺は人生初めて健康診断を受けた。総合診察の担当は内科の藤堂先生なんだが、俺の名前を見慣れているはずの先生は不思議そうにパソコンを睨みつけた。

「田畑君って一人っ子かい?」

「親も死んでるんで、もう天涯孤独っスよ」

 俺はいつものように軽く笑いながらそう話す。俺は母さんに絶縁されている身なのでこれはあながち間違いでは無い。
 ただ、麻衣の事は誰にも伝えないでいた。全てを知っている弘樹も職場で

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第22話 忍sideー 襲撃

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第22話 忍sideー 襲撃

「ねえねえ、今度温泉旅行に行きたいよね」

「そうだな……」

「箱根くらいだったら行けるよね、日曜日はママさん達休み欲しがるから、平日なら休み合わせられるし」

「ああ……」

 俺は澤村の話を聞きながら今日弘樹に怒鳴られた事を反芻していた。
 あいつは普段全く怒らない癖に、俺と麻衣の話になると人が変わる。
 今の俺に麻衣を守るチカラは無いし、あのシノブって奴が麻衣を守ってくれるのならばそれに任

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第23話 埋まらない溝

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第23話 埋まらない溝

 私は慌てた様子の店長に突然呼び出しを受けた。どうやら私宛の電話らしい。
 弘樹さんからのようで、私の命に関わる大事な事と言われて渋々受けたらしい。
 一緒にVIPルームに居た荵さんもやや不満そうな顔をしていたが、彼を何とか宥めて電話に出た。

『麻衣ちゃん、N大附属病院の手術室前まで来て! 今すぐ!』

 弘樹さんの声の後ろで救急隊の声と、女性の声が聞こえる。その人が忍と連呼していたので、私にも

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