チーズケーキ向こうの行き止まり
青色の橋が水面よりも輝いて見えて
もっと遠くに出かけよう、と誘われている気がした
起き抜けに絶対忘れたくないと思っていたのに
歯磨きをする頃には忘れかけている昨日の夢
それなのに余韻にはずっしりとした質量がある
それを引き摺ったまま身につけるマルジェラ
閉めたドアのシリンダー錠の音を聞いたときに
明確に忘却に置いてしまったことを悟る
躊躇いを振り切ろうと歩き始めると
置いてきた夢は世界中のどこより遠くなった
定刻通りの電車はざわめきを撫でるには短くて
座る気にもならずドアに手を当て光を透かせた
どこまで行ったとしても
辿り着けない
ニューヨークチーズケーキを食べ始めたときに
最初のフォークが皿に当たるみたいに
行き止まりの音が鳴るのを私は待っている
どこまで行ったとしても
辿り着けないのなら
せめて、なかったことにはしたくないと思った
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