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大増殖天使のキス #毎週ショートショートnote

ある日のことです。
空に大量の天使の梯子が架かり、天使たちが続々と地上に降りてきました。
「お前たち、なんでもいいからひとつだけ好きなものを地上に残しておいで。」そう神様がお申し付けになったのです。

恋心、嬉し涙、いたずら心に嫉妬心。
きらきら光る霜柱、金木犀の甘い香り、水溜まりに映る青い空。
少年期特有の美しい歌声、不思議な音色を奏でる竪琴。
天使たちはさまざまなものを地上に残し、神様に褒めてもらおうと我先に空に帰ってゆきました。

そんな中、何を残すか決められなくて困っている天使がいました。
迷っている間に、考えていたもの全部他の天使にとられてしまったのです。
天使はしばらく考えていましたが、やがてにっこりと微笑みました。
そして大地に跪き、そっと口づけをして空に帰ってゆきました。

天使が口づけた大地には青いちいさな花が咲きました。
やがてその花は地上を覆うほどに増え、今でも春になるたびに大地を青く染め上げているのです。

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