雑煮ガチャガチャ。

ガチャ、ガチャ。

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【掌編小説】塵(ごみ)

 都会は人が塵の様にいる。人はそもそも塵の様なものなのに、わざわざ窮屈なところに詰めて、それはさながらゴミ出しを逃してしまった後のゴミ箱だ。  仕事が終わらない。終わればまた新しい仕事がくるから本当に終わりはこない。不満ばかりが募る。やりたいことしたい。でも、やりたいことをしたときに感じた抱いていた妄想と現実との差異が唯一心を保とうと繋いでいる糸を少しずつ削いでいく。そもそもそんなにやりたいことなんてない。夢とか希望とか、どんなだっけ? 仕事仲間も所詮は他人で僕のことを本当に

    • 【掌編小説】がらんどう

       とても良かったなんていえない悲惨な人生だったし、きっとこれから先もそうだと思った。  街はもうクリスマスの準美がとっくに始まっている十一月半ば。異常な程細身な僕は真冬の空気じゃなくたって嫌に冷たいと感じ、凍えて震える。空気にすら生きるのを邪魔されているように思い、じゃあ何なら僕の機嫌を損なわないでくれるのだ? と、充たされない憤りをただただ胸の中に抑え込んだ。  ショッピングモールに行かなくたって、コンビニだったり、スマホから流れる広告だったりから、緑と赤と金色の幸せな奴等

      • 【文学フリマ東京39】雑ガチャ最初で最後の合同誌【雑記?】

        キ! もしくは、キ!っつー話! 雑煮ガチャガチャ。です。 ベイブレード᙭をやっている中年男性です。 12月生まれなので、1月には今年で34歳と名乗らなきゃいけないのか?と苛立ちを隠せません。来年1月には35と名乗らなければならない、立派なアラフォーです。ただ面とスタイルは悪くないからな、と無意味なプライドを持っています。なのにムカつくことにこのサークル『奥の見えないフロント』は面が良い奴が多めな気がして、なんちゃってイケメンのおれが勝ち誇れないことを誠に遺憾に思っております。

        • 【告知】文学フリマ東京39に出展します【試し読み】ᕼotel 六花 Rikka 306 ご自由にお書きください 第一部ポンサさん作:『ショーケース』

          文学フリマ東京39に出展します! サークル名は『奥の見えないフロント』です! ᕼotel 六花 Rikka 306 ご自由にお書きください というラブホテルに置いてある一冊のノートを軸に展開される群像劇を出品します。 作者5人が5人の主人公の恋や葛藤を切り抜きます。 ポンサさんが描いた恋する乙女の話、 『ショーケース』 とても面白いので、少しでも気になったら試し読みしてみて下さい。 僕より文章が圧倒的に上手い! 雑煮ガチャガチャ。も面白いの書けたと思うので、文学フリマで是

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        【掌編小説】塵(ごみ)

          【掌編小説】虹が掛かれば

           色鮮やかなタイルを念入りに雑巾掛けする。部屋中の雑巾掛けを終えるとしっかり手洗いをし、マレーシアで生まれたマーラーカオというパンをお皿に乗せてテーブルに並べた。  私はお洒落な主婦を目指しているのだろうか? いいや、私は私の好きなものを集めているだけのように思う。それがたまたまお洒落なだけだ。わわ、それは自惚れだろうか?  好きなラジオを聴いて、喋り声やふんわりとした内容に心が落ち着いた。紅茶が進む。パートが休みの日はこういう日があってもいい。また紅茶を沸かす。マーカーカオ

          【掌編小説】虹が掛かれば

          【掌編小説】心の黒

           十一月の朝は仄暗い。午前五時のひやりと冷えた空気に刺されながら心の黒に呑まれない様に布団から這い出る。朝食は食べない。お金がないし、一度空腹の限界を通り越すと、胃もそれを諦める。万年閉じっぱなしのカーテンの内側に入り、窓をからりと僅かに開けて外の景色を眺める。朝靄が立ち込めている。透明なもやもやは不透明な未来を示している様。何もかもが先へ進むことを邪魔している気がしてしまう。そういう感覚に陥る。  洗面所の電気が嫌に明るい。お湯を出したら湯気で鏡が見えなくなって、もうどうで

          【掌編小説】心の黒

          【掌編小説】嗚呼

           海へ向けて長い坂道を歩いて下る。灯台の灯りが離れていても確かに見える。今ここらを照らしているのは人工的な安い灯り、それが俺の行く末を舗装してくれている。あそこに大きな灯りがあると、やっぱり安心した。  踏切に先をはばかれた。終電に近い電車の中に数人しか乗っていない事を確認するも、本日付けで会社を辞めてきた、世間から逸れた野良犬は人間様に申し訳が立たなくて、くぅ〜ん、と顔を歪めて電車から目を逸らした。後ろを見ると影が過ぎっている。深く歪な影達がおどろおどろしく駆けていった。

          【掌編小説】嗚呼

          【掌編小説】醜いアヒルのジュブナイル

           醜いアヒルの子はプール掃除をさぼって、学校の近くの駄菓子屋でアイスを食べている。アイスを食べる事にすらやる気が出なくて、棒アイスはダラーッと崩れて滴が手を伝う。  補導されるのは面倒臭いから、誰も寄り付かない学校の砂場で一人山を作ってトンネルを開通させる。中々上手くトンネルは通らなくて、何気なく始めた事にすら絶望してしまう。  下校の時刻になり、ちらほら他の生徒達が目に付き始めて砂場を後にする。もう帰ってふらついても補導はされない。なのに何故だかこの学校に縛られている様で、

          【掌編小説】醜いアヒルのジュブナイル

          【掌編小説】夕闇の日陰者

           太陽が陰ると俺は焦りから布団をもそもそと抜け出す。古いアパートで最低限の暮らしをしていて、仕事を探してはいるけれど、どうせまた続かないだろう。太陽が沈むみたいに抗えない類いの諦めを感じながら布団から抜け出した先の畳を直に肌で感じながら倒れ込む。  何もしないまま一日が終わっていくのは流石に勿体ないから、適当に外を歩く。子供とすれ違いそうになると、不審者と思われない様に考えるのだけど、そこに意識が回っている事がよくなくて不自然さが逆に際立つ。また今日も変に緊張してしまって、今

          【掌編小説】夕闇の日陰者

          【掌編小説】Happyオムライス、シクラメンbirthday

           親のお金で買ったケチャップをリュックに放り込む。おつかいを早々に済ませて、スマホ片手に街を歩く。シクラメンが敷き詰められた花壇、色とりどりで可愛い花が花壇いっぱいに咲いている。  11月の誕生花であるシクラメンの花言葉は誕生を祝うような言葉ではなくて、「遠慮」、「気後れ」だった。私は内弁慶で、親しい人には強気でいけるのに、慣れない人には気後れしてしまう。内弁慶だからパパやお兄ちゃんには遠慮しない。だけど、あの人の前では変に遠慮してしまって自分で勝手に気まずい空気を流す。うち

          【掌編小説】Happyオムライス、シクラメンbirthday

          【掌編小説】寂しい音

           弦から鈍い音をボロンボロンと産み落とし、指先を圧迫される痛みなんか気にせず、もうかれこれ三時間も覚えたてのギターに夢中になっていた。  彼に憧れて始めたギター。日々の話題が欲しかった。話が下手な私の不器用な口実は不器用な指先から、みっともない音を出している。聴いていられない、恥ずかしい音だ。  彼は猫みたいな人。何にも縛られていなくて、好きなときに好きな事をする。人の目を気にせず自由に振る舞えるところに特に深い憧れを抱いた。私はそんな彼の様になりたかったし、そんな彼に甘えた

          【掌編小説】寂しい音

          【掌編小説】紫陽花

           しとしとと雨は降り続く。梅雨なのだからやはりそれは仕方がない。仕方がないとしてもこちらにも事情があった。それでもこれくらいの雨ならば今夜の花火大会は決行されるだろう、と誰かが言った。  青色の紫陽花が雨に揺れている。カスミソウを集めながら紫陽花に見とれる。目の前を落ちていく優しい雨粒達に濡らされた紫陽花を眺める。僕自身も雨に打たれて、汚れた心が流されていく様で、カスミソウの花言葉の様な純粋さをこのバスケットのカスミソウと一緒に集めていけたならば、と叶わない理想を浮かべてはそ

          【掌編小説】紫陽花

          【掌編小説】生き急いだ桜

           ふいに風がふわぁっと吹き込んで、桜の花びらとよく分からない赤い何か(それは桜の花びらの一部なのかもしれない)とが、ここら一帯を吹き飛ばすかの様に、胸のこの辺にある心の縺れを根こそぎ吹きさらうかの様に、一分一秒を生き急ぐ私を、一瞬でさらってみせた。 ○  急患が入ったのは一昨日の夜遅くの事だった。次の日のお昼にはその患者さんはお家に帰られた。 「急病だったから、仕方がなかったのよ」  ご遺族はそう言ってくれていたけど、私にはそうは思えなかった。医療ミスがあったとか決してそ

          【掌編小説】生き急いだ桜

          【詩】春風と時間と手紙

          春は出会いと別れの季節というけれど。 それは心の、 「何か」が変わっていってしまう様なニュアンスを含んでいて、 「何か」が流されていっている感覚がある。 ぞわぞわむずむず日常の嫌な気配が春の柔らかな温度を汚している様で、 変わらなきゃいけないのに、 変われないでいて、 変わらなきゃもう本当に人としてダメなのに、 『本当は変わりたくなんかない』。 これが全てに当てはまるから、 壊れてしまいそうだし、 壊れてしまった方がよかった。 変わらないものを集めたら、 自分らしい

          【詩】春風と時間と手紙

          【大人童話・掌編小説】ホットココア

           かなみちゃんはホットココアを飲みながら泣いています。涙を流しています。  心を開く事が出来ないのです。  かなみちゃんの周りには、かなみちゃんを大切に扱ってくれる人はいません。お父さんもいません。お母さんもいません。お友達もいません。信頼出来る人がいません。  かなみちゃんは、人を信用出来ませんでした。  気分が落ちてるときは、いつもより見えてしまうのです。仲良さそうに手を繋いでいる、親子を、きょうだいを、恋人達を、友達というものを、みえてしまうのです。  欲しいのです。そ

          【大人童話・掌編小説】ホットココア

          【掌編小説】永遠の冬茜

           終業式の日に授業なんて無視して図書室で本を読む。学校生活の貴重な時間を無駄にしてなんて思われるかもしれないけれど、僕にとっては読書する事の方が貴重で重要だった。それに図書室にいればあいつが来るかもしれない、そんな淡い期待がある。  本を読む。調べものをする。あいつが好きなシクラメンについて調べたりもする。  この学校の図書室は暖房が壊れていて、手が悴む。悴んだ手を気にしない様にしながら、誰にも気付かれずに時間が過ぎ去っていく事がどうしても頭の片隅にある。  あいつの気を引く

          【掌編小説】永遠の冬茜