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ブルガリア紀行-バラ祭り-2022年

“バラの国”の異名を持つブルガリアでは、毎年6月になると『バラ祭り』が開催される。
(コロナウイルスの流行で2020年は開催が中止された)

このバラ祭りは、1903年からバラの収穫を祝うために始まったお祭りで、世界中から観光客が訪れる。

幼い頃、日本のテレビ番組で紹介されているのを観てからずっと夢見ていたバラ祭りに今年、遂に参加することができた。

本記事では、そんなブルガリアで最大のお祭りともいえる「ブルガリアバラ祭り」を私の体験と共にご紹介したい。

ブルガリア、バラの都市「Казанлък(カザンラク)」へ

バラ祭りが行われる都市「Казанлък(カザンラク)」はソフィアから車で3時間ほどで訪れることができる。

ソフィア市内からはカザンラクへ行くバスも列車も出ており、今回はブルガリア人の友人がソフィアから車で連れて行ってくれた。

カザンラクに到着し、暑さに耐えかね車の窓を開けると、バラの香りが仄かに鼻を抜ける。

ほんのりと甘く、少し緑っぽい香りに「バラの谷」にいることを実感した。

実は“日本”と深い関わりのある「ブルガリアバラ祭り」

まずはカザンラク市の中心であり、お祭りのメインイベントが行われる中央広場へと向かう。

バラ祭りの時期にはバラ製品の売店が多く並ぶ


カザンラクの広場に面する“イスクラ通り”には、「Японката(日本人女性の像)」という着物を着た日本人女性像が建てられていた。

2015年に、カザンラク市の日本に対する友好の証として、“ドコ・ドコフ”いうカザンラクの彫刻家により建立されたそう。

サ◯エさんみたいでかわいい

実はこのカザンラク、想像以上に日本深い関わりのある都市。

例えば、バラ祭りではその年に高校を卒業する女性の中から「バラの女王」を決めるコンテストが毎年開催される。

そして、バラの女王に選ばれた女性は、「広島県福山市」と「福岡県宗像市(むなかたし)」を表敬訪問する。

というのも、福山市と宗像市はカザンラクと「パートナー都市関係」にあるからだそう。

「ブルガリアの第二の都市“プロブディフ”と岡山県の姉妹都市関係」といい、ブルガリアは私たちが思っている以上に、日本と繋がりを持っていると思う。

そして、それを実感するたびにとても嬉しい気持ちになる。

可愛らしいお土産を売っていた出店。

バラの女王の写真をパッケージに使っていたお土産屋さん。

お店の女性に「さすがバラの女王、美しいですね」と言うと、「娘が3年前に日本に行っていたのよ」と嬉しそうに話してくれた。

バラの花びらがそのまま使われている「バラレモネード」を飲んでみると、しっかりとバラの香りがするのだが、さっぱりとしていて飲みやすい。

ブルガリアに来てから、バラを用いた食べ物のクオリティの高さに驚かされてばかりだ。

いよいよ「バラ摘み」へ

このバラ祭りで私が最も楽しみにしていたのが「バラ摘み」だ。

バラ祭りの期間中、カザンラクの周りにあるそれぞれの村で民族衣装を着た村の人々と、バラ摘み体験ができるのだ。

今回、私は2つの村を訪れることが出来た。

1つ目の村、Овощник( オボシュトニック)

バラ摘みができるバラ畑がある大きな村の一つである「Овощник(オボシュトニック)」

どこにバラ畑があるか、明確な地図はバラ祭りのホームページにもどこにも書かれていない。

「村に行ってみて、村の人に直接聞く方が正確だろう」とのことでとりあえず車を村へ走らせる。

この、商魂を感じさせない緩い感じが「ブルガリアらしいなあ」と感じる。

いざ村へ行ってみると、道路の脇に手作り感のある看板が「バラ畑はこちら」と案内してくれていてスムーズにバラ畑へ辿り着くことができた。

バラ畑に着き、ピンク色の風船に沿って歩いていく。
既に、新鮮なバラの良い香りが漂っていて胸が躍る。

特に強い香りを放っているのは、バラから作られるオイルを蒸留している昔ながらの銅の蒸留機。

とても素敵な民族衣装を着た村の人々

ブルガリアの民族衣装「Носия(ノシヤ)」を着た村人たちが摘みたてのバラの花びらを撒いている。

あまりの暑さで顔が真っ赤

村の人々が、バラから作られた手作りのお酒を振舞ってくれた。

何度でも言うが、この空間には、あたり一面に咲き誇るバラからの香りがずっと漂っている。

ここで、致命的なことに気がつく。
「あ、バラって棘あるじゃん…」

はるばるカザンラクまで来たのだ。そんなこと気にせず、指に刺さる棘を抜きながらどんどん摘んでいく。

普段なら少し照れくさい写真だって沢山撮る。

2つ目の村「Кран(クラン)」

2日目の訪れたのは、「Кран(クラン)」という村だ。

この村は、先程行ったオボシュトニックと異なり、村の道路には何の案内も書かれていなかった。

複数の村人に声をかけ、やっとのことでバラ摘みが行われるバラ畑へ辿り着いた。

道を聞いた村の人々全員が親切に教えてくださり感謝。

ここでも、ブルガリアの民族衣装を着た女性たちが花冠を作っている。

近くでは、昼間からお酒を飲んでご機嫌になった男性たちが、楽しそうに談笑している。

「おいでおいで」と座らせてくれ、ブルガリアの蒸留酒「Ракия(ラキヤ)」を飲ませてくれた。

周囲には、フォークダンス「ホロ」を踊る人々が。

「踊らないんですか?」と聞くと「俺はラキヤを飲むだけだね」と返してきて大笑いした。

すっかり出来上がったおじいさんは、大量のさくらんぼをお土産にくれた。

「ようこそ」と歓迎してくれた笑顔の素敵な女性たち。

民族衣装を見てみると、様々な模様がありとても美しいなと思う。

ここでも後ろには山々が広がり、バラは沢山の太陽の光を浴びている。

そろそろお気づきの方もいるかもしれない。

そう、ブルガリアで栽培されるバラ「ダマスクスローズ」はピンク色なのだ。

一般的に、バラといえば真っ赤な花びらを想像すると思うのだが、ブルガリアに来てから「バラ=赤い」というイメージは変わった。

また、カザンラクを訪れて、ブルガリア人に「バラの色と言えば?」と聞くと「ピンク」という答えが返ってくる理由がわかった。

"恒例"の有り難さに思いを馳せる

夕方になると、中央広場に建てられたステージでさまざまな国の民族衣装を着た人々が踊りを披露していた。

日が落ち、少し過ごしやすくなり、暑かった1日が終わろうとする夕刻。

「バラ祭り」という祭りを家族や友人と人々が楽しむ幸せな光景を眺めながら、ふと「恒例」を楽しむことのできることの有り難さを感じた。

この時期に、地元に帰り友人や家族と会う人もいるだろう。

孫と会い、どんどん大きくなる孫の成長を感じる人もいるのだろう。

毎年、その地域に根差した恒例行事を楽しむ「祭り」

目まぐるしく状況が変わる世界の中で、このように「恒例」として人々が捉えることができるものや瞬間があるのは、とても素敵なことだな、と思う。

綺麗な写真の中に入り込んだかと思うくらい景色の美しさに圧倒されたバラ摘み。

芳醇なバラの香りや、現地の人々の空気を五感で楽しんだカザンラク。

留学生活も残すところわずかになってきたが、一生忘れられない思い出がまた増えた。



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