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逆光のみクジラ

本文

「あれ、クジラじゃない?」
「どこどこ?見えないよ」

私たちは夜明け前、海に来ていた。
砂浜を適当に歩いていた時、友人が突然沖の方向を指さした。


またか。
彼女にはメルヘンなところがある。
私には見えない何かが映っているのだろう。

「実里、ほらほら。クジラがこっちに来てるよ」
「夢…。そんなのいないよ。太陽しか見えないじゃん」
「ほんと、実里はロマンがないなぁ」


黎明の空。
夢にはクジラが見えるというのだが、私には何も見えない。
何の影も見えない。

「ほら、早く!実里も一緒に行こう!」




夢がクジラに乗るように誘っている。
彼女は腰辺りまで水につかっている。
どんどん沖の方へ向かっていく。



「夢!何してんの!戻ってきな!最悪死んじゃうよ!」







「何を言っているの実里。私は死なないよ?」
「え?」


「まぁ、実里は死んじゃうかもね。まだ残ってるんだし」
「……どういうこと?」







「だってこのクジラ…肉体持ってないもん」


そうだ。夢は……


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