草ノ芽 双葉

クサノメ/フタバ ジャンプ+のコンクール投稿のためにアカウントを設置しました。新参者で…

草ノ芽 双葉

クサノメ/フタバ ジャンプ+のコンクール投稿のためにアカウントを設置しました。新参者ですがよろしくお願いします。 小説を書きます。

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「怪異喰い(イカモノグイ)」あらすじ

「あ゛ー……。胃ィきっつ……」 「……エ゛」  ぶつっ、という筋の切れる音。  赤黒く脈打つ肉塊を、男は容赦なく食いちぎった。  ***  困っている人を見ると放っておけないタチの就活生、呉羽水月。彼女はひょんなことから、感情の濁りが集約することで生まれる「怪異」の討伐を生業とする、八十神天間と行動を共にすることになる。 「君、結構な頻度で周りに”馬鹿”って言われるでしょ」 「くぅっ……」  無計画ピュア女と毒舌胡乱男が出逢った時、人、怪異、そして古を生きる妖怪をも

    • 「怪異喰い(イカモノグイ)」第3話

       片手片足を欠損――そんな人間を抱えている八十神さんが、血まみれになっていないはずもなく。 『~~~! ~~~!!』  動画から音声は聞こえなかったが、破いた服で右腕と左足の傷口を縛りながら私の名を呼んでいるらしい八十神さんの姿は、かなり凄惨なものだった。 (なん……これ、死んどーんやなかと……?)    何か言うでもなく、おろつくでもなく。  ただただ私は固まったまま、スクリーンから目を離せないでいた。  動画の中の私はまったく動かない。冗談抜きに、それは死体のようだ

      • 「怪異喰い(イカモノグイ)」第2話

        【回想的なもの】    昏睡と覚醒の間を、行ったり来たりしているような感覚だった。  両目に映る視界が揺れていた。何とも言えない、不思議な抱擁力に全身を包まれているような感じ。  ――敢えて明確な言葉で表現するならば、それは”海”だった。穏やかな水の流れが頬をくすぐった。 (……どうして)  私ではないわたしが、頭上はるか遠くの水面に手を伸ばす。  しかしその手は届かない。言葉も、声も、決してその先に届くことはない。  ああ、どうして。どうして。音もなくただそう問い続けて

        • 「怪異喰い(イカモノグイ)」第1話

           憎しみ、恨み、いらだち、怒り、妬み、自己嫌悪。人々が無意識のうちに吐き出す淀んだ感情が、”人でなし”を作り上げる。  ”怪異”。それは人より出でて人に非ず――。 *** 「はっ……はぁっ、はぁっ……!」  いい加減、走り疲れのせいで両足と喉が痛くなってくる頃合いだった。  ここまでどれほどの距離を走ったか。自分は今どこを走っているのか。閑静な住宅街であることに間違いはなさそうだが――思い返す暇も把握する余裕も、今の私はまったく持ち合わせていなかった。  就活用のリクル

        「怪異喰い(イカモノグイ)」あらすじ

          「落日残照」あらすじ

          栄華朽つること無き都在りけり。 名を洛陽とせり。 絢爛豪華にていかにも善悪の概念なく、混沌の世、在るべくわたる。 其処に終幕はなく、ただ、因果を背に幾度も巡る永遠の時流るるのみ──。 古今東西の妖が跋扈する古都、「洛陽」。 妖たちに害をなす化け物、「影法師」の討伐を生業とする長髪の青年余暉(ヨキ)は、武術の師匠である雪音(ユキネ)と共に、都の喧騒に揉まれながらも今日ものんべんだらりと生を謳歌している。 そんな余暉の生活に突如として現れたのは、一人の人間の少女で──?

          「落日残照」あらすじ

          「落日残照」第3話

           すらりと伸びた長身。人形のように整った顔立ち。傍から見ても相当の美男子である。  男は視線だけをちらりとこちらに寄越し、大きく息をついた。 「お前、地上から屋上まで人一人抱えて飛ぶようなヤツが、まともな人間だと思うのかい?」 「……え?」  ぼそりと呟かれた一言を、上手く聞き取る事が出来なかった。聞き返すが、それに関する返答はない。 「まァ、無事で何よりだ。あそこで止まってなかったらお前、三人と三筋に同時にずたずたにされてたよ。まず間違いなくな」  乱闘に慣れてない

          「落日残照」第3話

          「落日残照」第2話

           余暉が位置する場所から、三間ほど離れたところに、彼女は音もなく立っていた。 「いい加減慣れても良い頃合いではないか? 私が本気で君の命を奪うつもりなら、君はとうの昔に死んでいるだろうさ。分かるだろう?」 「いやいやいや、そういう話じゃあなくてですね……!」  小柄で華奢な体。頭の横で結った黒髪。白銀に水浅葱の刺繍を施した着物が風に揺れる。  雪音、と呼ばれたその女性は、涼しげな表情をまるで崩さぬまま、鋭い切っ先を向けていた匕首を鞘に納めた。 「待ち合わせ場所に来るのが

          「落日残照」第2話

          「落日残照」第1話

           酒の匂いが、随分ときつい。  男特有のむさ苦しい熱気に溢れる酒場。余暉は眼前に広がる賭けの様相を、涼しい表情で眺めていた。  彼の視線の先には、丼に入った三つの賽子が転がっていた。六、六、六のぞろ目を指しているそれは、この賭けでは二番目に強い役を表している。相手の賭け金は持ち金全て。一方こちらの賭け金も相当額に膨れ上がっていた。 「さっさと賽を振ったらどうだ」  余暉と相対する賭けの親──ここらでは名の通った強運の持ち主だ──は、己の勝利を確信していると言わんばかりに、

          「落日残照」第1話