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才能に嫉妬しセンスにうなった神エッセイ『第2図書係補佐』(又吉直樹著)

書籍の数あるジャンルの中でも、エッセイが好きだ。

好きすぎて自分でも書きたくなってしまい今に至るが、そんな私が何度も読み返し、文章を書くうえでの目標にもさせていただいている「神エッセイ」を紹介したい。

『第2図書係補佐』(又吉直樹著)

この本は、お笑いコンビ・ピースの又吉直樹さんがまだあまり売れていない時代に、フリーペーパーに連載していたものをまとめたエッセイ集である。又吉さんが読んできたおすすめの本を、自身のエピソードを織り交ぜながら紹介していく。

私は8年くらい前に、カルチャースクールのエッセイ講座というものに通っていたのだが、その講師が「面白くて驚いた」と勧めてくれたのが、この『第二図書係補佐』である。ちょうど『火花』が芥川賞を受賞したタイミングで、又吉さんの他の作品も注目されていた時期だったかもしれない。

文章が上手くなりたい一心で、講師が勧めるならばとすぐに本屋へ行った。そして私も面白すぎて驚いた。

まず、切り口が多様。自身に起きた出来事や考え、時にフィクションに、著者おすすめの本がいろいろな形で登場する。そのセンスにうなる。とにかく笑い、ところどころで共感し、たまに引く。又吉さんならでは過ぎるクセがしっかりと詰まっている。しかもグッとくるところもあるから油断ができない。

エッセイ講座に通っているというぬるい環境にいた私は、又吉さんのその書かずにはいられない衝動のような、たぶん才能といえるものに、厚かましくも嫉妬した。でも、根性なしの私は奮起して負けないぞとかは思わない。参考にさせて頂こう!と、それから何度も何度も読み返すこととなった。エッセイが好きだと言っても、繰り返し読む作品は少ない。やはり私にとっての「神エッセイ」というしかない。私はこの中で紹介されている中村文則さんの本を読み、その後、他の作品も読むようになった。エッセイを読んで終わりではなくその先に繋がったということも、このエッセイ集が特別だと思う理由の一つである。


というわけで、書いていて気が付いてしまったが、私のというより、これはエッセイ講座の講師のおすすめなのではという作品だ。

それはさておき、さらに加えれば、この中のエッセイは一つが2、3ページという長さで少しの時間でも読みやすい。ただ、たとえばカフェで、今ではあまり見かけないが電車の中で読むことはおすすめしない。そこは、笑いの要素が満載なエッセイの唯一いけないところである。

自分がエッセイの真似ごとのようなものを書くようになって、素晴らしい作品に出会った感動が以前よりも増して胸にせまるようになった気がしている。書き始めた早い段階でこの『第2図書係補佐』に出会えた私は、とても運がいいと思う。やっぱり私は、エッセイが好きだ。


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