farewell
身体は大人を追いかける
色素の薄い髪は季節に流される
やや掠れた声で歌う少女は目を閉じる
別れは幾度となく訪れるが
同じ別れは二度来ない
濁りきった河に流した花籠は美しかった
時間は流れ続けるなかで
ひとつの時間は止まり
もう二度と目が合うことはなくなった
流れ続ける時間は濁り続け
止まり、そして流れた時間は美しかった
それが悲哀であり
それらは生命と損なわれたもの
だと思った
水かさが増すように悲哀は満ちたが
存外、眠りの手は容易く朝までの洞穴へ連れてゆき
目覚めると河に沿って雲は朝を流れていた
急に腹が鳴り出した
思えば昨日の昼から何も食べていなかった
通りすがった村で見た弔いを
美しいと感じたことは薄情にも思えるが
悼みは餞で
進む者には必要なことに思えた
昨晩の少女は河べりで洗濯をしており
額を拭った手から落ちた水滴が輝いていた
◇
ノマドシリーズ
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