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#食べ物

【書評】おいしそうな『マレー諸島』

【書評】おいしそうな『マレー諸島』

ここで紹介する書籍『マレー諸島』は,ダーウィンと同時期に進化の原理を発見していた博物学者アルフレッド・ラッセル・ウォレスによる,19世紀マレー諸島の科学探検記です.

この記事では特に,本書を,食べものの観点から眺めてみます.というのも,登場する食べものの記述が,その,実においしそうなのです…….でもその前に,本書の位置づけを,簡単に説明しておきましょう.

標本採集ビジネス科学探検ウォレスは,1

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タンパク質の毒

タンパク質の毒

「ウサギによる飢餓 (英語だと“Rabbit starvation”)」という言葉があります.ウサギの肉は一般的に脂肪がとても少ないそうです.ウサギ肉のような,ほとんど脂肪を含まないほぼタンパク質からなる肉だけを食べ続けていると,どんなに多量に食べていたとしても,短い期間のうちに飢餓によって死亡してしまう,というなんだか嘘みたいな現象を説明した言葉です.

ひるがえって,人類学の世界では,狩猟採集

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狩猟採集における「外食」

狩猟採集における「外食」

狩猟採集で暮らしているヒトの集団には,得た食物をキャンプに持ちかえって家族や集団全体でシェアするという特徴があります.ヒト以外の霊長類では,血のつながりのない個体のあいだでは食物のシェアがヒトほど頻繁にはおこらないことがわかっており,集団内での日常的な食物のシェアはヒトのユニークな特徴と考えられています (参考: 「同じ釜の飯」).

ヒトが食物を日常的にシェアするように進化した背景には,ヒトの食

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「同じ釜の飯」

「同じ釜の飯」

わたしたちヒトがふだん普通にしていることが,実は霊長類のあいだでも珍しい行動で,ヒトのユニークな特徴となっている場合があります.日常的な「食物のシェア」はそうした行動のひとつです.

伝統的な暮らしをする狩猟採集民では,男女で分業をして,得られた食物をキャンプに持ち帰って,家族だけでなく集団の他のメンバーともシェアします.農耕民でも,収穫した穀物や家畜はみんなで分けあいます.現代社会でも,買ってき

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