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今のあなたにピッタリなMr.Childrenのアルバムは? (心理テスト的なやつ)

 突然ですが、下のフローチャートに回答をしてみてください。

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 この統一感のない質問で何がわかるのか?
 それは・・・・・・









今あなたにおすすめのMr.Childrenのアルバム!!!!!!

 令和に入ってもやはりMr.Childrenはモンスターバンド。最新アルバムはオリコン初登場1位を獲得。
 2020年末にはバンドとしてMステスーパーライブやNHK紅白歌合戦にも出演し、多くの人々が彼らの「今」のパフォーマンスを目にしただろう。
 そんな彼らのパフォーマンスを観て、今さらだけど音源を聴いてみたい、と思った方も多いだろう。(だからこそ最新アルバムをさっさとストリーミング解禁するべきなのだ。)←(追記:2021年2月14日ダウンロード&ストリーミング開始。)
 そんなときにどの曲から聴けばいいの?どのオリジナルアルバムから聴けばいいの?と迷ってしまう人もいるだろう。(ぶっちゃけベストアルバムかそれに相当するプレイリストを聴くのがry)
 なので今回、あなたに一番オススメなMr.Childrenのアルバムを、こちらで作ったいくつかの質問によって「勝手に」導き出したいと思う。
 ※あくまで「勝手に」なので、心理学的な根拠などはゼロであるが悪しからず。(そもそも心理テストではない。)








①を選んだあなたには・・・


5th Album『深海』(1996)

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 ①を選んだあなたには、1996年(執筆時点で25年前)の名盤『深海』を推薦。
 Mr.Childrenを象徴すると言っても過言ではない大ヒットシングル「名もなき詩」も収録したアルバム。

 Mr.Childrenの人気絶頂期に発売しており、当然数字上でもメガヒットを記録しているのだが、(オリコン調べで累計約275万枚の売上。)このアルバムの本質はそういったところにはない。
 このアルバムの1つ目のポイントは、作品全体がある男女の別れを描いたコンセプトアルバム(ある一定の物語に沿った楽曲で構成されたアルバム。)である、ということである。
 そしてもう1つのポイントが、シングルが8作連続ミリオンと、自分たちの想像を遥かに超えて売れすぎていたバンド自身、特に桜井さんの戸惑いや苦悩、怒りなどがサウンドにも歌詞にも色濃く表れている点である。
 つまり、このアルバムは人気絶頂期にリリースされたにもかかわらず、ミスチルの歴史の中でもトップクラスに「暗い」作品なのである。
 
 インストナンバーの「Dive」で暗い海の底に潜ったと思ったらいきなりヘヴィーな「シーラカンス」。
 この時点でMr.Childrenをあまりよく知らない人は
「ミスチルってこんな重い曲歌うの!?」
と驚くかもしれない。
 
 このアルバムは、M-3「手紙」で歌われている男女の別れの理由をその後の曲で解き明かしていく、という構成となっている。
 なので基本的にはこの後の曲も男女について歌われているのだが、そこには爽やかなラブソングを歌う桜井さんの姿はほぼない。
 どちらかというと相手を愛していくことの苦しさや難しさの方が伝わり、
(実際に桜井さんもプライベートでこの頃・・・おっと誰か来たようだ。)
同時にそれを引き起こす要因の一つでもある社会への怒りがかなりダイレクトに描かれている。
 例としてM-4「ありふれたLove Story ~男女問題はいつも面倒だ~」では、

「愛は消えたりしない 愛に勝るもんはない」
なんて流行歌の戦略か?
そんじゃ何信じりゃいい?
「明日へ向かえ」なんていい気なもんだ 

「ありふれたLove Story ~男女問題はいつも面倒だ~」

 と歌われている。
 このようにテンプレートで音楽を売っていく業界、またはそのような商売に乗せられた自分たちへの皮肉にも読み取れる歌詞だが、この「怒り」の部分はこの後の曲でもどんどん強くなっていく。(主に社会へ。)
 ここまで聞くと作品全体が鬱々と重苦しいものだと思われてしまうかもしれないが(実際そうとも言えるかもしれない。)、M-13「花 -Memento-Mori-」、M-14「深海」を聴いた後にはひょっとしたら「シーラカンス」を聴いたときとは違う印象を持つかもしれない。
 是非暗い暗い深海の中をもがき続け、自分だけの感想にたどり着いてもらいたい。

オススメ楽曲:「ゆりかごのある丘から」
 8分52秒もある大作である。長いと感じるかもしれないが、このアルバムでもかなり鍵を握る楽曲なので、流れでフルで聴いていただきたい。(サックスがかっこいい曲でもある。)


②を選んだあなたには・・・


6th Album『BOLERO』(1997)

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 ②を選んだあなたには、大ヒットシングル満載の『BOLERO』を推薦。収録曲12曲中5曲がシングルで構成されているが、

・「Tomorrow never knows」(約276万枚)、
・「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」(約181万枚)
・「【es】 ~Theme of es~」(約175万枚)
・「everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-」(約124万枚)
・「Everything (It's you)」(約121万枚)

と収録されている5曲ともミリオンを達成しているという破格の作品である。

 ジャケットが凛とした少女であったり、「Tomorrow never knows」や「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」などが収録されたりしているため、とてもポップで華やかなアルバムを想像する人もいるかもしれないが、それはとんでもないミスリードである。
 このアルバムも『深海』同様一筋縄ではいかない作品である。
 
 この作品を一言で表すなら「情緒不安定」である。
 そもそもこのアルバムの成り立ちは特殊である。
 このアルバムは、

・『深海』と同時期に制作されて『深海』には未収録となった8曲。
・『深海』以前に制作され『深海』には未収録となったシングル4曲。

という構成となっている。つまり制作された時系列がバラバラなのである。
 このアルバム自体の発売は1997年3月(『深海』の発売の約8か月後)だが、収録シングルの中で最古となる「Tomorrow never knows」は1994年11月発売である。
 これが何を表しているかというと、この期間での桜井さんの心理状態に差がありすぎる、ということである。
 1994年の「Tomorrow never knows」の頃にはまだレコード会社の社長と笑える仮タイトルで盛り上がったり(Wikipediaに書いてあり、2002年放送の「うたばん」で本人が話していました。)、「everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-」では社会に対して力強くメッセージを発し、退屈なヒットチャートにドロップキックをかましていた。
 だが売れてだんだん疲弊していくと、

How do you feel? どうか教えておくれ
この世に生まれた気分はどんなだい?
How do you feel? どうか水に流してくれ
愚かなるこのシンガーのぼやきを
How do you feel?どうか教えておくれ
この地で死にゆく気分はどんなだい?
How… How… How…

「タイムマシーンに乗って」
Brandnew my lover
あがいても無駄だ
麻酔かけられたような Ecstasy
Brandnew my lover
Fuck する豚だ
果てない 愛欲のA.B.C

「Brandnew my lover」

こうなる。もちろん「作詞:桜井和寿」である。
 このようにアルバム曲になると途端に投げやりになったり、「傘の下の君に告ぐ」での直接的な資本主義批判に走ったりと異常性が目立つようになる。
 サウンドもシングル曲がポップな曲調なのに対し、アルバム曲はヘヴィーなギターサウンドがメインとなる。
 比較的元気でヒットもとばしていたシングル曲と病んでいるアルバム曲がほぼほぼ交互に並んでいるため、『深海』以上にテンションが揺さぶられる作品である。
 パブリックイメージとしてのMr.Childrenと狂気性を持つMr.Children。そんな「二面性」を令和の今だからこそ楽しんでみるのもいいかもしれない。おそらく二度とこのようなバランスのアルバムを発表することはないだろうし。

オススメ楽曲:「ALIVE」
 「タイムマシーンに乗って」や「Brandnew my lover」同様、桜井さんの危険な精神状態が歌詞に如実に表れており、打ち込みを主体としたサウンドが余計にダークさを醸し出している。
 だが、サビの歌詞にほんの少しだけ光明が差しているようにも感じられるのだ。どのような歌詞になっているかは是非聴いて確かめてもらいたい。



③を選んだあなたには・・・


10th Album『IT'S A WONDERFUL WORLD』(2002)

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 ③を選んだあなたには、デビュー10周年イヤーに発売されポップに回帰した傑作『IT'S A WONDERFUL WORLD』を推薦。
 『BOLERO』以降、Mr.Childrenは約1年間の活動休止を行い、その後はロックなサウンドを追求した『DISCOVERY』、『Q』という2枚のアルバムを発表。
 さらに2001年にはデビューから9年のキャリアを総括したベストアルバム『Mr.Children 1992-1995』、『Mr.Children 1996-2000』をリリースし、2枚合計で約420万枚を売り上げるなど、名実ともにトップバンドとして君臨し続けた。
 そんななか2002年5月10日というメジャーデビュー10周年記念日に発売されたこの作品は、『深海』以降続いたハードな作風から一転し、ポップで壮大なサウンドが特徴である
 個人的にはこのアルバムが今のMr.Childrenの1つのパブリックイメージを創りあげたのではないかと考えており、これをきっかけにMr.Childrenはよりポップでマスに向けた開放的な楽曲、アルバムを多く発表していく。
 実際、この後にMr.Childrenはいわゆる「2000年代の名曲」を量産していく。
 このアルバムのカギとなるのはライブでもセットで披露されるM-1「overture」とM-2「蘇生」。

 Mr.Childrenのアルバムの中でもトップを争うレベルで壮大なオープニングであり、10年をかけて手に入れたバンドとしてのスケールの大きさが遺憾なく発揮されている。(小林武史の力も大きい。)スタジアムライブでも定番となっており、サビの高揚感はMr.Childrenの楽曲の中でもトップクラスである。「何度でも 何度でも」のパートのシンガロングは、ライブのハイライトとなることもある。
 歌詞ではラスサビ前にも

叶いもしない夢を見るのは
もう止めにすることにしたんだから
今度はこのさえない現実を
夢みたいに塗り替えればいいさ
そう思ってんだ
変えていくんだ
きっと出来るんだ

「蘇生」

という箇所がある。デビューから10年で多くの成功と挫折を経験したからこその、ある種到達点のような歌詞。現実に対しての怒りを吐き出している印象の強かった90年代後半と比較しても、歌詞がとても前向きで「生きる意志」を強く感じさせる。これは「蘇生」単体だけでなく、このアルバムの大きな特徴の一つである。
 この後も、アントニオ猪木っぽさを感じさせる(聴けばわかる。)M-4「one two three」や甘酸っぱさ全開のM-6「youthful days」、2007年に新垣結衣出演の損保ジャパンCMソングとしても話題になったM-13「いつでも微笑みを」など、幅広い楽曲を楽しむことができる。(「Bird Cage」や「LOVEはじめました」など90年代後半のヘヴィーな曲調を発展させた曲も入っている。)

 CDのブックレットは緑を強調しており、メンバーとともに動物も登場する。(中川さんと一緒の動物に注目。)楽曲、アートワークの両方から生命力を感じ取ることができる。前向きな気分になりたい方は是非聴いてもらいたい作品である。

オススメ楽曲:「UFO」
 桜井さんが「冷めかけたスパゲティー」というワードを言いたいがためにできた楽曲。どこで出てくるかはお楽しみに。ちなみにライブ未披露。


④を選んだあなたには・・・


12th Album『I ♥ U』(2005)

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 ④を選んだあなたには、どこか歪なサウンドが特徴の『I ♥ U』を推薦。TVドラマ「オレンジデイズ」の主題歌にして日本レコード大賞も獲得した大ヒットシングル「Sign」も収録されている。

 ジャケットは見てのとおり「グチャッとしたトマト」である。このジャケットのとおり、このアルバムに収録されている楽曲はどこかグチャッとしている。
 アルバムトータルの物語性やコンセプトというよりは、1曲1曲が強靭な柱となっているのが特徴とも言える。また、2000年の『Q』以来久しぶりにロック色が強くなったのも特徴である。
 アルバムの発売から14年後に行われたドームツアー「Mr.Children Dome Tour 2019 "Against All GRAVITY"」のMC中に桜井さんがこの作品について語る場面があった。

「その当時自分は新たにBank Bandというプロジェクトを始めた。そこで日本を代表する凄腕ミュージシャンと一緒に演奏を行ってとても充実した時間を過ごしていた。その一方でどこか違和感も感じていた。Bank Bandはとても綺麗なサッカーをするチームだけど、一方で自分は小学生がワ~ッとボールに集まっちゃう、みんながゴールしたい、そんなサッカーも好きだ。そんなぐちゃぐちゃした思いをMr.Childrenで音楽にしたかった。」

「Mr.Children Dome Tour 2019 "Against All GRAVITY"」にて桜井和寿・MC要約。
 

 音楽としての美しさや綺麗さよりも自分の衝動を優先したい、そういった思いがこのアルバムの完成に繋がっていった。
 この文章を書いている際中に感じたことなのだが、このアルバムの楽曲には「叫び」が多く含まれているようにも思える。
 M-1「Worlds end」もM-2「Monster」もM-5「and I love you」もM-6「靴ひも」もM-8「ランニングハイ」もM-10「Door」もM-11「跳べ」もだ。そうだ、このアルバムは常に叫んでいる。

 (白状すると、このアルバムは何度も聴いたし、大好きな曲ばかりである。だが、このアルバム特有の凄さみたいなものを上手く言い表すことが長年できなかった。終わり方(ラスト2曲)は謎だし。
 でもあらためてこのアルバムを通しで聴きながら文章を書いていると、どこか腑に落ちた。)

 叫びも様々である。「Knock!Knock!」もあるし「もう疲れた誰か助けてよ!」もあるし「跳べ!」もある。「Door」に関しては、ほぼほぼ言っている内容は「そのドアを開けてくれ」だし。歌詞よりも桜井さんの心の底からの叫びに圧倒されるアルバムなのだ、きっと。
 綺麗なMr.Childrenが好きな人にはハマらないかもしれないが、歌詞よりも音を聴きたい人やロックの衝動に飢えた人には持ってこいかもしれない。(2018年にリリースされた『重力と呼吸』が好きな人にはハマるかも。)
 (尚このアルバムの歌詞カードは、歌詞がすべてその曲になぞらえた配置になっている。ストリーミングだけでなく、CDを手に取る楽しみも与えてくれる作品である。)

オススメ楽曲:「跳べ」
 おばあちゃんが悪い奴らをやっつけてくれます。プリン体の存在を知れば選ぶビールを変えます。日本中がみんなみのもんたです。でも合言葉は「跳べ!」です。


⑤を選んだあなたには・・・


13th Album『HOME』(2007)

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 ⑤を選んだあなたには、デビュー15周年イヤーに発売された純粋な歌モノアルバム『HOME』を推薦。
 Mr.Children史上最もテレビに出演していた時期(2006年~2008年頃)にリリースされたアルバムであり、収録曲がテレビで歌われているのを観た、という方もいるかもしれない。タイアップ曲も4曲含まれており、特に「しるし」はTVドラマ「14才の母」の主題歌としても有名だ。

 『HOME』はMr.Children史上屈指の「陽」アルバムである。日常をほんの少し「彩ってくれる」楽曲の集まりである。 一人でいるのなら、自宅で紅茶でも飲みながら聴くのがとても似合う作品である。このアルバムの曲たちがかかるだけで、見慣れた自宅も少しだけ華やかになる。曇っていたとしても勝手に陽がさしてくるだろう。
 トランペットやサックスなどの管楽器が多く使われているのもこのアルバムの大きな特徴である。(14曲中6曲。)心地よい楽器の音色がちょっとしたホームパーティー感を演出してくれる。(まるでパーティーにミスチルのメンバーが演奏に来てくれたような。)
 この作品を聴いて劇的に日常が変化するわけではないと思うが、『HOME』の楽曲は自分が生きている現実に寄り添い、ほんの少しの癒しを与えてくれるものばかりである。
 何か癒されたい、楽にしていたい、と思ったときは『HOME』を聴けばいいと思う。
 ではここで『HOME』の歌詞でも屈指のキラーフレーズを。

僕のした単純作業が この世界を回り回って
まだ出会ったこともない人の笑い声を作ってゆく
そんな些細な生き甲斐が 日常に彩りを加える
モノクロの僕の毎日に 少ないけど 赤 黄色 緑

「彩り」

 高校2年生のときの担任の先生がこの曲の歌詞を日誌に貼っていたことを思い出した。(この先生は他に「ひびき」の歌詞を解説していたこともあった。)


オススメ楽曲:「SUNRISE」
 シンプルに最高。田原さんのギター最高。2019年のAAGツアーの世武さんのキーボードアレンジも最高。朝通勤中に聴きたくなる最高。憂鬱を吹っ飛ばしてくれる最高。思い切り息を吸い込みたくなる最高。


⑥を選んだあなたには・・・


15th Album『SUPERMARKET FANTASY』(2008)

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 ⑥を選んだあなたには、過剰なまでのポップネスと「HANABI」を楽しめる『SUPERMARKET FANTASY』を推薦。個人的にはMr.Childrenの中で一番好きなアルバムである。
 このアルバムの推薦文を今書くとしたら間違いなく「HANABIが入っているアルバム」であろう。それが一番わかりやすい。このアルバムはどんな内容で、などと言わずに問答無用で「HANABIが入っているよ!」と言うのが一番良い。実際ストリーミングのチャートでもMr.Childrenの楽曲では圧倒的No.1だし。

 『HOME』がホームパーティー感だとしたら、『SUPERMARKET FANTASY』はホテルの宴会場や結婚式場などで行われるパーティー感である。
 何を言っているのかよくわからないと思うが、それくらい『SUPERMARKET FANTASY』はゴージャスなアルバムである。
 
このアルバムの中では、いわゆるバンドの音(ギター、ベース、ドラム)は楽曲の中心でなく、鍵盤やストリングス、ホーンなど楽曲を構成する様々な音要素のうちの一つでしかない。しかし、それらの音がすべて合わさったときに起こる化学反応は凄まじいものである。
 Mr.Childrenのメンバーはしばし「楽曲至上主義」を挙げているが、このアルバムもおそらく、桜井さんが作ってきた楽曲を一番輝かせるアレンジは何だろうとメンバーとプロデューサーの小林武史さんで考えた結果、ここまで華やかで壮大なアレンジになったのだろう。
 場合によっては、パッと聴いたときにギターが鳴っているのかわからない楽曲もある。だがそれでいい、と言わんばかりの強度の楽曲ばかりである。
 リード曲のM-3「エソラ」を聴けばこのアルバムがよくわかる。ストリングスもホーンも入っていて、一つ楽器のバランスを間違えれば滅茶苦茶になりそうである。だがイントロからラストまで音のすべてが華やかで、なおかつ歌がしっかりと届く。奇跡のような楽曲である。

 『SUPERMARKET FANTASY』のテーマの一つに「大量消費」がある。 この時期のMr.Childrenはタイアップ曲にも意欲的に取り組み、ドラマ主題歌、映画主題歌、オリンピックのテーマソングなどを発表し、そのほぼすべてで名曲を生み出していた。(そしてそれらの宣伝のため、多くのテレビ番組に出演した。)

 この時期のメンバーは、このようなかたちで楽曲が「消費」されていくことに対して肯定的な態度をとっていた。タイアップによって、大してMr.Childrenが好きではない人にも楽曲が届く。そして結果的に多くの人に楽曲が聴かれる。
 一時期のMr.Childrenは売れたことへの反動によって、「反大衆性」が強い楽曲、アルバムを多く発表していた。それらの楽曲は今でも名曲として語り継がれているが、同時にバンド自身の鬱屈した感情が表に出ている楽曲も多かった。
 だが、『SUPERMARKET FANTASY』の楽曲は清々しいまでの大衆性を帯びている。まるで「売れること」を望まれているかのような、「消費」されることが正義、と言えるほどの。
 そこにはメンバーの、気軽にMr.Childrenの楽曲を聴いてほしい、という意向が含まれていた。

「大量に消費されるからこそ起きる奇跡のようなものを信じて音楽をやっている。」

「WHAT's In?」2008年12月号より

 ミスチル史上最も大衆に向き合い、売れることを前提とした作品『SUPERMARKET FANTASY』。もう一度このようなアルバムを聴きたいと思うのは自分のエゴだろうか。

 オレンジジュースよりひょっとしたらシャンパンの方が似合うかもしれないアルバム。(2012年に出演した「Music Lovers」で桜井さんが今ハマっている飲み物としてシャンパンを挙げていた。)そのくらい豪華で贅沢な作品なので、是非聴いていただきたい。
 「HANABI」も入っているよ!!!

 (あれだけテレビに出て大衆と向き合っていたMr.Childrenだが、2008年大晦日に「GIFT」でNHK紅白歌合戦に初出場した後、約3年3ヶ月の間一切テレビに出演しなかった。2000年代とうって変わって、2010年代にバンドがテレビ出演を行ったのは2012年、2014年、2015年の3ヶ年のみである。)

オススメ楽曲:「GIFT」
 どうやったらこんな歌詞が思いつくのだろう・・・。(TOKIOの国分太一曰く白と黒の間に無限の色は広がらないらしい。2012年放送の「Music Lovers」より。)


⑦を選んだあなたには・・・


18th Album『REFLECTION{Naked}』(2015)

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 ⑦を選んだあなたには、23曲110分にも及ぶ大ボリューム作品『REFLECTION{Naked}』を推薦。

 デビュー20周年を超えた2013年~2014年にMr.Childrenはある大きな決断を下す。
 絶対的プロデューサー小林武史との決別である。
 Mr.Childrenにとって小林武史はなくてはならない存在以上に、「いなければならない存在」であった。
 売れるためのノウハウ、大衆を惹きつけるイントロなど、Mr.Childrenの楽曲が世に浸透するきっかけを作っていたのはひとえに小林武史の尽力によるものだった。
 Mr.Childrenと小林武史は1992年のメジャーデビュー以来20年以上にわたって全楽曲でタッグを組んできた。(少なくとも邦楽でここまで長くプロデュース関係を行ったアーティストを自分は知らない。つんく♂とか?)その関係をいよいよリセットするときが来たのだ。

 小林武史のプロデュースがなくなり、楽曲に大きな変化が起こった。

 大きな特徴は鍵盤中心の楽曲ではなくなったことである。
 2000年代から2010年代前半(『[an imitation] blood orange』まで)の楽曲はそれまで以上に小林武史の鍵盤が中心だった。時にバンドメンバーの音が霞むまでに。
 『SUPERMARKET FANTASY』や2010年の『SENSE』の頃まではギリギリのバランスを保っていたが、 2012年の『[an imitation] blood orange]』ではそのバランスが崩れるほどに鍵盤中心、バラード中心のアルバムとなっていた。
 別にいいのだが、正直この時期自分は「Mr.Childrenのバンドの音を聴きたい。」と思っていた。メンバー4人の音が聴ける作品を聴きたい。
 そのときに小林武史がプロデュースを離れた。自分にとっては地殻変動レベルの出来事であった。
 そのなかで発売された第一弾シングル「足音 ~Be Strong」はTVドラマ「信長協奏曲」の主題歌という大型タイアップを引き受けながら、鍵盤中心ではないバンド4人の音が響く楽曲であった。

 Mr.Children4人によるセルフプロデュースでの長期にわたる楽曲制作が行われ、完成したアルバムはなんと23曲にも及ぶCDの常識を逸脱したものだった。
 (このアルバムがどうリリースされたかは説明するのが面倒くさいので公式サイトかWikipediaでも読んでいただきたい。)

 また、小林武史プロデュースを離れたことで、田原さんのギターがより目立つようになった
 小林武史プロデュース時代は良くも悪くも田原さんのギターは目立たなかった。(怒られるのはわかっている。)
 同時にそれはその時期のMr.Childrenの個性にもなっていた。
 だが、『REFLECTION{Naked}』の1曲目「fantasy」はイントロから田原さんである。(Mr.Children史上トップ5に入るレベルの名イントロだと思う。)
 2曲目の「FIGHT CLUB」のイントロ、ギターソロも田原さんである。
 その後も「I Can Make It」や「WALTZ」など鍵盤ではなくギターが映える楽曲が続く。

 そしてこのアルバムは23曲もあるため、トータルコンセプトがほぼ存在しない。
ただただ良い曲がたくさん入っている。
だが、そのクオリティが異常なのである。
 ポップアンセム(「fantasy」「運命」「幻聴」など。)もバラード(「足音 ~Be Strong」「忘れ得ぬ人」「進化論」「Starting Over」など。)もギターロック(「FIGHT CLUB」「未完」など。)もハードナンバー(「I Can Make It」「REM」「WALTZ」など。)もあるのだが、その1曲1曲のクオリティはK点越えである。

 『REFLECTION{Naked}』は小林武史離脱以降の一つのスタンダードとなっている。110分にも及ぶ作品であるため敬遠されるかもしれないが、1本の映画を観ると思ってこの作品を聴いていただきたい。
 少なくともM-1「fantasy」、M-18「幻聴」、M-22「Starting Over」、M-23「未完」の『REFLECTION四天王』だけは是非聴いていただきたい。(MUSIC VIDEOはないので是非ストリーミングで!!)
 

(ちなみに小林武史はこの後back numberの「ヒロイン」「クリスマスソング」「ハッピーエンド」「瞬き」「HAPPY BIRTHDAY」などをピンポイントでプロデュースし、その威厳を保ち続けるのである。)
  

オススメ楽曲:「Starting Over」
 細田守監督の映画「バケモノの子」の主題歌にもなったが、2010年代のミスチルでも屈指のロックバラード。シングルじゃないのが不思議なくらいのスケール感を持った楽曲。
 原曲はTVドラマ「信長協奏曲」の主題歌として制作されていたがお蔵入りに。(その後「足音 ~Be Strong」が採用。)しかし楽曲自体はお気に入りだったため、再度制作に取り組み完成させたという逸話がある。
 お蔵入りにならなくて本当に良かった・・・。


⑧を選んだあなたには・・・


20th Album『SOUNDTRACKS』(2020)


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 ⑧を選んだあなたには、2021年1月時点で最新作の『SOUNDTRACKS』を推薦。
 メジャーデビュー28年のMr.Childrenが送る最高傑作である。
 詳しいことは過去に散々書いたが、

このアルバムはまごうことなき最高傑作である。
 トータルコンセプト、楽曲クオリティ、4人の音のバランス、全体の長さなどすべての観点においてここまで完璧な作品は他にない。
 この作品はメンバー全員が50代になったばかりのMr.Childrenにしか創れない作品である。(正確には1970年3月生まれの桜井さんは、制作期間の大部分は49歳だったが。)
 直接コンセプトアルバムと銘打たれてはいないが、このアルバムの楽曲は驚くほど「生と死」や「老い」、「終わり」といったテーマが貫かれている。
 2019年のツアーでも、桜井さんは音楽人生の終わりについて話すようになった。これだけ長くバンドを続けてきたのだからある意味当然なのかもしれない。
 そういった日々感じていること、自分の等身大をバンドはそのままアルバムで表現した。
 前作『重力と呼吸』(2018)で年齢に抗い若々しいロックアルバムを制作したからこそ、今作は肩の力が抜け、ベテランとしての落ち着きや風格が前面に出た作品となった。まさに「大人」な作品である。
 豪華なストリングスアレンジがバンドサウンドと共存しており(小林武史プロデュース時代にはなかったバランス。)、とにかく音が良い。
 激しい楽曲はこのアルバムには収録されていないが、若手には表現できない「余裕」が余すことなくパッケージされている。
 それでもって「死」を連想するワードも多いため、『深海』などを彷彿とさせる。だが、このアルバムにはそこまでの悲愴感や焦燥感はない。やがて訪れるそういった瞬間を前向きに待っているという趣である。
 NHK紅白歌合戦でも歌われた「Documentary film」にこのような歌詞がある。

枯れた花びらがテーブルを汚して
あらゆるものに「終わり」があることを
リアルに切り取ってしまうけれど
そこに紛れもない命が宿ってるから
君と見ていた
愛おしい命が

「Documentary film」

 「死」というネガティブな要素をここまで美しく表現できることがあるのか。本当に驚きである。
 10曲45分とMr.Childrenのオリジナルアルバムの中でもかなりコンパクトに仕上がっているが、その分内容の濃さは随一である。最後の「memories」を聴いた後に鳥肌が立つ人もいるのではないだろうか。

オススメ楽曲:「others」 
 Mr.Childrenのラブソングの中でも異端な楽曲。アダルティで官能的。こんなミスチル聴いたことない。28年も活動をしていてまだこんな扉があったのか。サウンドも歌詞も奥行きがありすぎるし、様々な解釈を楽しめる楽曲だと思う。



 全部で8枚のアルバムを紹介した。質問の内容と一応リンクするようにはしたが、まあ自己満なので合っていないと思う人もいるかもしれない。
 ベストアルバムから聴くのもいいかもしれないが、Mr.Childrenの凄さはやはりオリジナルアルバムにあると思う。
 ヒットシングルもアルバムの流れで聴くと聴こえ方も変わるだろうし、新たな側面を知ることもできる。
 今回書いたのはあくまで私見なので、解釈として間違っているものも当然あるだろう。だが、それぞれがそれぞれの楽しみ方で聴けるのが音楽なので、自分の楽しみ方を紹介した。
 Mr.Childrenのアルバムについては色々な人の解釈も聞いてみたい。それくらい聴きごたえのある作品ばかりなのである。
 
 そして最後に、『SOUNDTRACKS』のストリーミング割と本気で解禁してほしい。←(追記:2021年2月14日ダウンロード&ストリーミング開始。本当にありがとうございます。)

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