記事一覧
【掌編小説】醜いアヒルのジュブナイル
醜いアヒルの子はプール掃除をさぼって、学校の近くの駄菓子屋でアイスを食べている。アイスを食べる事にすらやる気が出なくて、棒アイスはダラーッと崩れて滴が手を伝う。
補導されるのは面倒臭いから、誰も寄り付かない学校の砂場で一人山を作ってトンネルを開通させる。中々上手くトンネルは通らなくて、何気なく始めた事にすら絶望してしまう。
下校の時刻になり、ちらほら他の生徒達が目に付き始めて砂場を後にする。
【掌編小説】夕闇の日陰者
太陽が陰ると俺は焦りから布団をもそもそと抜け出す。古いアパートで最低限の暮らしをしていて、仕事を探してはいるけれど、どうせまた続かないだろう。太陽が沈むみたいに抗えない類いの諦めを感じながら布団から抜け出した先の畳を直に肌で感じながら倒れ込む。
何もしないまま一日が終わっていくのは流石に勿体ないから、適当に外を歩く。子供とすれ違いそうになると、不審者と思われない様に考えるのだけど、そこに意識が
【掌編小説】Happyオムライス、シクラメンbirthday
親のお金で買ったケチャップをリュックに放り込む。おつかいを早々に済ませて、スマホ片手に街を歩く。シクラメンが敷き詰められた花壇、色とりどりで可愛い花が花壇いっぱいに咲いている。
11月の誕生花であるシクラメンの花言葉は誕生を祝うような言葉ではなくて、「遠慮」、「気後れ」だった。私は内弁慶で、親しい人には強気でいけるのに、慣れない人には気後れしてしまう。内弁慶だからパパやお兄ちゃんには遠慮しない
【掌編小説】寂しい音
弦から鈍い音をボロンボロンと産み落とし、指先を圧迫される痛みなんか気にせず、もうかれこれ三時間も覚えたてのギターに夢中になっていた。
彼に憧れて始めたギター。日々の話題が欲しかった。話が下手な私の不器用な口実は不器用な指先から、みっともない音を出している。聴いていられない、恥ずかしい音だ。
彼は猫みたいな人。何にも縛られていなくて、好きなときに好きな事をする。人の目を気にせず自由に振る舞える