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ベンチャーキャピタルで半年間インターンして学んだ8つのことを言語化してみた


皆さん、こんにちは梨と葡萄の備忘録です。

独立系ベンチャーキャピタルANRIで昨年9月より6ヶ月間インターンして学んだことを備忘録として残したいと思います。これからANRIで働きたいと考えている方々の参考になればと思い、働くまで・働く流れがイメージしやすいように時系列順に書きました。内容としては、業務内容とそこから得た学びです。

私はこのインターンで雑用・単純作業・鞄持ちのようなものはほとんどしていません。むしろ、頭を使わない作業をさせてくれなかったという方が合っているかもしれません。作業を振られるというのは案外楽なもので、こなしている感・ある程度の充実感は得られます。一方で、作業を振られず、自分の頭を使って考えて仕事を見つけることの方が大変でやりがいのあるものです。ANRIには「雑用を下に振らない」という基本方針があるのでインターンである私もその方針に従って働きました。(察しの良い読者はANRIは上ほどきつくなるじゃないかと気づかれたかもしれません。お察しの通りです。)

今振り返ると、論理的・合理的に考えてANRIで働き始めることができたのは自然に思えます。しかし、論理性・合理性・必然性は後から振り返って付いてくるもので、論理はなんとでも組み立てられます。なので、今回はできるだけその時感じたこと・悩んだこと、という言わば感情的な部分を多めに書きました。これから新しい組織に入る人にとって共感できるものになればと思います。

今回の記事でお話するのはノウハウ・スキル等ではありません。そのようなテクニカルなものは適切なインプットと実務経験によって身につくと思いますし、それをここで語っても面白みがないような気がします。そこで、今回は業務内容に合わせて、思考の癖・ラーニング・アンラーニングのお話、ANRIで働かなければ手に入らなかった私にとっての新たな視点などを中心に書いています。正直なところ、VC・ANRIでないと学べない内容ではないかもしれませんが、その点はご容赦いただけたら幸いです。また、読者の皆さんにとっては当たり前の視点かもしれません。抽象化した文章にすると陳腐化してしまうかもしれません。しかし、実際に私自身が経験して悩みながら得た学びは他に変えられない貴重なものなので、それを皆さんに少しでも共有できたらと思って書きました。

1万字程度(推定読了時間15分)の長文なので、時間がない方は教訓の章から読んでいただければと思います。

前置きが長くなりましたが、まずは簡単にANRIの紹介をさせていただきます。

ANRIのご紹介

ANRIは代表の佐俣アンリが2012年に設立した独立系VC。2019年に4号ファンドを設立し、国内大手機関投資家などから集めた200億円規模を運用している。シード期のスタートアップへの投資を中心にし、積極的なフォローオンでグロース期まで一貫して起業家をサポートし、日本から大きな産業を創出することを目指している。また、大学発の研究技術開発スタートアップへの投資や女性起業家比率の向上に注力している。インターネット領域とディープテック領域の2チームあり、それぞれ渋谷・本郷にオフィスを構え、創業したばかりの起業家のインキュベーション施設としても提供している。

私の学部の頃からの個人的なテーマである「理学(基礎)・工学(応用)・社会(現実)を繋げ、研究者が自由に研究でき、研究をシームレスに社会実装できるような未来」というビジョンを達成できると考え、ディープテックチームのある本郷オフィスに入りました。

当時の私の目論見

インターン開始前、私は研究室メンバーと研究開発型スタートアップを起業しようとしていました。しかし、様々な理由で上手くいかず、悶々とする日々を送っていました。一度解散してチームメンバーはベンチャーに、そして私はベンチャーキャピタルで働くことになりました。この集合知が自分たちの起業に役立つのではないかという目論見がありました。

働き始めるまで

宮崎さんのツイッターからANRIにはたどり着きました。博士の新卒採用をするというツイートを見かけ、恐る恐る以下のメールを送りました。
「現在博士1年で卒業まで2年半以上あるんですが、インターンという形で働かせてもらえませんか?」
色々情報を漁りましたが、インターン募集をしていなさそうだったのでダメ元で聞いてみました。すると、まずカジュアルに話したいと返信が来ました。
それまでにnote・ポートフォリオ・経歴・ツイッターなどを調べて、どんな人柄・思想の持ち主なのかを探りました。ディープテックチームの情報は思ったより少なく、基本的にはnoteの情報を元に、私が達成したい世界に合っていることを確認し、お会いできることを心待ちにしていました。
ただ、当時のHPの写真が(ニーナさんの言葉をお借りすると)とにかくエッジーで、内心お会いするのは怖かったです。
今年更新したHPの写真は穏やかな形相ですが、昔は...

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一方で、同年代のニーナさんが在籍しているということが分かり、親近感が沸きました。ニーナさんはnoteやpodcastなどで積極的に発信されていたので、パーソナリティが想像しやすかったです。実際に会ってみると想像通り意志が強く、一方で柔軟で話やすいとても素敵な方でした。ニーナさんは素晴らしいnoteを書いているので、是非読んでみてください。
宮崎さんと直接話すと、HPの怖い感じはなく(あまりに優秀すぎて、違う怖さはあるかもしれません笑)、ミーティングでの一言目が「アジェンダとかないですけど、いいですか?笑」だったので、ゆるっとしすぎて正直拍子抜けしました。嫌ですと言えるわけもなく、自分からたくさん質問させていただきました。

働く環境

ANRIの本郷オフィスに入った瞬間、見慣れた光景が目に入り安堵しました。投資先のスマロボさんのロボットが駆け巡り、ホワイトボードには数式、本棚には技術書、馴染み深い大学の研究室に似ていたのでほっと一安心です。
本郷オフィスは東大赤門の目の前にあり、私は近くの坦々麺屋さんでよく飲むように坦々麺をすすっています(味付け茶卵のサービス券の有効期限が2050年のお店)。お会いしたらお声がけくださいね。
そして、週に一回は渋谷のオフィスに全員集合して定例会を行っていました。

教訓

先に結論を知りたい方向けに教訓をまとめておきます。
ただし、エピソードを読みながらの方が当時の私の状況と学びが想像しやすいかと思うので、もしご興味あればぜひ次の章もお読みください。

正直1, 2, 5, 6などはVCでインターンしないと身につかないことではないと思います。ビジネス経験がなく、学部から博士まで同質性の高いある意味閉鎖的な空間にいた私にとっては大きい学びとなりました。

1. 主役は聞き手
2. 仮説のないアウトプットはいらない
3. チープなバリューなら出さない方がマシ
4. 餅は餅屋、刀は刀屋
5. 素材に甘えるな、料理をしろ
6. 10年後のファクトフルネス
7. 天才を見てカンニング
8. 戦う前に勝負はついている

業務開始

働くことになった初日、いきなりベンチャーキャピタリストとしてのポジショニングの話をされました。VCの業務内容を全く理解していないのに話が早いなと驚いたことを覚えています。今思うと、VCというキャリアにおいて最重要部分の一つなので、最初からその意識を持つことができてありがたかったと振り返ります。

・企業サーベイレポート作成
・新規投資先候補・投資先定例などのミーティング参加&議事録作成
・事業仮説・業界産業のトレンドのレポート・スライド作成
・学会・ピッチ参加
・ANRI note執筆・投稿

定量値は書いていませんが、半年間でこなす分量について知りたい方は個別に連絡いただければお話いたします。上に記載されている業務の他にも定量化できない仕事(ネットワーキング・情報収集など)や未完成のディープテックスタートアップのサイト作り、定例会参加などをしていました。

ANRI noteの執筆方法はこちらのnoteを見ていただければと思います。


6ヶ月働いた内の最初の3ヶ月はVCとは何ぞやという基礎編で、次の3ヶ月はVCが実際に行う業務の一部を体験する実践編でした。
仕事(といっても私が勉強させてもらう体験)を始める前、ANRIに来る前に共同購入サービスを提供する中国のベンチャーPinduoduoの企業分析をしたので、そのスライドを宮崎さん・元島さんに添削いただきましたが、全スライドに赤が入り、作り直しました。Pinduoduoの企業分析をクイズ形式で作ったので、スライドが欲しい方はご連絡ください。

修正したポイントは以下の点です。

・1ページにつき主張は1つに絞る
・1文で主張をスライドの上方または下方に書く
・1文の主張のみ読んでいけば内容を聴衆が理解できるようにする
・左から右 or 上から下に聴衆の視線が流れるように書く

学び1. 主役は聞き手

上記は非常にテクニカルな話ですが、要は聴衆がどうやったら理解できるかを第一目標として考える、ということが重要です。聴衆がどういう人なのか何を求めて自分の発表を聞いているのかに集中してスライドを作成することがポイントです。例えば、ものすごく多忙で時間のない聴衆相手ならばスライドに書いてある1文のみ読んでいけば内容を理解できる作りにしたら親切でしょう。発表者である私は主役ではありません。聴衆が私の発表を聞くことで何かしらの意思決定をする・アクションを取る・アイディアが浮かぶことが目標です。このように考えると、とにかく聴衆第一の分かりやすいスライド作成・発表ができるのではないかと思いました。これは発表・スライド作成に限った話ではありません。

noteを書くときもそれを意識しています。

こちらのnoteは普段研究に携わっていない方にも読んでもらいたかったので、「連合学習とは何か?」というタイトルは避けました。もちろん最終的に連合学習とは何か?を伝えたかったのですが、このようなタイトルにしてしまうと、既に連合学習という言葉を知っている人しか読んでくれないと考えました。なので、できるだけ想定読者が興味を持ちやすく、自分ごととして捉えやすいタイトル「監視資本主義はディープテックスタートアップにとってビジネスチャンスとなるか?」を選びました。そして、読み進めていくと気づかないうちに連合学習を理解できるという文章構成にしました。

まずはインプット

日本の上場ディープテックスタートアップ5社の目論見書をまとめ、なぜその企業が成功したのか、その勝ち筋を紐解くという作業をしました。その作業を通じて日本のディープテックスタートアップの勝ち筋、業界のトレンド、資本政策などを学びました。目論見書を始め、IR(Investors Relations)といって企業のHPに必ず掲載される投資家向けの企業・事業説明資料は上場企業の場合は必ず公開されています。成功事例の勝ち筋を頭にストックすることで、似た企業・事業を検討する上でアナロジーを使えるかもしれません。ディープテックスタートアップの上場目論見書を読んでいくうちに、最先端の技術があれば事業が上手くいくわけではないということを理解しました。下の記事では、ディープテックスタートアップを評価する上で注視すべき事項をまとめています。


企業・論文サーベイ

IPOしているアメリカのスタートアップのForm S-1という日本でいう目論見書を読んで、その企業がなぜ成功したのかを分析し、投資先・投資検討中の企業の参考にします。また、ディープテックスタートアップの場合は技術の優位性を論文を読んで判断します。自分の専門分野外だと基礎用語から何も分からず苦しい分野もありました。参考までにCrunchbaseのS-1の読み方についてのブログ"From Private To Public: How To Read An S-1"を貼っておきます。


学び2. 仮説のないアウトプットはいらない

私にとって全てが新しい情報だったので、200ページもある目論見書をほぼ目を通しました。何がどこに書かれているのか知らなかったため、欲しい情報を探すのにも苦労しました。例えば、シードで投資したVCの投資時の株式保有率など。

以下はNASDQに上場しているあるバイオベンチャーのS-1の目次です。

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全ての情報を並列処理し、全探索的に求めている情報を探していました。そして、"アウトプット"として、"目論見書のまとめ(目論見書の分量を単純に減らしただけのS-1縮小版)"を提出していました。しかし、そのとき求められていたアウトプットは私が提出した"アウトプット"とは別物でした。私の"アウトプット"を提出すると、アウトプットを出してと言われました。
アウトプットはアウトプットでもアウトプットではないアウトプットなぁ〜んだ?というなぞなぞではありません。

提出すると自分の意見を最初にサマリーとして3文程度で書くようにと言われました。独自の視点から考察した仮説を元に主張を決めて、それについて分析したものがアウトプットだったのです。まだ、少し説明が分かりづらいですね。今思うと当た前のことですが、情報量だけ落ちたS-1縮小版を提出されても困りますよね。

アウトプットを出すには、まず明確な目標設定が必要です。目標設定は作業の位置づけを認識することから始まります。なぜこの「目論見書のまとめ」という作業を私がやらなければならないのかという理由を考えることから始まります。

下の図はVCの仕事を自分なりに階層化してまとめてみたものですが、私が頼まれたのは赤四角で囲まれた部分です。この階層の上を辿っていくと、この作業をする理由がわかるかと思います。では、階層を上に辿っておきましょう。

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私の目標は、「上場企業が上場できた理由を探して、今後類似の企業・事業と出会ったときに使える情報としてストックしておく」ことです。このように目標設定が明確になると、「目論見書をまとめる」→「目論見書から勝ち筋を3つ見つける」というより具体的な課題に変わります。勝ち筋の仮説を推測してから調査を開始することで、私がはじめに書いていた"偽のアウトプット"より深い議論・調査・思考が可能になります。
1. 目的確認 → 2. 課題設定 → 3. 仮説設定 → 4. エビデンス探し → 5. 仮説修正 → 3に戻る

研究をするときももちろん仮説を立てて、その主張を補強するために数式をいじったり、シミュレーションをすると思うのですが、今回はあまりにも基礎知識がなかったため全探索的な発想になってしまいました。しかし、これは自分の馴染みのない領域であってもこの思考ができた方が良いと思います。とは言いつつ、最短時間で最大のアウトプットを出すことを意識すると、独創的で狂ったような素晴らしいモノは生まれないと思っている自分もいるので、「大嫌いなアウトプット思考のすヽめ」という記事でも書こうと思います。あえて最短経路を求めすぎない方が面白いと思えるくらいの余裕は持ちたいなと。

新規投資先候補&投資先定例参加

新規投資検討&投資先の定例に同席させてもらいました。その時ANRIがメンバーがどういう質問をするのか、なぜその質問をするのかを全部吸収しようと意気込んで臨みました。質問項目を作り、網羅的に質問できるように。そして、自分にしかできない質問は何かを考えていました。しかし、良い質問をするというのは中々難しく、質の高い質問ができないと皆さんの時間を無駄にしているような気がしていました。結局自分のcomfort zoneから抜け出さない質問・コメントをしてしまって、自己満足で終わることが多かった気がします。ミーティング参加以外のときも、常に「あなたに何ができるのか?」という問いを自分自身に投げかけていました。Comfort zoneの外に立たされたときに、あなたには何ができますか?

学び3. チープなバリューなら出さない方がマシ

何も発言できないと、そこにいる価値がないと思っていました。しかし、発言して時間を無駄にするわけにはいかない。自分はバリューを出せなくて悩んでいると、「チープなバリューなら出すな。そんな自分本意なアピールはいらない。」と言われハッとしました。
「バリューを出す」、主語は「私」です。「私が私のバリューを出す」。しかしながら、起業家の方々とのミーティングにおいて、私のバリューなんてどうでもいいことです。その場における目標は建設的な議論をして、起業家が何かしらアイディア・戦略を思いつくきっかけを作る・アクションプランを立てることなどです。この状況で無理に私のバリューを出す必要なんてありません。私が自分の能力・知識をアピールしたところで起業家の皆さんの事業は前に進みません。もちろん、自分のバリューが出せて、かつ起業家のためになるならいいですが、自分のバリューを出すことを第一目標にしない方が良いと学びました。

事業仮説を立てる

アメリカのディープテックスタートアップ の企業分析・業界分析を通して、成功する事業・VCの特徴を調べていました。具体的には半導体領域・ロボット領域のアメリカでの成功事例を調べて、日本での勝ち筋を見つけるというものでした。アメリカでのスタートアップのMA:IPO=9:1(日本はMA:IPO=3:7)であるため、上場時に公開される目論見書のような公開情報が少ない場合が多いです。私がそのとき注目していたアメリカのVCは全員製造業出身で業界知識も豊富で、その強みを活かしてエグジットを短期間に何社も出していました。

学び4. 餅は餅屋、刀は刀屋

業界知識がない私に投資なんてできないと嘆いていたら、「たしかに9割はデスクトップリサーチで調べられる。しかし、さらに深い業界知識は起業家に任せる」と言われました。なんでも自分で調べられると勘違いしないで、起業家に教えてもらう・起業家と一緒に学ぶ姿勢を忘れずに。自分一人でなんでも分かろうとするのは、私の悪い癖です。起業家のみならず、自分の周りの人に聞く。太字にするまでもないことだとは分かっていますが、いざとなると実践できないことが多いと気づきました。自分自身の時間・能力を拡張する手っ取り早い方法として、自分の周りの人たちを自分のアセットとしてしまう。努力することになれてしまって、頭を使わず茨の道を選んでしまいそうになったときには、一度立ち止まって茨を回避する方法を選ぶ、人に頼る、起業家を信じるということを忘れないようにしたいです。

後期:実践編

さて、後期になるとより実践的な内容に踏み込みました。
明確な数値目標を立てました。具体的には、
・記事を1本/2~3週間
・起業家に5人会う

これはANRIの組織/採用周りのサポートをされている河合さんにも相談させていただき、ひとまずここからの3ヶ月はこの数値目標を達成できるように努力しました。

学会・ピッチへの参加

学び5. 素材に甘えるな、料理をしろ

悲しいことに意思決定は印象で決まることが多いです。1時間話すと案外その人の人柄はわかるものです。ただ、事業や技術といったメインの内容以上に、話し方・仕草・目線・言葉使いなどが意思決定に繋がることを学びました。見た目、属性は判断材料の一つになります。それは起業家・投資家双方向です。ニーナさんが企画してくださった無意識バイアスのワークショップでバイアスの威力を学んだので、私はなるべく印象と事業内容を独立変数として扱いたいと考えました。そこで、例えば、「この人は自信がなさそうだなぁ」と感じた時には、「自信がなさそう」・「質問をすると口に手を当てながら話す」など、印象・言動をメモして、私が受ける印象の原因を突き止めるようにしました。これによって、印象だけで判断しないように心がけています。誰かと話したら、何を感じたか・それを感じた理由がなんだったのかを両方メモすることで自分の感じ方・思考の癖を発見しようと考えました。幸いオンラインだと話しながらメモが取れるので、このようなことが可能になります。私のnotionにはお会いした方々の内容的な議事録だけでなく、パーソナリティ・印象に関する詳細なメモが書いてあります。それは初対面の方だけでなく普段話をしている人・久しぶりに会う人、全員のメモを取っています。
これは自分自身の言動を振り返る時にも役立っていて、メモして真似したいと思った言葉遣い・仕草を自分のものにしようとしています。内容(事業として・人として)が素晴らしいのに、印象で減点されるのはもったいないです。それは人の振り見て我が振り直せではないですが、私自身すごく気をつけたいポイントです。素材がいくら良くても、調理が下手だとおいしく食べられません。その一方で、料理だけが上手く、素材はよくないマヤカシ食材もあるので気を付けなければいけませんが。

ソーシング

この章では学びが3つあります。先に書いておきましょう。

6. 10年後のファクトフルネス
7. 天才を見てカンニング
8. 戦う前に勝負はついている

学び6.10年後のファクトフルネス

技術・産業に投資すべきか悩んだら、10年後の未来に必ずありそうか思いを馳せます。一見単純ですが、非常に有効な思考方法です。そして、いろんな未来が描けたら、どの未来の確度が高いかリサーチを通して調べて、その未来に賭ける。VC側が大きな絵を持って、固執してはなりませんが、未来がどうなるか一定程度自分の仮説は持つべきだと思います。不確実性しかないこの世界で確かなものを見つける。例えば、2020年の新型コロナウイルスの蔓延は誰れも予想だにしていなかったことでしょう。しかし、日本の人口減少は不可逆な変化なのではないでしょうか?そこから、一つずつ確実な未来を予想していったら的に当たるくらいの未来予想図が描けるのではないでしょうか?確実な部分と不確実な部分の線引きを認識するだけでも未来予測精度は上がるのではないでしょうか?

学び7. 天才を見てカンニング

近くの天才は何をしていますか?
学び. 7では、未来予想に関する話でした。どうやってもあと一歩詰められない未来がある。Aという未来とBという未来まで絞れたとします。その後は決め打ちできるほどの情報がない場合、どうしたらいいのでしょう?

ひとつの方法として、自分の周りの天才が何をしているかに注目することです。彼らには凡人には見えていない景色が見えているはずです。10年後の世界の中を生きているかもしれません。人の流れを見たら、社会がどう変革していくか簡単に予測できる場合もあります。天才たちが流れていく先が未来だとすると、その人たちが向いている方向を見て、目を凝らしてみると未来が広がっているかもしれません。

学び8. 戦う前に勝負はついている

では、そんな天才たちに会った時に何をするのか。
彼らと接点を持った時に、質問をする・なんらかの行動を促すなどのアクションがあると思います。
具体的には、私は個人的に起業していただきたい人に出会いました。「インタビューは事前準備で決まる」と言われたので、その方のパーソナリティ(まだ起業家ですらない)・その方に合いそうな事業について洗いざらい調べて、論点を絞りました。
そして、質問したときの想定回答・その後の話の進め方などを条件分岐させ頭の中で何回もシミュレーションしました。ここで、航空宇宙の授業で学部の頃に習ったミッションのリスク管理思考方法が役に立ちました。良い質問をするには、どれだけ深く調べられているか、想像できるか、相手の立場に立てるかが重要です。相手がどんな返答をするか予想しない仮説がないまま適当な質問をすると、それ以上の解像度のものは返ってこないことが多いです。自分がぼんやりしているとぼんやりとした回答が返ってきてしまいます。ミーティングの時間を充実した物にするためには事前準備が命です。


向いている人

以下の特徴が当てはまる人にはもってこいのインターンなのではないかと思います。

・個で動くことが好きだが、チームワークも得意な人
・自分で計画を立てることが好きで、推進力がある人
・アンラーニング・ラーニングが好きな人
・comfort zoneを拡張したい人
・知的好奇心が強い人
・柔軟な思考ができる人
・長期的思考が好きな人

怒りと諦めと希望と

博士は専門性が高すぎて使えない、コミュニケーション能力がない、社会性がないから使えないと面と向かって言われたこともあります。女性だから優遇されるんでしょと言われることもあります。学部はどこ...?と聞かれて、横柄な態度から一変擦り寄ってくる人もいます。そのような扱いをされると一時的に大変悲しい気持ちになりますが、私に対してそのように接してもらうのは全く構いません。むしろ、この問題を構造的に解決できるような活動をせねばと使命感が湧き上がります。

さて、ANRIは研究者・博士の存在・彼ら彼女らの働きを心から尊敬しています。
そして、真のダイバーシティを目指しております。社内では「これからの時代を作るのはいつだって若者だし、基本的には若者が一番正しい」という考え方が浸透しています。若者であろうと、性別が何であろうと、バックグラウンドが違かろうと、互いにリスペクトし合い、余計な圧力のないとても働きやすい環境です。

悩みの先へ

新しい組織に一人で飛び込むというのはわたしにとって易しいことではなく、成長痛を伴いながらも実りのある経験となりました。
どうやったら皆さんに認めてもらえるか、信用してもらえるのと悩んだ半年でした。そして、"人"を見ることが仕事の方々に自分の能力・人間性・思想・熱量を理解してもらうには一筋縄ではいきません。数回話すだけでは取り繕うこともできるかもしてませんが、半年はそうするには長すぎます。そのため、コツコツと実直に徳を積み上げていく他ありませんでした。

ただし、コツコツと積み上げたら誰かが見てくれるほど甘くはありません。アウトプットを出して、アピールする必要があります。アピールという言葉が私は嫌いで苦手です。しかし、この考え方は色々な方々にしつこく教えていただき、最近できるようになってきた気がします。下記の本にはそのことについて書いてあります。

まとめ

この半年間大変楽しい経験をさせていただきました。自由な発想・活動を認め、間違った方向に進みそうなときは正直に何が間違っているか・正しいのか、道に迷わないようにたくさんアドバイスいただきました。ANRIの皆さん本当にありがとうございました。自分にはできないと思っていたことができるようになりました。意外と食わず嫌いせず挑戦してみると、できてしまうのかもしれません。今回は8つに学びを絞りましたが、実際にはもさらに多くのことを学びました。今後もこのような形で悩みと学びを発信し続けたいと思います。深い悩みこそ成長するチャンスだと信じて。

実はこれからもANRIを続けさせていただけることになりました。まだまだ未熟な私ですが、研究者・起業家・ANRIメンバーのお役に立てるように頑張ります。

ここまで読んでいただきありがとうございました。長文乱文失礼いたしました。

インターンの詳細を知りたい方はご連絡いただければ、答えられる範囲でお話したいたします。

次の記事はこちら。

注意)上記の内容は、決して他のVCに適用されるわけではないので、あくまでもANRIに限った話で、かつ私の主観成分100%ということを強調させてください。そして、私はディープテックという研究開発型の事業に投資するチームで活動しているので、領域も限定的であることもどうかご理解ください。

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