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[イベントレポート] 第4回 丹波スローフードアカデミー お酒の選択

2022年1月11日(祝月)に行われた丹波スローフードアカデミー「お酒の選択」の講座の様子を紹介させていただきます。

まずは「飲む瞑想」ワークを行いました。
「飲む瞑想」は、まずはお酒を「生まれて初めて見た」かのように五感で観察。色・形・香り・唇で触れてみる。
その後にゆっくりと口に含み、舌・歯・口蓋で観察。
そして、飲み込み 喉・胸・お腹の感触を感じ、最後に深呼吸をしてもう一度飲み込みます。

飲む瞑想

「飲む瞑想」をすることで、他人の意見や評価に惑わされず、「自分の美味しい」の軸を持つことができます。この方法は「飲む瞑想」だけでなく、「食べる瞑想」も同じやり方でできます。

飲む瞑想をした後は、スローフードアカデミーのテキストを読んで、意見の交換。今回もテキストの中身の一部と参加者の方のご感想をご紹介します。

お酒を「おいしい、きれい、ただしい」のスローフードの観点で見た時、最初に思いつくのはやはり原料の生産方法です。日本酒や焼酎に関しては米や芋はそのほとんどが国内生産されていますが、無農薬・有機栽培のものはごく一部で、麦に関しては、ビール同様、輸入に依存している状態です。

スローフードアカデミーテキストより

日本酒は国内自給率が高いものが多いので、飲むことで、地域活性化につながりますね。

スローなお酒を考えるときにもう一つ気にしておきたいポイントはその容器です。脱プラの気運が高まる今、プラスチックが環境汚染やエネルギーの浪費を招いていることは段々と認識されているように思えますが、これはペットボトルにも言えることで、海や川に流れ着いたペットボトルのゴミはマイクロプラスティックを水中に放出します。実は容器の中で最もリサイクル率が高いのは瓶だと言われています。瓶のお酒を選び、使用済みの瓶はラベルを剥がし、きれいに中まで洗ってゴミを出すと、エネルギーの使用を抑えたリサイクルに繋がります。また、紙パックの容器についてもきれいに洗い紙パックとしてゴミ出しすることでリサイクル率は高まり、ティッシュやトイレットペーパーとして利用が可能になります。

スローフードアカデミーテキストより

ビールの容器は缶だと便利ですが、瓶だとリサイクルできますね。

地域の過疎化、若者の日本酒離れなどが原因で、日本酒の消費量は減少し続けています。2000年時点で1977軒あった酒蔵は2016年には1405軒となっており、15年あまりで500以上の酒蔵が廃業したけ計算になります。しかし、日本酒の原料はほぼ全て国内で調達されていますし、「日本酒業界に大企業はない」と言われているほど、酒蔵ひとつひとつの規模は小さく、過度な効率化や大規模化をしているところは非常に少ない業態です。多くの蔵元は長らく地域とともに生業を続け、地域の水資源や農業と密接に関わり、酒造りを続けているところも多く、地域の食文化や祭礼文化の継承や自然保護にも貢献し続けているところが多くあります。日本各地の多様な日本酒文化に触れ、作り手の思いを馳せながら嗜むことも、スローなアクションだと言えるでしょう。

スローフードアカデミーテキストより

このテキストをみんなで読んで、参加者の方々からは、
・日本の酒蔵を守っていきたい
・日本酒=スローフードということがわかった
・日本酒=世界に類を見ない技術、自給率が高い製造過程ということを知った
など感想をいただきました。

その後は、ゲストの山名酒造 12代目蔵元の山名洋一朗さんのお話。
山名酒造さんは丹波市の「有機の里」と言われている有機農業が盛んな市島町にある酒蔵で、江戸時代から酒造りをされており、今年で創業306年になります。

<有機栽培・自然栽培の酒米で作られる日本酒>
山名酒造さんが作られている日本酒の原料の99%が兵庫県。1%が岡山県の雄町米だそう。
その中で、有機栽培、自然栽培の酒米で作られた日本酒が3割。
減農薬を含む慣行栽培の酒米で作られた日本酒が7割だそうです。
岡山県産の雄町米を1%使われているのは、日本最古級の酒米である雄町のルーツが岡山だからという理由。オーガニックの雄町米を使用して、日本酒も作られています。

天日干しで作られている酒米

山名さんが、自然栽培で作られている田んぼに入って感じることは、慣行農法の田んぼと自然栽培の田んぼでは全然、生き物の数が違うということ。自然栽培の田んぼには、蛙やホウネンエビなどが多様な生き物が田んぼにおり、ホウネンエビがたくさんいる年はたくさん米ができると言われています。

自然栽培・有機栽培の田んぼにいるホウネンエビ

<酒米の在来種について>
こちらは兵庫県の酒米の品種の写真です。

酒米の品種ごとに違う穂の長さ

穂の長さが酒米によって全然違います。昔の品種は穂が長く、栽培の時にすぐ倒れてしまう。そこで、穂が短くて倒れにくく、栽培期間が短い品種に少しずつ品種改良されていったそうです。慣行農法か有機栽培によっても穂の長さは変わってくるそうです。

その中で、山名酒造さんは一度、絶滅した「野条穂」という在来種の酒米を復活させて醸造されています。野条穂は100年前まで山田錦と2大巨頭の酒米でした。戦後の農業の合理化が進む中で、栽培される方がいなくなってしまった酒米です。
しかし、たまたま野条穂の種籾が見つかり、山名酒造の11代目の蔵元、山名純吾さんが少しずつ復活させました。「野条穂」は品のある渋みと苦味がある味わいで、現在は日本の酒蔵で2つの酒蔵しか取り扱っていないそうです。

山名酒造さんは地域の農家さんと共に、酒造りをされています。農家さんの顔が見えるお酒作りをするために、同じ品種の場合も農家ごとに個別に醸し、複数の農家さんのお米のブレンドは行いません。酒米によって味が変わるのが消費者にわかるように、醸造条件を一定にして作られています。麹作りもほぼ手作業。昔から丹波地域の「氷上もやし」を100%を使用しています。

<自然栽培酒米・木桶仕込みの酒>
また、12代目酒蔵の山名洋一朗さんは「千歳」という1716年創業当時のブランドを復刻させました。千歳は醸造用乳酸を使用せずに醸す昔ながらの製法で、醸造容器も木桶を採用しています。中でも「千歳ルネサンス」シリーズは自然栽培で作られたお米を10%しか削らずに日本酒を仕込まれているそうです。

木桶で仕込む酒造り

日本酒は数十年ほど前から淡麗辛口ブームや大吟醸ブームで、辛くてスッキリした味や香り高いものが好まれていました。酒米の外側のタンパク質を削ったほうがそのような味わいになるので、現在は大体40%以上ほど精米された酒米で日本酒を作られているそうです。しかし、最近は複雑味があるお酒などを楽しむことのできる消費者が増え、洋食と日本酒のペアリングなどお酒の飲み方も自由になっているので、これまで以上に個性的なお酒を目指して醸しているそうです。

現代では通常、化学素材のタンクで作られる日本酒。
かつては「酒蔵で使われた木桶が味噌・醤油屋に」という循環がありました。近年では工業化の流れとともに木桶や木桶仕込みの調味料の市場は縮小。木桶で日本酒が作られなくなった理由は有機素材のためメンテナンスがとても大変だからだそうです。
それでも山名さんが昔ながらの木桶を使う理由は、自社の菌を活かしたナチュラルな製法でお酒を醸すときに、有機的な発酵容器がベストだと考えたから。また、木桶に微生物が住み着くことで、命のバトンが受け渡されていることにもロマンを感じたそう。「木桶」という日本文化を次世代に感じてもらいたいという思いで、木桶で「千歳」を造られています。

その話を伺い、参加者の方々からは「木桶など、気づかないうちになくなってしまうものがあるんだということに気がつきました。なくなってしまうものに対して注意すること、今あるものに対して感謝することが大切だと感じました。」との声も上がりました。

世界のスローワイン
続いてスローフードアカデミーの渡辺さんからスローワインについてのお話です。イタリアなどでは土着品種の葡萄で作られたワインは数少なくなっているが、まだ残っているそう。今後は土着品種で作られているワイナリーのリストを作っていきたいと考えられています。2月にはスローワインフェアが開催されます。

◆有機JAS認証のお酒情報などを発信している団体
オーガニックビレッジジャパン
◆国際的な有機農業・有機食品・有機酒類、オーガニックコスメ、オーガニックテキスタイルの認証制度
エコサート認証

今回も講座を終えて、明日からのネクストステップアクションを参加者方、一人一人に考えていただきました。
・作り手の思いの部分も、買うときに聞いて購入する
・きき酒、日本酒をもっと知り楽しみたい。
・食べる瞑想、飲む瞑想をして食を味わう
と皆様、それぞれ話してくださいました。

最後に、山名さんからは、お酒の一番いいところは、お酒を飲むことで気持ちよくなり、人と人の輪ができるところ。皆さんの地元のお酒をぜひ飲んで欲しいと話していただきました。

酒蔵には必ず、それぞれ受け継がれたストーリーがあります。私たちにできることは、まずは地元のお酒の作り手の思いを知り、美味しく嗜むことではないでしょうか。





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