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雨の日も嫌いじゃないかもしれない。

苦手だった雨の日が苦痛じゃなくなったのはいつからか。

昔は雨が降ると、傘をさしたり服が跳ね返りの泥で汚れたりすることが苦手だった。雨というだけで気がどんより重くなる。灰色の重たい雲からとめどなく降り続けるのを見ると、外に出るのが億劫になる。どちらかと言うと晴れの日が好きだったのに、気がついたら雨の日もそんなに悪くない、と思うように。

相変わらず傘を持ち歩くのは荷物になって好きじゃない。けれど土砂降りの休日を、ガラス張りのカフェの中から眺めるのは悪くない。開放的な天井と、それと同じサイズの窓ガラス。アスファルトの上にいくつもの波紋を作って、緑に萌えるイチョウの木から雫が滴り落ちる。奥にあるビルが白く烟って遠くは見えない。忙しなく左右に動くワイパーの動きを眺めながら、こんな休日もアリか、なんて思いながら、カップを啜る。ただ景色を感じるだけで、とても満たされているのだ。

雨が嫌いじゃなくなったことのひとつに、傘をお気に入りにしたのもあるかもしれない。朝から土砂降りの日は、虹色に光る透明の傘。小雨の日は光を反射するブルーパールの傘。お気に入りの傘を持つだけで、傘をさす日が楽しみになる。お気に入りがあるのにかかわらず、天気予報が外れて傘を持っていない日なんかはコンビニ傘が増えてしまうのだけれど。どうせ荷物になるなら、できるだけさして歩きたい。

もうひとつ、雨が嫌いじゃなくなったきっかけは写真を撮るようになったからかもしれない。カメラを持って出かける時に、1番好みの天気は勿論晴天なのだけれど。花なんかの植物を撮る時は、雨もまた美しくて好きだ。総じて曇りが1番苦手かもしれない。写真を撮る時に1番適しているのは曇り、とは言われるが。晴天の日の、くっきり影を残す木漏れ日が好きだったり、透けた陽の光を葉を通して見上げるのが好きだったりする。雨に艶やかに濡れた花弁も好きだ。

好きな音楽を流しながら窓の外を見ると、さっきより一段と雨足が強くなったようで、高層ビルの上の方まで烟っている。激しく打ち付けられるアスファルトを横目に、思い思いの休日を過ごす人々に混じって、少し冷めたルビー色のハーブティーを口に含んだ。

Anne

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