見出し画像

まるめがねはまるで まる3

いつもの同じ時間
同じ電車に乗りあわせるいつものひとがいないと
今日はおやすみかな?と思う
それが何日か続くと
体調崩してるのかな?と思い
さらに何日か続くと
お仕事変えたのかな?と思う
まさかぼくのことが嫌だから乗る電車を変えたのかな
と顔しか知らない、知らない人のことで
妄想を掘り下げたところで
やがてほとんど考えなくなる

その点、草木はすごい
毎年、ある時期になると思い出すよりも先に
花を咲かせてみせて
ああ、もうこんな季節か、と思わせたり
ああ、相変わらずきれいだなあ、と思わせたりする
そして、
花が散る頃には何だか物悲しくなったりもする
そこまで感じたところで
やがてほとんど考えなくなる

その点、きみはもっとすごい
そもそも思い出すというより
いつも隣にいるかのように、考えていて
でも時々忙しさのなかでは考えない時間があって
それでもいつも、物事の判断基準は隣にきみがいる
きみが楽しいか、だとか
きみは喜んでくれるか、だとか
こんなことをしたらきみは悲しむだろうか、だとか
そんなことを考えて
ぼくはできるだけ正しく生きよう
と思うことができる

とてもきみに逢いたい

ここまで書いてペンを置いた
そうしてそのまま出すことはなかった
どうしてこのてがみを出さなかったのか
未だにぼくは分からずにいるけれど
伝えたかったことばというより
ぼく自身への確認のことばだったのかもしれない
おかげでぼくの気持ちは未だに変わることも
褪せることもなく、空の青さを見つけると
ぼくはあの頃のことを思い出す

《つづく》


よろしければサポートをお願いします。自費出版(紙の本)の費用に充てたいと思います