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還暦不行届 第十回 運転交代

先日監督が車をぶつけた。本当に珍しいことで
10年ぶりくらいだろうか。

結婚してから日常的に車に乗るようになり
20年近くたつ。
10年前くらいまではたまに擦ったりしていたけど、
最近は全くそういったことがなかったので助手席に乗っていた私も
不意打ちをくらい驚いてしまった。

ナチュラルに発進していつも通りにハンドル切って
後ろの塀にゴインってぶつけて「え!?」
と2人で顔を見合わせた。
監督自身も全く予想していなかったようだった。

降りていってぶつけたところを確かめると
左のバンパーがザザザっと擦れていた。
転んで膝が擦りむけた時の傷みたいだなと思った。
子供の頃のそんな時の悲しさとか痛みを思い出してしまった。

それからその流れで最初の頃の監督とのドライブを思い出した。
それは毎回命が削られてんじゃないかと思うほど、
緊張感に満ち満ちたものだった。

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3,744字

安野モヨコ&庵野秀明夫婦のディープな日常を綴ったエッセイ漫画「監督不行届」の文章版である『還暦不行届』の、現在連載中のマンガ「後ハッピーマ…

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