研究者を志す学生の皆様へ、研究周辺領域の情報収集のすすめ
こんにちは、ANRIの榊原和洋です。
私は研究者が自分の最も幸せな場所で輝いていてほしいという思う人間で、研究者のキャリア関連の記事を書かせていただいております。前回は若手製薬企業の研究者に焦点を当てた記事を書きましたが、今回は研究者を志す学生の方々に向けた研究周辺領域の情報収集のすすめを書かせていただきます。
はじめに
何故研究周辺領域の情報収集を勧めるかといいますと、それが①皆さんのキャリアの可能性を広げるから、であり、②研究と世の中の接続、研究者の価値を再認識できるからです。かける時間、熱量は二の次でまずは情報に触れているかどうかが非常に重要だと思います。
「学振Get→ハイインパクトな論文と学会での受賞→それをひっさげ海外ポスドクor大手企業研究者」というロールモデルが多く、分かりやすい順風満帆なルート以外にも面白い道は沢山あると思っております。時間の融通も効き、その他プライベートの制約も少ない学生の間に、色々な情報に触れていただき、自分の可能性を広げていただきたいです。
こんなことを書いている私は学生時代、とにかくいい論文が出したくて、情報のインプットは研究テーマ関連情報に絞り、その他はひたすら実験を繰り返していました。そして、アカデミアをすごく閉じた世界として認識していました。しかし、幸い弊社 宮﨑勇典から小1時間コーヒーを飲みながらVCという仕事の存在を教えてもらい、科学的な知識を活かして社会と研究をつなげられる可能性があると知ることができました。こんな青天の霹靂が皆さんにもあるかもしれませんし、なかったとしても研究に関わる世界がぼやっと広がりを持って見え、そのうえでキャリア選択をできることはポジティブな効果があると思います。
ここでは情報収集方法5点を紹介し、本業を邪魔せずに情報を集められるヒントとなればと思います。
1. 授業の活用
2022年の東大入学式の式辞で藤井総長が起業についてコメントされたことは大きな話題となりました。大学がスタートアップを重要視するようになるにつれ、それに関連したカリキュカムが充実してきていると感じます(e.g. 東大、京大)。単位も付与されるようですので、一つくらいアントレプレナー系の授業をとってみるのもいいのではないでしょうか。
起業に関心がなくとも、あくまで一つの授業として軽い気持ちで登録してみてもいいと思います。あなたの当たり前や普通を壊して、もっと自由にキャリアを選択していいのだと気づけることがあるかもしれません。素晴らしい起業家がゲスト講師として登壇することもあるようで、手触り感のある話であなたを刺激してくれると思います。
2. 学会の活用
研究をしていれば出席するであろう、学会も実は様々な情報を入手できるチャンスが転がっています。例えば、ランチョンセミナーでスタートアップが講演をしていたり、キャリアセミナーが用意されていたり、企業がブースを出していたりです。優先順位としては自分の発表と、自分の研究領域に近い発表の聴講だと思いますが、力を抜いてそれ以外の情報収集の時間も作ってみてはいかがでしょうか?
あと、ふらふらしている先生に話しかけるのもおすすめです。最近ですと、アカデミアで素晴らしい仕事をされている方がアカデミア外でも活躍されていることが増えてきています。また、アカデミアの先生は積極的な学生と喜んで話をしてくださることが多いです。例えば、先日私が参加した学会で、Moderna社に買収されるOriCiro GenomicsのScientific founder、末次先生にポスター会場で話しかけられるタイミングは沢山ありました。学生の皆さん、話しかけてしまえばいいのになんて思っていたところです(末次先生ピンポイントですみません)。自分の研究領域の先生方がどのような活動をしているのか、アカデミア以外も含めて調べたうえで、直接話を聞いてみるのはいかがでしょうか。
3. 学外セミナーの活用
授業ですと所属大学の縛りができてしまいますが、学外のセミナーもあります。例えば、私は分子生物学が専門でしたので、度々LINK-Jさんのイベントにお邪魔しておりました。夕方~夜開催でオンライン参加可能なものも多く、テーマも多様。創薬関連事業について、誰がどんなことを考え何をしているのか垣間見ることができ、楽しむことができました。
他にも、日経のセミナー、JETRO主催のイベント、などリーチできるものは様々です。気に入りそうなテーマがあるかどうか、さらっと覗いてみてはいかがでしょうか。
4. SNSの活用
情報入手手段として、SNSが非常に便利であることは説明不要かと思います。特にアカデミアの研究者やスタートアップ関係者はSNSを積極的に活用しているように感じますので有効です。気になるアカデミア研究者のアカウントに加えて、自分の興味領域のアカウントをフォローすれば無意識的に情報収集が可能になるかと思います。
例えば製薬クラスタで影響力のあるアカウントを以下のようにまとめてくれている方がいらっしゃいました。
情報の信頼性を考慮しなければいけないですし、「どの情報を見ないか」も重要だとは思いますが、上手にSNSも活用したいものです。
5. スタートアップ界隈インターンの活用(少し宣伝)
スポットの情報収集と比べ、リソースが必要な手段ではありますが、「体験から得られる情報入手」という点で非常にいい機会です。上記の情報収集過程で気になる企業・人が発見でき、割ける時間があるのであればトライすることをお勧めできます。最近はインターネット系だけでなく、ディープテック系のスタートアップで学生の方がインターンをされるのも散見されるようになりました。学生であれ一人の戦力として関わることができ、学びも非常に多いです。
もし、興味があれば是非自分から動いてみてください。募集フォームの有無など一度置いておき、会社やCEOのTwitterのDMでも会社HPからでもラブコールを送ってみるといいと思います。熱のある学生を歓迎するスタートアップは多いかと思います。
ディープテックを扱うVCも学生インターンを受け付けることが多くなっています(私もライトではありますが、学生時代2年ほどANRIに関わらせておりました)。研究からは離れた投資家の立場から研究を眺めることでいろんな気づきがあると思います。弊社インターン生がどんな体験をし、何を得たのか興味のある方は是非以下をご覧ください。また、弊社にご関心のある方、ご連絡お待ちしております笑。
最後に~進路決定は「自分は何をしたいか」起点で~
情報収集をしたうえで、進路を決めるタイミングが来ると思います。その際に是非していただきたいのはまず「自分は何をしたいのか」を自分自身に問うことです。教授にアカデミアのポストを用意してもらえそうだからとか、就活イベントで知った企業で自分が評価されそうなところをリストアップすることからはじめず、フラットなところから自分を見つめてほしいのです。
そして「採用の枠にいかに自分が入り込むか」ではなく「自分のなしたいことをどうすれば成せるのか」というベクトルで進路探索をしてほしいと思います。
自分は何をしたいかを深堀をすることも重要だと思います。例えば、「製薬企業で研究をしたい」で終わらず、その欲望に「何故」を沢山投げかけてみてください。自分自身の何故に対してよどみなく言葉が出るようになったら、きっと良い状態です。フラットな状態での内省を積み重ね、収集していた情報と照らし合わせたときに自分の新たな可能性が見えてくるかもしれません。周りの友人や先輩があまり選択していない道のりだったとしても、「もしかして自分こんなことできるのでは」と思えることが見つかれば是非それを信じて突き進んでください。
可能性は無限大の皆さんが自分らしさを発揮できる場所でのびやかに活躍されることを切に願っています。
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