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【展示】文喫 六本木「あなたのディストピア展」に anon press が参加

六本木の書店「文喫」にて開催の企画展「あなたのディストピア展」に anon press が参加し、エントランス空間にて展示を行ないました。

「あなたのディストピア展」
会期:2024年4月3日(水)〜4月29日(月)
時間:9:00〜20:00
場所:東京都港区六本木6-1-20 六本木電気ビル1F
入場無料

この場所、ディストピア。
ディストピアはギリシア語の「δυσ(悪い)」と「τόπος(場所)」を組み合わせた言葉である。アンチ・ユートピアとも呼ばれ、ユートピア、つまり理想郷の対極にある世界を指す。日本語では暗黒郷とも言い表される。
そもそもユートピアとは、イングランドの思想家トマス・モアが1516年にラテン語で出版した『ユートピア』という本に登場する架空の国家の名称である。ギリシア語の「οὐ(無い)」と「τόπος(場所)」を組み合わせた造語で「どこにもない場所」という意味だ。トマス・モアの意図は、どこにもない理想の社会を対置し、現実の社会を批判的に見ることにあった。
ディストピアはフィクションの中に現れる。現在目の前にある社会課題が極限まで悪化した世界、現実社会の既にある傾向が行きつくところまで行った世界、歴史のある時点で異なる選択をした世界など、多くは、私たちが想像するバッドシナリオ、ifの世界が描かれている。
しかし、ユートピアが「どこにもない場所」であるならば、今生きているこの場所がディストピアだと言えるだろう。この場所、this topiaである。日々、目にするフィクションの中で、悲惨な状況に慄いたり、巨大な悪に憤ってみたり、安全な自分の状況に安堵したりする。そんなあなたが立っている場所こそがディストピアなのかも知れない。
「あなたのディストピア」展では、フィクションのディストピアから現実にあるディストピアまで、複数の本によって描き出してみる。この場所には希望も絶望も、一緒くたに、ごちゃ混ぜになっている。誰かの希望は誰かの絶望であるかもしれないし、誰かの絶望が誰かの希望であるかもしれない。ディストピアに取り込まれるにせよ、ディストピアを抜け出すにせよ、ディストピアをぶち壊すにせよ、この場所(this topia)で生き延びるためのツールを手にして欲しい。

本展では、これまで anon press に掲載された100作以上の中から編集部がテキストを選定し、壁面を覆うイメージと床面に散らばる瓦礫を制作。

そこでは anon press の作品たちが既存の文脈を離れ、自在に泳ぎ回りながら、新たな繋がりを結んではほどけていきます。無数の物語が切り刻まれ交雑する混沌の中から、鑑賞者各々が何かしらのイメージを読み取ってしまう・・・・・・・・こと。それは「今・ここディストピア」と「いつか・どこかユートピア」が直列することで生まれる、蝕のような体験といえるでしょう。あらゆる物語が立ち上がり、頽れる。永遠の痙攣としての創作。それはまさに、anon press が体現しようとするものです。

なお、グラフィック・文字レイアウトには、anon press でも作品を掲載しております永田大空さんにご協力いただきました。

以下に展示記録写真を紹介しますので、ぜひお楽しみください。

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