帝王切開:博士の普通の愛情
10年近く会っていない女性からメールが来た。彼女はある大きな企業の営業社員として、僕が撮影する仕事のスタジオにあらわれた。その会社の広告撮影の立ち会いで来たのだが、僕らはあまり現場に大勢のクライアントが来るのを好まない。撮影現場は工事現場や厨房のように専門職だけがいるべき場所だと思っているからだ。
スタジオには高圧の電気設備もあれば、不安定で危険な機材もたくさんある。訓練された我々はそれを知っているが、初めてやって来る部外者がうろうろ歩き回るのを見ていると気が気ではない。1