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4月13日 一汁三菜の日

「えー、またどんぶりだけ?」

「いいじゃん、美味しいし」

 中学2年生の長男がブーブー文句を言い、それを高校2年生の長女がフォローしてくれる。目の前には3色どんぶり。

「ごめんね、ちょっと今月は忙しくてさ、品数作っている余裕がないのよ」

 言いつつ、私はかき込むようにそのどんぶりを食べる。長男もそんなことは分かっているので、ブーブー言いながらも、丁寧に完食してくれるからありがたい。足らないだろうと思い、スープ代わりにお椀サイズのミニラーメンを常備しているが、週末には必ずそれもなくなっている。今週末も買い足さなくてはならない。横目で見ながら頭の中にメモをつける。

 夕飯を食べたら、出来上がった洗濯を干さなくてはならない。部屋も手早く片づけたいし、そうだった、明日学校に提出する書類があるのだった。

「ごちそうさま!」

 私はそう言って、自分の食器を片づけて書類を書き始めた。食べている横でものを書くのはいかがなものかと思うけれど、仕方ない。

「ごちそうさま!」

 勢い良く箸を置き、長男は席を立つ。

「ごちそうさまー」

 次いで長女が食べ終わる。それぞれが食べ終わった食器を台所に持って行き、彼女がテーブルを拭く。


 夕飯を作るだけ偉い、と思うことにしている。

 世の中を探せば、いやそんなに探さなくても、便利な夕飯デリバリーもあるし、簡単夕飯作りキットもある。お弁当を買うことだって出来るし、総菜でもいい。実際そんな日もある。でも、その中で、1品だけだとしても作るだけ偉い!と思ってやっている。

 毎日くたくたなのだ、許してくれ。

 ただ一方で、自分の母親をイメージするとどうにも私のそれとは違うのだ。母も勤め人だったが、記憶の中では一汁三菜の夕飯がほとんどだった。

「ねぇ、なんであんなにちゃんと作れたの」

 家族が寝た後で母にメッセージを送った。母もまだ起きていたようで、すぐに返信が来る。

『そんなに真剣につくってないよ。1品をばらして何品か作っていただけ。たとえば今日は3色丼だっけ?2色丼にして、のせる予定のほうれん草をお浸しで出す。はい、副菜の完成!』

 なるほど。そんな手があったのね。

『数を出さなきゃと思い詰めなくて良いと思うよ。作っているだけ偉い』

 さすがは母である。私の欲しい言葉がよくわかっていらっしゃる。

 数を出さなきゃと、確かに私は思っているのだ。でもその副菜の為に新たに材料を出して下拵えして、とは考えるだけでも出来そうにない。

『八宝菜も崩せるよ。どんぶりにしないで、メインにする。その中のイカをグリルで焼いて七味マヨネーズつける。チンゲン菜も八宝菜に入れずにレンチンして塩とごま油と少しの塩と砂糖でナムルになる』

 そうか、新たに1品と考えるからしんどくなる。メインのその中から1品出すくらいで考えるといいのか。

『何となくだけど、副菜は「福」菜だと思うとちょっと作りたくなるかも』

 これを口頭で言ったとしたら、きっと母はおちゃめに笑って言うのだろう。

 そんなものだ。

 硬くも重くも考えなくて良い。福を増やすと思って、メインを崩して1つだけ足してみよう。

 副菜は「福菜」で、副々菜は「福福菜」なのである。


 幸せを増やそう。

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【今日の記念日】

4月13日 一汁三菜の日

和食の素材メーカー(フジッコ株式会社・ニコニコのり株式会社・キング醸造株式会社・株式会社はくばく・株式会社ますやみそ・マルトモ株式会社)で構成する「一汁三菜 ぷらす・みらいご飯®」の6社が制定。いろいろな料理を組み合わせて、さまざまな栄養素がバランスよくとれる「一汁三菜」という和食のスタイルをこどもたちにつなげていくのが目的。日付は13が「一汁三菜」の読み方に似ていることから毎月13日に。

記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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