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【特許から見る】新入社員関連テクノロジー

「知財情報を組織の力に®」をモットーに活動している知財情報コンサルタントの野崎です。

4月になりました。

ここ2年間は新型コロナウイルス感染症の影響で入社式をオンライン開催する会社も多かったかと思いますが、先週4月1日金曜日には新入社員らしき方々を新橋でも見かけましたので、入社式をリアル開催した企業も徐々に増えてきているのではないかと思います。

そんなわけで、新入社員の方々向けに企業などはどのような特許出願を行っているのか?特許から見た新入社員関連テクノロジーについて見ていきたいと思います。

まず、分析母集団は全文に「新入社員」というキーワードが含まれている日本特許・実用新案340件(特許:336件、実用新案:4件)です。

図:新入社員関連特許の国内特許・実用新案件数推移

まず件数推移を見ると、2002年にピークがあり、その後減少した後、2010年代に入って再び増加傾向にあります。

2000年代前半はビジネスモデル特許ブームがありましたので、その影響が強く出ていると思います。新型コロナウイルス感染症の本格的な流行が始まったのは2020年1月以降ですので、まだ新型コロナウイルス感染症を念頭に置いた新入社員関連テクノロジーはすべて補足できていません。

次に出願人・権利者ランキングです。個人発明家の方は「個人」で名寄せしています(それ以外の出願人・権利者名も名寄せしています)。

図:新入社員関連特許・実用新案の出願人・権利者ランキング

トップは個人ですが、企業としてはリコー、日本電気、パナソニックなど大手エレクトロニクス・ICT企業がランクインしています。

そんな中、需給情報マッチング支援システムDasieを提供しているニーズトゥーマッチが上位に食い込んでいます。

出願事例としては

JP6051250B2JP2015144010A
マッチング支援装置、マッチング支援システム及びプログラム
【課題】情報の変化を迅速的確に反映したマッチングを行い、マッチング対象にしたい情報を入力する手段を多様にできるマッチング支援装置等を提供する。
【解決手段】供給情報及び需要情報の少なくとも何れか一方を取得し記録する情報記録部11と、需要情報と供給情報とのマッチングを行うマッチング部12と、マッチングの結果を供給者端末及び需要者端末に送信する結果送信部14とを備え、情報記録部11は、供給者端末及び需要者端末のうち少なくとも何れか一方から指定された任意の期間、供給情報や需要情報の受信を継続して行うと共に、任意の期間供給情報や需要情報の記録を保持し、マッチング部12は、供給者端末の入力画面や需要者端末の入力画面から入力された情報を含む所定の情報を供給情報や需要情報とし、既に受信済の供給情報、及び/又は、需要情報と、新たに受信した供給情報、及び/又は、需要情報との間でマッチングを行う。

同図においては、スケジュール情報112bに含まれる「新入社員歓迎会」112b1と、(新入社員歓迎会の会場である)需要情報112aに含まれる「レストラン」112a1及び「カラオケ(伴奏に合わせて客に歌を歌わせるサービスを提供する店舗のこと。)」112a2とが紐付けられる。なお、図6A及び図6Bに示す通り、「レストラン」112a1及び「カラオケ」112a2は、時間情報112a13を有している。

のように新入社員歓迎会のスケジュール調整を例として挙げています。カラオケなども入っていますが、企業によってはまだ懇親会やカラオケなどは厳しいところがあるかもしれません。。。。

さて、上位出願人・権利者の件数推移を見てみると、

図:新入社員関連特許・実用新案の上位出願人・権利者別件数推移

継続的に出願している企業はあまりありません。企業としては日本電気(NEC)や日立製作所などは最近コンスタントに出願しています(といっても1-2件/年ですが)。

それでは新入社員関連テクノロジーはどのような技術分野なのか?筆頭FI(ファイルインデックス)サブクラスのランキングを見てみましょう。

図:新入社員関連特許・実用新案の筆頭FIサブクラスランキング

多いのはG06FやG06Qとなります。G06Fは現在のビジネスモデルの特許分類であるG06Qの前身となるG06F17/60が含まれていますので、新入社員関連テクノロジーのほとんどがビジネスモデルであると言えます。

その他、新入社員向けの教育(G09B)や、AI・量子コンピュータ(G06N)に関する出願もあることが分かります。

ちなみに教育関連では、

特開2022-046293(日立製作所)
画面操作教育システムおよび画面操作教育方法
【課題】画面操作を介した作業手順を適切に教育できるようにした画面操作教育システムおよび画面操作教育方法を提供すること。
【解決手段】画面操作を介した作業手順を教育する画面操作教育システムは、作業指示と当該作業指示に対応する所定の座標範囲とが設定された学習用画面21を含む学習用コンテンツ情報を受け付けて登録するコンテンツ登録部12と、学習用画面に対して学習者端末3で操作された座標位置と所定の座標範囲とに基づいて、学習用コンテンツ情報の学習結果を判定する学習結果判定部16と、学習結果判定部により判定された学習結果を出力する学習結果出力部17と、を備える。
【背景技術】【0002】
プロジェクトへの新たな参加者や新入社員などの新規入場者に対して作業手順を教えるために、OJT(On—the—Job Training)が用いられている。最初は熟練者が新規入場者に作業手順を教育し、その結果、新規入場者が操作手順を正しく理解していると認定されると、新規入場者単独での作業が可能となる。

などがあります。筆頭FIサブクラスランキングの上位には入っていないのですが、新型コロナウイルス感染症を意識した出願だと

JP2022018366A(個人)
殺菌済空気供給システム及び対面空気遮蔽テーブル
【課題】病原菌で汚染された空気の中を個人が活動できることを特徴とする殺菌済空気供給システムを提供する。
【解決手段】殺菌済空気充填ボンベと、気密マスクと、前記殺菌済空気充填ボンベと前記気密マスクに開口端を持つ接続管からなる個人が携行可能な殺菌済空気供給システムであって、殺菌済空気充填ボンベに多重殺菌済空気を装荷することにより十分に殺菌された空気を供給する。

がそうかな・・・と思ったのですが、実施例を見ると

大きな組織には天下りが付きものである。急に変革しようとすると失敗する。どんな組織も新入社員(正規、不正規)を10年採用しなければ縮小する。現行の護送船団方式組織は大多数の民と職員の幸せ感をもたらしてくれるから維持すべきものである。

ちょっと違いましたね。。。。

新入社員関連テクノロジーで、最近出願が伸びている分野を確認するために出願ポジショニングマップ®を見てみましょう。

図:新入社員関連特許・実用新案の出願ポジショニングマップ(筆頭FIサブクラス)

左上の領域が直近出願が急増している筆頭FIサブクラスです(といっても1件ですが)。

先ほど紹介した「殺菌済空気供給システム及び対面空気遮蔽テーブル」はA62Bもここに入っています。

2件ではありますが、出願が伸びているのがG06T(画像処理)です。出願事例を見てみると、

JP2021531561A(マイクロソフト)
3D移行
3次元環境で移行を管理するための技術には、ディスプレイ上で第1の3次元シーンをレンダリングすることが含まれる。第1の3次元シーンを第2の3次元シーンに置き換えるべきであるという指標が受信される。第2の3次元シーンへの移行を表すグラフィックデータが受信される。グラフィックデータを使用して、第1の3次元シーンを第2の3次元シーンに移行させる。第2の3次元シーンをレンダリングするコントロールは、第2の3次元シーンをレンダリングするように構成されたプロセスに移される。

という概要で、実施例を見てみると、

ヘッドマウントディスプレイ装置等の3Dレンダリングシステムの使用がより普及するにつれて、益々多くのユーザが、拡張現実(AR)技術、複合現実技術、及び/又は仮想現実(VR)技術を介してコンテンツが表示される体験に参加することができる。エンターテインメントのシナリオに加えて、特定の目的(例えば、新入社員トレーニングのための従業員トレーニング体験、休暇等のサービス又は1対のスキー等のアイテムの潜在的な購入者向けのマーケティング体験)のためにこれらの体験を行う人が益々増えている。AR、VR等で表示されるシーンは、様々な状況下で表示される内容が急速に移行することがよくあり得る。

メタバースにおける新入社員トレーニングを念頭においた出願でした。この出願自体は2018年にされているので、新型コロナウイルス感染症や、FacebookのMETAへの社名変更前ですが、来るべきメタバース(当時はメタバースという言葉自体注目されていなかったと思いますが)時代を意識していたのではないでしょうか。

以上、J-PlatPatで新入社員関連特許・実用新案について調べた結果について概観してきました。

4月に入社されて知的財産部門に配属される方もいらっしゃるかと思いますが、今後も特許情報を身近に感じていただけるようなコンテンツを配信していきますので、よろしければフォローしていただければ幸いです(あと以下のYoutubeチャンネルもよろしくお願いいたします)。


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