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冬先の国道のすたるじ
今どきにはもう珍しい
影のあるネオンを携えて
寂しい国道が真っ直ぐに伸びている
冬先の午後五時三十分
この道を通ったはずの
何千何万の目の中にある
それぞれの人生の彩りを思う
それは時代の移り変わりを
たっぷりと染み込ませながら
何度も何度も掘り返して重ねた
アスファルトの下に
きっとゆっくりと眠っている
目を細めると握りしめたハンドルごと
タイムスリップしてしまって
幼いわたしの陽炎の上に
揺ら揺らと降りていきそうで
そんな夕暮れにわたしは
心と頭の真ん中あたりから
涙の生まれるのを感じる
懐かしさとは
寂しいなと思う
寂しさを知った今頃に
懐かしさとは、生まれるのかとも
祖父の笑顔と煙草の煙
様変わりした国道の
馴染みの店がまたひとつ消えた
失うことはこうしていつも
生きているのと隣り合わせ
静かにそっと消えてしまう
何かを生み出す喜びと
失う悲しみとを
両方持って生きるけど
こんな寂しい国道の上で
わたしは失うことの悲しい以外の感情を
どうしても言葉にできないまま
優しさの悲しいのと
寂しさの温かいような
布団に潜って小さく丸くなった
空っぽのわたしに戻りたい衝動
写真には残っていない
あの頃の匂い
あの頃の夕暮れ
あの頃の手
それら全部を想って
やはりわたしは泣いた
何故だろう
冬先の午後六時
寂しい国道の上
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