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究極の「かまってちゃん」イーロン・マスクがTwitter買収で狙うものとは

米実業家イーロン・マスク氏によるTwitter社買収を巡る一連の騒動は、10月末に440憶ドルで取引が完了。すぐさまTwitter社のCEOとCFO(最高財務責任者)を解任、その後1週間で全従業員の約半数を解雇するという大胆な変革に出た。こうした動きに対し同社から広告を一時的に停止した企業はGMやAudi、コカ・コーラ、ジョンソン&ジョンソンなど10月5日時点で世界的企業20社を超え、その数は日を追うごとに増加の傾向。広告収入の激減は必至だ。一方で、ツイート投稿者が著名で信頼できる発信元であることを示す青色の認証済みバッジを8ドルの有料化にすると発表。これにより投稿の信頼度を測る基準があいまいになることが懸念される。マスク氏は、「言論の自由」を御旗に、議会襲撃事件後に利用を停止されたトランプ氏やその支持者らの利用再開や、極右のQアノンなどによる陰謀論にも規制を緩める考えも示唆している。米中間選挙目前のタイミングで、米国内で約7700万人が利用するソーシャルメディアで何が起きているのか、疑念と不安が広がっている

Twitter買収が経営上の利益を生まないことは明らかで、むしろ損失が見込まれる。顧客である広告主を失い、投稿内容の監視を緩めることで従来の利用者を遠ざけるという動きは、まるでTwitterを潰すことが目的であるかのようにも映る。ではマスク氏にとり真の狙いとは何なのか?米国内の右派はもとより、中国やロシア、サウジアラビアなど特定のグループに向けた一大ソーシャルメディアツールに作り替えようとしていると考えると納得がいく。まず、国内では「owning the libs」(政治的リベラル派を怒らせたりおとしめたりして煽り分裂を招く保守派の政治手法)を拡大させると見られる。買収以前からTwitter上で注目の話題に「乗っかる」ことで口をはさんでは物議をかもしてきたマスク氏。今回も自身のツイートで、広告を取り止めた企業に対して「原子核融合反応を引き起こす」と脅迫めいた発言をしたり、利用者には「文句を言い続けても良いが、8ドルは払え」とツイート。ペロシ下院議長の夫が自宅で襲撃された際には根拠のない陰謀説を投稿したことも記憶に新しい。

次に国外に目を向けると、買収後、サウジアラビアの政府系ファンドがTwitter株17%を取得しマスク氏に次いで第2位の株主に浮上。サウジといえばトランプ氏の義息への資金提供や最近のOPEC減産主導、ロシアとの関係など暗躍疑惑にいとまがなく、米政府はサウジのTwitter株取得に警戒を強めている。また、こちらも国内右派と結びつくロシアに関しては、今年10月にウクライナに対しロシア寄りの和平案を提案するツイートを投稿、ウクライナ政府から国民までの大ヒンシュクを買ったばかり。一部メディアはこの提案前にマスク氏がプーチン大統領と直接会話をしたと伝えている。さらに中国との関係に目を移すと、テスラが同国での市場規模を広げるにあたり台湾についての立場を示すようプレッシャーを受けている背景がありそうだ。Twitter買収完了した同じ頃に、マスク氏は台湾について独立をあきらめ「中国独立区」に入るようツイートしており、タイミング的に偶然ではないと思われる。

そもそもマスク氏とは何者なのか。電気自動車テスラや宇宙開発のスペースXを立ち上げた実業家で、2000憶ドル超の資産を有し、資産額は2022年時点で世界一位。日本ではその起業家としての一面を称賛するような扱いが多いが、米国内ではかねてよりの奇抜な言動で、変り者、厄介者扱いが多い。アパルトヘイト政策下の南アフリカでエメラルド鉱山などを経営する資産家の家庭に生まれ、カナダや米国で教育を受け、起業も順調。とにかく目立ちたがり屋で超ナルシシスト。自分中心に世界が回り、物事が思い通りにならなかった時に見せる、下唇を突き出した不満げな表情は、子供そのものだ。と、トランプ氏を想起させる部分が多いが、唯一胸をなでおろすことができるのは、米国生まれでないため大統領選出馬の権利が無いということくらいだろうか。

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