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“相互性の理解を築く努力をしていなかったなって後々気付いたんです。本当にいい瞬間を撮りたいと思ったら、やっぱりその人のことを知って、近寄らないと駄目なんだって”

15.中村健太 / フォトグラファー

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フォトグラファーの中村健太さん。
観る者の口角を上げるような面白い写真を撮る彼は、2016年には伊版『VOGUE』誌が選ぶベストフォト100、「PHOTO VOGUE 」のフォトグラファーベスト30などに選出されている。

「いい瞬間」を引き出す彼が、大切にしていることを聞きました。

■中村健太 (ナカムラ ケンタ)
フォトグラファー。株式会社ロブジェに勤務。
2016年には、伊版『VOGUE 』誌が選ぶベストフォト100、『PHOTO VOGUE』のフォトグラファーベスト30にも選出。中でも、3Dメガネを装着した被写体を撮り下ろした作品「Your story」は国外で高く評価され、英国のカルチャー誌「DAZED&CONFUSED」や「It’s nice that」、バウハウス協会が発行している雑誌「bauhaus now #3」の表紙を飾った。
今後の活躍が一層期待される写真家の一人である。

Instagram: @hanahanamegane17


_今の仕事を始めるのに不安はありましたか?また、それはいつ乗り越えましたか?
大学を出た後、企業に就職しなきゃ…ってことしか思ってなかったんですよ。当時はインターネットもあまり発達していなかったから情報も限られてたし…。だから最初は会社に入ってエンジニアをやってたんですけど、自分の中で何かを表現したい想いはすごいあって、この道はなんか違うなぁ…って悶々としてた中で写真と出会ったんです。

だからエンジニアから写真に切り替わる、新しいことへの不安よりも、表現できる喜びの方がありましたね。


_仕事を始めた際に影響を受けたアドバイスや言葉はありますか?
今いる会社の代表のエースケさんが、「俺にはセンスがない。それでも写真でメシを食っていくって決めたんだ」って言っていて、それを、うわ…かっけぇなぁ…って思ったんです。

それからは、写真が好きだという気持ちと、これでやっていくという意思さえあれば、どうにでもなるかもしれないなって感じるようになって…とりあえずやっていこうと思えるようになりましたね。


_今日までに学ぶのに最も時間がかかったことや教訓を教えてください
僕は結婚式のカメラマンもしているんですけど、駆け出しの時、エースケさんに「お前、友達の写真はめちゃくちゃいいのに、仕事で撮らせてもらうお客さんの写真はそんなに良くないよね。」って言われてたんです。

彼はいい写真を撮ったらすごい褒めてくれるけど、厳しい方だから駄目なときは、めちゃくちゃ怒られる。でも具体的なことは言わずに、「いい」「ダメ」、そのどちらかだけを僕に言うんです。

その違いが何なのかを学ぶのに時間がかかりましたよね。毎回一生懸命にやってるのに、何が違うんだろうって。
結局、それは技術的なことではなくて、やっぱり自分の気持ちだったんです。

いい写真を撮らせていただくことは、関係性が構築できていないと難しい。

友達だと、既に関係性が作られているから相手がどういう人物かもある程度分かっているし、僕のことも理解してくれている。でもお客様とはまずそれがないから。そこの相互性の理解を築く努力をしていなかったなって後々気付いたんです。

本当にいい瞬間を撮りたいと思ったら、やっぱりその人のことを知って、近寄らないと駄目なんだって。

写真って、自分から出すもの、というよりかは、その相手と向き合ったことが形になるものだから、特にそこが大事だということは後々気付かされましたね。


_失敗から成功に結びついたことはありますか?
うーん、具体的な話じゃないんですけど…写真の技術と上手くなり方って螺旋階段のようだよねって、エースケさんとよく話すんです。

「これであってんのかなぁ」「どうなのかなぁ」って思っているけど、進み続けないと上に行けないし、ずっとぐるぐる回っていくしかない。で、気がついたら、「あっこんなところまで来てた…」みたいな。

つまづいて、進んでいないようで、振り返ってみたら高いところに来てたってようなものなんでしょうね。


_発想やクリエイティビティの源泉は?
楽しいかな、面白そうかな、というのをスタートの時点では大事にしています。

僕はその時々の自分の感情とか想いを大事にしていて、その気持ちで撮ったから、後々考えるとクリエイティブなものになるものもあるんじゃないか、と思っていて。

そう思うようになったのは、工業系の大学に行っていたときに、教授が「数式ってどういうふうにできてると思う?」って講義で聞いてきたからなんです。

「それは机上の空論だけじゃなくて、実際の実験結果の数字があったから、そこから近似したり、統計だったりから造られているんだよ」
ってことを言ってて、僕はその言葉にハッとしたんですよ。

何か起こったものが繋がってカタチになる。その考え方ってすごい素敵だなって。

それを何かこう、写真を通して広い世界に置き換えたりできないかな、と思っています。


_仕事をやり続ける原動力は?
楽しいから…(笑)けど、楽しくなくなるときもあるじゃないですか。

多分、僕の根本にあるのは、写真が人生とか、世間、社会を深く知るきっかけになっていて、それを通して人の輪も広がっていく感じがすごく楽しくて、だからこのツールに出会えて良かったな、ラッキーだな、っていうのがあるんですよね。そこだと思います。


_成功と失敗の基準は?
一括りで言っちゃうと、だせぇことをやったら失敗。だせぇことをやらなかったら成功かな。

「ださい」って、いろんなことを要約していると思うんです。「カッコわるい」よりもキツいなって(笑)

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