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5つのゲームの「作り方」

ゲーム開発は難しい。

これは実際にゲームを作った・作ろうとした人であれば、誰もが頷くと思います。

今週(2023年12月中旬)2つのニュースが発表されました。
まさにゲーム開発の難しさを体現していたと思います。

『The Day Before』開発スタジオの閉鎖

大きな期待受けたサバイバルTPS『The Day Before』開発スタジオ、突然閉鎖を発表。早期アクセス配信開始からわずか4日で開発中止へ - AUTOMATON (automaton-media.com)
期待と疑いの目を向けられていた『The Day Before』は最後にsteamで確認したときは2万件弱という決して少ないユーザーレビューが投稿されていたものの「圧倒的に不評」をかつてなく集めたタイトルとして注目され、ネット上でオモチャにされていました。
不評とはいえ販売本数は悪くなさそうなので、ここから『No Man's Sky』のように挽回していくのだろうか…と思っていたのですが、まさかの4日でスタジオ閉鎖。
おそらく多くの開発者が路頭に迷う事になったのではないでしょうか。

開発者たちは『面白いゲームを作ってたくさん売ろう、そしてユーザーに喜んでもらおう』と考えていたと思いますが…

『The Last of Us』のマルチプレイ作品の開発中止

『The Last of Us』のマルチプレイ作品、開発中止。シングルプレイゲームを作れなくなるので - AUTOMATON (automaton-media.com)
ノーティドッグと言えば、ゲーム業界屈指の凄腕ゲーム開発会社であり、そこで働く人々も凄腕であるはずです。当然、ゲームデザイナーも素晴らしい才能と技術をもっていて、どんなアイデアでも面白いゲームに仕上げてくれる。そのはずが…

「シングルプレイのゲーム会社にとってマルチプレイのゲームはテリトリーが違う」という見方もできますが、そのギャップすら乗り越えられる力を持っているスタジオだと思っていました。

しかし、結果は開発継続の断念。
スタジオのスタンスを再確認することになりました。

ちなみに『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』や『Marvel's Spider-Man 2』で輝かしい評価を受けているInsomniac Gamesも『Fuse』というマルチプレイタイトルで苦戦しています。

ゲーム開発は難しい

この2つのニュースだけを取り上げて総括する気はありませんが、やはりゲーム開発というのは難しいものだな…と改めて思いました。

なぜ難しいのか、どうやって作ればいいのか

なぜゲーム開発は難しいのか。
それはゲーム開発を難しくする要因があるからです。
そして、その要因を放置することで、より開発は困難になり、最終的には失敗を招きます。

では、その要因とは何か?
何を意識すればいいのでしょうか。

5つのゲームの作り方

「ゲームの作り方」と聞くと「ゲームデザインのこと?」と想像するかもしれません。「面白いゲームを作る」それもまた作り方の1種です。

しかし「面白くて売れるゲームを作る」ためにはゲームデザインだけでは足りません。

作り方1:売れるゲームを作る

作ったゲームは売れなければいけません。
なぜなら会社を維持できなければ生活はできず、生活ができないのならゲームを作れないからです。

「売れるゲームを作る」
これは決して浅ましい考え方ではなく、未来へつなげる当然の考え方です。

この作り方を担当するのはプロデューサーです。
プロデューサーは予算とスケジュールを守りつつ「想定以上に売れる」ゲームを作る責任があります。(想定通り売ることができれば、その時点で凄いプロデューサーではあるのですが)

「売れるかもしれない」「売れたらいいな」では駄目です。
「絶対に売れると確信している」必要があります。
それも「俺がそう思うんだから大丈夫」という根拠のない自信ではなく明確に「だからこれだけ売れるのだ」という理屈を示さねばなりません。

もし、ゲーム開発開始前から「このゲームが完成したとして売れるのだろうか?」という疑念がチームに渦巻いていたとき…プロデューサーが根拠を示しておらず、開発スタッフの共感を得られていないということなので、ゲームは想定よりも売れない可能性が高いです。

更にいうと、開発スタッフとプロデューサー間に信頼関係がなく、不和である場合、ゲーム開発のモチベーションが下がり、結果としてゲームのクオリティに影響することもあるでしょう。

「売れるゲームを作る」それを意識して向上させる。
これが1つ目の【ゲームの作り方】です。

作り方2:面白いゲームを作る

ディレクター、プランナー、ゲームデザイナーのみならず、開発に携わるスタッフは総じて「面白いゲームを作る」ことが求められます。

プロデューサーが素晴らしい計画を立案したとしても、中身がつまらないゲームが出来上がれば評価も売上も下がっていきます。

ディレクターは日夜「どうしたらもっと面白くなるのか」を練り続け、ゲームの価値を上げ続けなければいけません。

ディレクター以外のスタッフたちも、クオリティを上げるためにアイデアを交換したり、他社作品を研究したりと努力が欠かせません。

「面白いゲームを作る」それを意識して向上させる。
これが2つ目の【ゲームの作り方】です。

作り方3:作れるゲームを作る

売れると分かった、面白くなるということも分かった。
それでゲームは完成でしょうか?

いいえ、ゲームを作る作業が待っています。

たとえば「レベル上のすべての建築物を破壊できるオンラインシューター」を思いついたとして、物理制御のノウハウやオンラインゲームを作るノウハウがなければ実現できません。

たとえば「街にいるすべてのNPCの会話が魅力的で、ただ街を歩いているだけでも楽しくしたい」と思ったとしても、魅力的なテキストを書く人材がいなければ達成できません。

ちゃんとゲームを作ること。あるいは普通にゲームを作ること。
つまり「実装する力があるかを見定めること」が重要です。

理想主義に陥らず、チームの力を冷静に把握し「できること」「できないこと」を区別していく。その上で、できる範囲でしっかりと実装していく。

これが3つ目の【ゲームの作り方】です。

作り方4:効率的にゲームを作る

たとえ開発能力の高いスタッフがいたとしても、人間が分身するわけではなく、その人1人分の力しか発揮できません。

たとえば優れたレベルを作成するレベルデザイナーがいたとして、1つのレベルを作るのに4ヶ月かかるとします。

スケジュールが2年だった場合、単純計算しても1年で3つ、2年で6つしかレベルを作ることができません。

しかし、ゲームの最低限のバリュー(商品価値)を出すためにはレベルが8つ欲しかったとします。

このとき、スタッフに無理を強いるのでも、作成レベル数を諦めるのでもなく「何に時間がかかっているのか」を洗い出します。

1つの敵を配置するのに12分かかるとします。
1つのレベル全体で100体配置すると1200分かかります。
20時間かかることになります。
1日に働ける時間が8時間だとすると、3日程度かかる作業になります。

では、なぜ1体配置するのに12分かかるのでしょうか。
まず、配置ツールが無いかもしれません。テキストエディターでパラメーターを設定し、座標などを指定しているのかもしれません。さらに実機での確認には3分程度のビルド時間が必要で、無駄な待機時間が発生しているかもしれません。

配置ツールを作る、ビルド時間を短くする、あるいはアンリアルエンジンといった既存のエンジンを使って効率化する。

アンリアルエンジンなら1つの敵を配置するのに数秒で済むかもしれません。

12分が数秒に。それが100体分?

日々の作業にかかる時間が短縮すると「作れるものが増える」だけでなく「試行回数が増えてクオリティが向上する」成果があります。

より面白いゲームを作るためには4つ目の【ゲームの作り方】である「効率的にゲームを作る」ことが重要です。

作り方5:結束してゲームを作る

実は、これがもっとも重要で、もっとも難しい作り方です。
「みんなで頑張って作ろうぜ!」という精神論は無意味です。

「結束したらいいな」と願うのではなく「結束させる」のです。
それには「結束できる環境」を作る必要があります。

結束できる環境とは「心地のよい開発空間」「信頼関係のあるスタッフ」「正しい方向を示すことが出来るディレクター」「完成した後の未来を約束してくれるプロデューサー」など、各スタッフがプロジェクトにコミットし、高いモチベーションを維持できる環境です。

これが困難です。
「仲が良い」という話ではありません、極めて現実的なプロジェクト内のモチベーションデザインが求められます。

これを担当する人は不在であることが多い印象です。
役割としてはディレクターが近いのですが、ディレクターがまかなえる範囲を超えているとも思います。

プロデューサーを超えた「会社」こそが担当すべき【作り方】なのかもしれません。

まとめ

ゲーム開発現場で意識したい5つのゲームの作り方について紹介しました。
本来この5つは常に意識され、管理され、問題を起こさないようにしなければなりません。
どれか1つでも崩れれば、他の作り方も崩れていきます。

ゲーム開発は難しい。
しかし、これら5つを意識して、維持あるいは向上させていけば困難に立ち向かうことができる…はずです。

もしかしたら、『マリオワンダー』と『アーマード・コア6』は理想的な作り方だった可能性があります。

なぜ、今『アーマード・コア』なのか? シリーズの根幹の面白さを見つめ直し、今の時代にリブートさせたその過程に迫る (denfaminicogamer.jp)

開発者に訊きました : スーパーマリオブラザーズ ワンダー|任天堂 (nintendo.co.jp)

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