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第71回NHK紅白歌合戦感想まとめ。

 なんだか長く感じた2020年もいよいよラストへ。コロナにすべてを狂わされた感じもあるこの年だが、年末の風物詩は多少カタチを変えながらも今年も開催。NHK紅白歌合戦である。
 ナンダカンダ今年も視聴したので、印象に残ったアーティストについて(後半出演のアーティストばかりだが)書いていく。長くなりすぎないように。

事前注目ポイント
・大泉洋はちゃんと時間を守れるか。
・「水曜どうでしょう」ネタはあるのか。(多分ない。)
・嵐は何を歌うのか。(「カイト」以外。)
・YOASOBIのAyaseは何を演奏するのか。
・東京事変のパフォーマンス全部。
・ToshIのいない「ENDLESS RAIN」。
・Mr.Childrenはどこでパフォーマンスを行うのか。(12年前出演時はNHK101スタジオ。)
・「うちで踊ろう」の2番とおげんさんの出番。


BABYMETAL「イジメ、ダメ、ゼッタイ」

 日本のアーティストの中でもトップクラスに「海外で活躍しているアーティスト」と言える彼女ら。

 ・2016年ロンドン「Wembley Arena」公演。
 ・2019年イギリス「Glastonbury Festival」出演。
 ・2019年ロサンゼルス「The Forum」公演。
 ・2019年アルバム「METAL GALAXY」がアメリカビルボードチャートで最高13位を記録。(坂本九が持っていた日本人最高記録14位を56年ぶりに更新。)

 など挙げだしたらキリがないほどの輝かしい記録を持つBABYMETAL。目に見える「実績」という意味なら海外に挑戦する日本人アーティストでも群を抜く存在と言えるだろう。
 そんな彼女らもついに紅白初出場。先日のMUSIC STATION SUPER LIVEでは序盤の17時台に出場など、どうも日本のテレビ番組での扱いが軽く見られがちな彼女らだが、この日は後半5組目、事務所(アミューズ)の先輩Perfumeの後に出演。
 「イジメ、ダメ、ゼッタイ」という選曲自体は2018年以降はライブで1回しかやっていないこの曲をなぜ?とも思ったが、紅白ではまず聴くことはできないゴリゴリのメタルサウンドと力強いSU-METALの歌には今回も圧倒された。(二階堂ふみと宮崎美子が曲紹介のときに興奮気味だったのが印象的。)
 こういう違和感もあるのが紅白の醍醐味だよなあ。「Distortion」とかも聴きたかった。


GReeeeN「星影のエール 紅白SP」

 GReeeeNの顔のイメージがなさすぎたので、顔が出てもリアクションに困ったのは正直あった。(もちろんテレビの前で声はあげたけど。)
 「キセキ」は不変の名曲ですね。もちろん世代にもよるが、「ROOKIES」を通ってしまうとこの曲だけで一番熱かったころの佐藤隆太や市原隼人、金髪の城田優やドレッドヘアの佐藤健、28歳で高校生役をやっていた桐谷健太が自然と蘇る。
 あと「エール」の方では森山直太朗の別格感を堪能できました。岩城さんにも来てほしかった・・・。


嵐「嵐×紅白 2020スペシャルメドレー」

 活動休止前ラストのテレビ出演。それだけに自分の中では大トリ確実と踏んでいたが(多くの人もそう予想していたと思われる。)蓋を開ければ後半7組目、全体でも25組目と全12回の出場で最も早い時間帯での出場となった。(今まではメンバーが誰も司会をやらず、ジャニーズカウントダウンライブの出演があった2015年の32組目が最も早かった。)
 だがそれでも国民的グループの休止前最後のステージとあって注目度は抜群。他の民放音楽特番でも歴代のヒット曲をこれでもかと披露しており、紅白の披露曲にも注目が集まった。
 披露した楽曲は「カイト」、「君のうた」、「Happiness」。
 「カイト」は事前に歌声の募集もあったが、そのコーラスが使用されたラスサビの迫力は相当なものだった。5人の言葉も「嵐」という巨大すぎる船に21年間も乗り続けた5人だからこその言葉でとても美しかった。
 「Happiness」はテレビの前で大盛り上がりした。嵐ファンであろうとそうでなかろうと、日本中がテレビの前で盛り上がれる楽曲としてこれほど強い楽曲は他に数えるくらいだろう。
 嵐にとっても多くの計画が崩れてしまった2020年だが、鬱々とした国民を最後の最後まで鼓舞し続けてくれたのはやはり5人だった。
 本当にお疲れさまでした。


LiSA「アニメ「鬼滅の刃」紅白SPメドレー」

 2020年を代表するコンテンツといえば間違いなく「鬼滅の刃」であるだろう。10月に公開された劇場版の興行収入は公開から僅か2ヶ月で「千と千尋の神隠し」を越し歴代1位に。現在も集英社やANIPLEXは続編をどのような展開で発表していくかの戦略会議を行っていることだろう。
 国民的ヒット作には国民的ヒット曲がつきものなのはここ数年でも相変わらずだが、(アナ雪には「Let It Go」、君の名は。には「前前前世」、逃げ恥には「恋」)LiSAは今作の主題歌となった「紅蓮華」、「炎」(レコード大賞受賞)の2曲を今回もパフォーマンス。

 こう言うとファンに怒られるのはわかっているが、すでに他番組でもこの2曲と「鬼滅の刃」の映像コラボによるパフォーマンスは何度も行われていたため、紅白だけのプレミア感というものは薄かった。
 だが、年末の歌番組でのパフォーマンスを数回見てきて、これらの曲にまったく飽きることはなかった。重いギターが響くラウドロック「紅蓮華」、そして名だたるJ-POPクラシックにも通ずる雄大なバラード「炎」も、元々のLiSAの歌の強さ、低音に重きを置いたサウンドの両方の良さが、これらの楽曲からはより直接的に伝わり、早くも「鬼滅の刃」というブームを通り越してJ-POPのスタンダードとして定着していく雰囲気を感じさせた。
 「紅蓮華」も収録した10月リリースのオリジナルアルバム「LEO-NiNE」、そして「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の主題歌「炎」と、勝負となるリリース、タイアップでホームランを打てるLiSA。紅白でのパフォーマンスは特別でも何でもなくもはや「普通」と呼べてしまうくらい、すでにステージを上げているのかもしれない。


Official髭男dism「I LOVE...」

 2020年度のビルボードジャパン年間チャートのトップ10に3曲(Pretender、I LOVE…、宿命)を送り込み、トップ20でも6曲(イエスタデイ、115万キロのフィルム、ノーダウト)がランクインしているという空前絶後のヒット集団。
 末はサザンかミスチルか、とでも言いたくなる紛れもなく2020年のNo. 1アーティストと言えるヒゲダン。今回はドラマ「恋は続くよどこまでも」の主題歌としても大ヒットした「I LOVE…」をパフォーマンス。
 年末の音楽番組への出場は紅白のみ、という彼らだが、その分久しぶりのパフォーマンス披露ということもあり、他のアーティストよりも画面が新鮮に感じた。
 特に主にライブで行われるホーンセクションやパーカッションのサポートを入れた、ロックバンドというよりは「音楽集団ヒゲダン」の側面を前面に押し出すステージングの迫力はお祭り感もありとても映像映えするものだった。
 そのうえでやはり感じるのはボーカル藤原聡の「声」の凄さである。2019年に1回だけフェスでライブを観たが、ライブを観終わっても藤原さんの声が強く耳に残っていたは今でも覚えている。
 この日もこれほど多くの楽器が響き複雑なアンサンブルが進行しながらも、一番強く残ったのは藤原さんの歌だった。真ん中で強く響く「歌」。「歌」に対する信頼が強いからこそ、楽器隊がどんどん意欲的な演奏をできるのだろうし、それに合わせて藤原さんの「歌」もどんどん強くなる。
 2020年代が終わったときは本当に「2020年代はヒゲダンの時代だった。」と言っているかもしれない。


YOASOBI「夜に駆ける」

 ビックリしました。Youtubeの動画の埋め込みをするために動画検索をしていたときに知ってしまったこの曲の真の再生回数に。
 てっきりリンクのMV1億3000万回(12月30日時点)がこの曲の再生回数だと思っていた。しかし現実は違った。実際は、

・MV・・・1億3000万回
・Ayase Official Audio・・・1億回
・THE FIRST TAKE・・・7400万回
(すべて12月30日時点)

 舐めていました。申し訳ないです。動画再生回数3億回超えていました。異次元ですわ。

 そんなわけでビルボードジャパン年間チャート第1位も納得のYOASOBIだが、本人たちは過去のインタビューで紅白への意欲を語りながらも、出場が発表されたのは12月23日のこと。
 本人たちのコメントからも喜びが伝わってくるのだが、通常このように後出しで発表していくアーティストは、出演の交渉や実際の演出の相談をギリギリまで行っていたために遅れた、もしくは特別感を出すため、という場合が多いのだが、YOASOBIのコメントを見る限り特にアーティスト本人との交渉に手間取った様子はなく、「ライブ、テレビ問わずYOASOBIとしての生パフォーマンス初披露」という超貴重なステージとはなるが、それでもここまで引っ張る必要あった?という疑問はある。
 なのであえて邪推してみると、これはアーティスト本人よりもNHKの上層部を説得するのに時間がかかったのではないだろうか。
 同じく紅白歌合戦の時点でCDを出していない瑛人はとっくにテレビでパフォーマンスを披露しており、NHKとしても判断はしやすかっただろうが、YOASOBIに対しては上層部も
 「よくわからん。本当にすごいの?てかテレビ出たことない人たち出して大丈夫なの?」
という感想だったのかもしれない。(朝イチにインタビューで出ていたんだけどね。)
てなわけでここは上層部の方々を説得した紅白制作陣の方々、Good Job!!
(全部妄想です。)

 そんな大注目のパフォーマンス。
 「角川武蔵野ミュージアム」(埼玉県)からの中継は、2018年の米津玄師(徳島の「大塚国際美術館」からの中継)を思い出した。
 YOASOBIとしてのパフォーマンスはこれまで行っていなかったので、Ayaseのパートは何なのか、サポートメンバーはいるのか、生で歌うと音源とのギャップはどのくらいあるのか、など気になることはたくさんあったが、美術館の廊下をカメラが通っただけで、米津玄師のときと同じくこれはすごいことが起こる、という予感がした。
 そして巨大な書斎のような場所にYOASOBIの2人を含む総勢6人のバンドメンバーがスタンバイしていた。Ayaseはキーボードを担当。メンバーは他にギター、ベース、キーボードと比較的オーソドックスなバンド編成。全員の衣装が白で統一されており、ロケーションと相まってどこか非現実的な雰囲気を醸し出していた。
 元々Ayaseはボーカロイドを使用して作曲していたということもあり、リリースされている音源でのikuraのボーカルもどこか機械的で、だからこそ楽曲の無機質な世界観の表現に大きく貢献していたのだと思った。(一方でTHE FIRST TAKEではikuraの生身の歌声が全面的に出ており、この方のボーカル能力の高さを堪能できる。)
 この日はパフォーマンスは、ikuraの生歌の有機性とたくさんのテレビ画面(MVの映像が映っていた。)や図書館セットの無機性が融合し、「夜に駆ける」の独特の世界観を巧みに表現しているように感じた。
 個人的にこの曲のすごいと思うポイントはほとんど具体的なワードを使っていないのに、情景がくっきりと頭に浮かんでくる点にあると思っているのだが、この日のパフォーマンスではそんな「具体的でもあり抽象的でもある」この曲の持ち味を(NHKという資本力を生かしたうえで)最大限に発揮したステージではなかっただろうか。
 これを仮にNHKホールで行おうとしてもステージでできるセットに限界があったと思う。初出場で中継・フル歌唱と何から何まで特別だったわけだが、この曲のパフォーマンスにふさわしいステージが用意されたことは、YOASOBIとNHKにただただ敬意を表したい。(何目線だ。)
 しかし米津玄師のときといい今回といい、日本全国にまだまだステージ映えするミュージアムがありそうな気がする。NHKホールでやるのもいいが、飛び道具としてならこういったステージは毎年でも観てみたい。


東京事変「うるうるうるう~能動的閏〆篇~」

 椎名林檎としては毎年国内最高峰のパフォーマンスやコラボレーションを行っていた椎名林檎だが東京事変としては初出演。
 2011年に椎名林檎として初出演した際には東京事変のメンバーをバックに「カーネーション」、そして東京事変の「女の子は誰でも」を披露しており、2016年の前回の閏年には「青春の瞬き」を何のアナウンスもなく東京事変のメンバーとともに、都庁から、20時16分から20時20分の間に披露という、様々な演出をてんこ盛りにして披露していたため、事変としての初出場感はほぼゼロに等しいのだが、今回のステージもとても楽しみだった。

 今年の曲であり、テレビ初披露、さらにMVなしという、どう交渉したらこんな選曲が通ったのかはたまた驚きだが、「閏年の〆」という意味ではこれ以上の曲はないだろう。
 サブタイトルにもあるように予想通り「能動的三分間」からスタート。とはいったもののSEのような使われ方で僅か30秒で終了。(この曲が3分間やらないのはおそらくライブ、テレビ問わず初めてなので新鮮ではある。)
 個人的には紅白で「作曲・伊澤一葉」という文字が出たのが何か嬉しかった。(米津玄師の「Lemon」でピアノを弾いていたり、細美武士とバンドをやっていたりと超売れっ子キーボーディスト。FGOでお馴染み坂本真綾の「逆光」もこの方作曲です。)

 あらためて椎名林檎(スーパーアーティスト)、亀田誠治(スーパープロデューサー。この日JUJUが披露した「やさしさで溢れるように」もプロデュース。)、伊澤一葉(前述参照)、浮雲(星野源のサポートギター)、刃田綴色(RADWIMPS、フジファブリックの元サポートドラマー)が一緒にバンドやっているって恐ろしいことだな。
 全員とんでもない個性の持ち主なのにバンドとして成り立ってしまう。そのうえで結局ボーカル椎名林檎が一番目立つようにできている。リード曲でなかろうとあっという間に「紅白映え」のパフォーマンスにしてしまう。あと10分くらいは観ていたかった。
 来年はライブ行きたいです。頼む!!!


Mr.Children「Documentary film」

 事前の発表の際にTwitterのトレンド入りはしたが、もっと注目されても良いと思ったアーティストのうちの1組。
 何しろ紅白へは12年ぶりの出演。そして「紅白に出ないのが当たり前」と長年言われている大物アーティストの1組でもある。
 12年前は「NHKの北京オリンピックテーマソング(「GIFT」)を担当」という圧倒的大義名分で出演を行ったMr.Childrenだが、今回は

 ・そもそもテレビ出演自体が5年ぶり。
 ・新アルバムリリースはあるがNHKのタイアップはなし。
 ・4年前に朝ドラ主題歌をやったときも出演しなかった。

という今年の紅白歌合戦に出演する意義のようなものがイマイチ見当たらない状況だが、特別枠でもなく最初の発表アーティストに白組としてしれっと混ざっていた。
 松任谷由実やYOSHIKI、玉置浩二といった大物が次々と特別枠での参加を表明するなか、普通の枠で他のアーティストと同列で参加するMr.Childrenからは「出演はするけど特別扱いはされたくない。」という意思や現役アーティストとしての矜持のようなものすら伝わってくる。

 楽曲は「Documentary film」。2020年12月に発売されたアルバム「SOUNDTRACKS」のリード曲である。
 個人的には「終わりなき旅」や「HANABI」、「innocent world」あたりを白組トリとして披露し、あらためてミスチルの存在を令和に知らしめるのもアリだと思ったが、そこは新譜のプロモーションに徹するのがミスチル。ブレない。
 だがもちろん、当日のパフォーマンスはただ新曲を披露というわけではなかった。

 12年ぶりの紅白出演を知らせる映像では、2017年に行われたスタジアム公演などの映像が使用されており、ファンとしてはコロナ前に満員の会場で行われていた彼らのライブを懐かしく思った。
 総合司会の内村光良がMr.Childrenの登場に興奮しているのが少し楽しく映るなか(大泉洋はこのときオーケストラスタジオにいたが、12月中旬の「Mr.Childrenスペシャル」といい今回といい、ミスチルと大泉洋は絡めないという不文律でもあるのだろうか。)画面は桜井さんのソロショットへ。


「Mr.Childrenです。今年はいつもと違う異常な年だったと思います。でも、何の変化もない、いつも通りのことなんかこの世にはないのではないかと、考えたりもします。だからこそ、今まで当たり前にあった日常を、いつもすぐ近くにあったものを、今生きているということを、切実に慈しみながら次の曲をお届けしたいと思います。」(2020.12.31 「第71回NHK紅白歌合戦」より桜井和寿コメント。)

 桜井さんはこのようにMCを行った。2020年は今まであった当たり前の日常の崩壊を多くの人が感じたと思うが、そんな年の瀬にだからこそ桜井さんもといMr.Childrenは今生きられていることや日常を強く肯定してくれるこの「Documentary film」を歌ったのではないだろうか。
 演出もMステや他の番組同様派手なことは一切行わなかった。(4人のほかにピアノのSUNNYさんやストリングスがいたことは例外。)
 主役は「歌」。自分たちが本当に届けたい歌をただ一生懸命披露する。
 2008年の「GIFT」と違い、紅白だからこそのパフォーマンスとは言えなかったが、Mr.Childrenは彼らが今まで当たり前のように奏でてくれた「歌」にこれまで以上に寄り添い、Simpleに届けてくれた。
 てなわけでミスチルのステージは最高だったので、早急に最新作「SOUNDTRACKS」のストリーミング配信をよろしくお願いします。←(追記:2021年2月14日、ダウンロード&ストリーミング配信開始。本当にありがとうございます。)

石川さゆり「天城越え」

 演出がLiSAよりもよっぽど「炎」感が強かった。 
「鬼滅の刃」の劇伴に携わった椎名豪(「竈門炭治郎のうた」の作曲・編曲担当。)による力強いアレンジと、それでも一切負けない石川さゆりの歌唱力。やっぱり年の瀬には石川さゆりを聴かないとね。
 てなわけで2021年は「津軽海峡・冬景色」の番ですね。本当にこの曲だったら誰か100万円ください。

星野源「うちで踊ろう (大晦日)」

 紅白は6年連続出場。「おげんさんといっしょ」や大河ドラマへの出演など確実に「NHKに貢献している人」として残っていきそうな星野源。
 2020年はシングルBOXの発売以外は配信シングルを2作のみと作品のリリース自体は少なかったものの(Dua Lipaのリミックスを担当というスーパーハイパーなニュースはあった。)、日本国民のコロナ禍のテーマソングとも言える「うちで踊ろう」をスペシャルバージョンでパフォーマンス。
配信されてる音源はせいぜい1、2分くらいだが、(Mステでもそのくらいの尺だった。)今回は「うちで踊ろう (大晦日)」と題して何と2番を初披露。そんな特別なことができるのはやはりNHK Familyの星野源だからこそである。
 
 MUSIC STATIONと同じく長岡亮介(東京事変の浮雲)やハマ・オカモト(裏番組でお父さんがケツバットされていた。)といった豪華ミュージシャンとともに演奏。
 星野源の弾き語りシーンで始まるなどMステとの差別化も図られていたが、こちらでもバンドメンバーの紅白とは思えないくらいリラックスした様子が、ホームパーティーのワンシーンのような親近感をもたらした。
 注目の2番以降だが、よりシリアスな言葉が並んでいた。

常に嘲り合うよな 僕ら
"それが人"でも うんざりださよなら
変わろう一緒に

 この歌詞からはコロナ前や後に関係なく、SNS上で常に見知らぬ人と喧嘩し続ける人々への諦めのようなものが感じられる。
 朝ドラ主題歌でお馴染みの「アイデア」でも2番にはシリアスな歌詞が入ってくるなど、星野源の歌詞は決してすべて「陽」であるわけではないが、「うちで踊ろう」では上記以降も「人間は所詮一人」といった諦めの感情が伝わってくる。

 しかし最後には

ひとり歌おう 悲しみの向こう
全ての歌で 手を繋ごう
生きて抱き合おう いつかそれぞれの愛を
重ねられるように

とある。一人でいても(歌っていても)やはり誰かを欲してしまう。
 星野源自身も3月のファンクラブライブが中止になったり、7月の記念ライブは無観客配信となったり、リスナーの存在を直に感じられる機会が圧倒的に少なくなっていた。(2019年はドームツアーとワールドツアーをそれぞれ成功させていた。)
 コロナであろうとそうでなかろうと人間は基本的に一人である。しかし時々他の誰かを求めてしまう。
 星野源はそのような人間の真理についてを、自身の境遇や経験、思いなどもすべて詰め込んで「歌」にしたのではないだろうか。
 コロナに関する全部が解決し、星野源がまた満杯の観客の前で歌ってくれるときには、自分もその場にいたいし、そのときに笑いながらみんなでこの「うちで踊ろう」を口ずさめたら。
 (そういえば今年は「おげんさん」やらなかったなぁ。)

氷川きよし「限界突破×サバイバー」

 2019年の紅白歌合戦では並みいるポップスターたちを横に話題を掻っ攫っていった感のある氷川きよし。音楽ジャンルもジェンダーもすべて超越し、視聴者の視覚に訴える圧倒的パフォーマンスを行った彼だが、今年も「ドラゴンボール超」のテーマ曲「限界突破×サバイバー」を披露。
 2年連続で同じ楽曲を披露というのは、ともすれば昨年のパフォーマンスと比較されてしまうことが多いが、この日のパフォーマンスはそんな比較すら無意味と言わせるほど、またまたとんでもないものだった。
 「白→紅→ゴールド」。白と紅が性別だとしたら、ゴールドはそれらを超越した何かだろうか。今はまだ理解できない。
 いずれにしても演歌というジャンルで築き上げた自分のポジションを崩すことなく、他ジャンルのファンまでも魅了する氷川きよしはこの先どうなっていくのか。ある意味一番「先を見てみたいアーティスト」かもしれない。

松任谷由実「守ってあげたい」

 レジェンド降臨なわけだが、紅組で出たり(2005年、2011年、2018年)、特別枠で出たり(2019年)と立ち位置がここ数年で変化があったのがなぜなのか気になるが、今年は特別枠で名曲「守ってあげたい」を披露。
 ユーミン世代ではない自分は、曲は知っていてもいつリリースされたのかがわからない、ということが多いが、
(ヒット曲を年代順に並べろ、と言われても多分できないと思う。)
この曲は1981年に17枚目のシングルとしてリリースされ、同年には12枚目のオリジナルアルバム「昨晩お会いしましょう」に収録された。(こういうときストリーミングサービスとWikipediaは便利。)
 大林宣彦監督、薬師丸ひろ子主演の映画「ねらわれた学園」の主題歌であるということは、親世代にバカにされないためにも今覚えておくとして、39年前の名曲が2020年の紅白に何の違和感もなく披露される、というのはよく考えたら不思議なことである。
 この日のパフォーマンスでは子どもたちによる歌声が流れる特別バージョン。観ているこちらも歌いだしから自然と口ずさんでしまう。
 SNSなどを観ているとユーミンは声量が落ちたというツイートをよく目にするが、(66歳であるのでしょうがないという一面も。)それでもこの日のユーミンの歌は、すべてを包み込む優しさや慈愛を持ち合わせているように感じた。やはり日本にはユーミンが必要なのだ。
 「スモール3」とのパフォーマンスについてはFNS歌謡祭でも観たので、正直「だったら守ってあげたいをフルで聴きたい。」という思いもあったが、これもエンターテイメントの一側面なのだろう。
 というわけで来年は「Hello,my friend」、再来年は「リフレインが叫んでる」、その次は「ルージュの伝言」で出続けてください。ユーミンの名曲を家族で聴ける良い機会なので。


玉置浩二「田園」

 衝撃的だった。
 以前水曜日のダウンタウンで「音楽のプロ200人が選ぶ本当に歌が上手いランキング」というものをやっていたが、この1位こそが玉置浩二だった。
 このときは本当かよ、という感想だった。(宇多田ヒカルや久保田利伸、Superflyらを抑えての1位。)
 だが、この日のオーケストラとのパフォーマンスを観て、そんな考えなど木っ端みじんに砕かれた。
 歌が上手い、とかそんな次元で玉置浩二を語ってはいけなかったのだ。とにかく感動する「歌」だった。
 今はあまりないが、自分にとって一時期の玉置浩二は「ワイドショーに出ている人」という印象だったが、この人は紛れもなく「本物のアーティスト」だった。今まで知らなかった、いや知ろうとしなかった自分を恥じたいしぶん殴りたい。
 玉置浩二の歌は2021年以降も多くの人を感動させるのだろう。


MISIA「アイノカタチ」

 11月に胸椎の骨折が報道されたときは紅白への出場自体も危ぶまれていたが、先週のMUSIC STATION ウルトラSUPER LIVEで迫力あるパフォーマンス(その前には東京でライブを行っていた。)を見せ、紅白には大トリとして降臨。
 2012年、2015年には特別枠、2018年、2019年には紅組として出場するなどMISIAに関してもその尺度はよくわからないが、5回目の出場にして大トリの大役。
 楽曲は「アイノカタチ」。
 これまで、2018年は「アイノカタチ 2018」(「アイノカタチ」、「つつみ込むように…」のメドレー。)、2019年は「アイノカタチメドレー」(「アイノカタチ」、「INTO THE LIGHT」、「Everything」のメドレー。)と、ともに「アイノカタチ」を軸としたヒット曲メドレーを魅せてきた。
 今年は「アイノカタチ」とあるので、この曲の単独披露が予想される。「逢いたくていま」や「陽のあたる場所」、2004年放送の朝ドラ「天花」主題歌にしてこの日特別枠でパフォーマンスを行なった玉置浩二作曲の「名前のない空を見上げて」(そうです。MISIAって実は朝ドラアーティストなんです。)などまだまだ紅白で披露されていない名曲はあるが、今回は3年連続となるこの曲を単独で披露するということだろうか。


 と、ここまでは放送前に書いたが、当日響いた「歌」はやはり別格だった。
 楽曲自体は予想通り「アイノカタチ」単曲での披露となったが、紅白でのフルサイズ披露は初。演出は昨年のレインボーフラッグのような視覚的に訴えるパフォーマンスではなく、直接的で強力なメッセージを打ち出すということもなかった。その分、よりシンプルにMISIAの「音楽の力」を届けることに注力したようにも感じられた。
 MISIAの歌だけでなく、世界的トランペット奏者・黒田卓也率いるビッグバンドによるゴージャスな演奏や黄金の衣装など、すべてのクオリティが今回も別次元だった。星野源のときもそうだったが、良い「楽曲」に良い「歌」、良い「演奏」がありさえすればそれはもう「名ステージ」となるのだ。
 コロナの影響か他のアーティストと同じく大人数のダンサーなどを登場させるなどの演出ができなかったのかもしれないが、それでもMISIAの「歌」は燦然と輝くものだった。その歌唱は多幸感が溢れ、曲名のとおり無数の愛に包まれていた。歴代の名曲も紅白歌合戦に必要なものであることは間違いないが、同時に真に心打たれる「歌唱力」も必要であるだろう。
 口パクでも生歌でもパフォーマンスとしてしっかりしていればどちらでも良いというのが自分の持論だが、それでも本当に心に響く「歌」はやはり良いものである。

2020年のNHK紅白歌合戦はコロナ対策と言うこともあり、基本的にステージを3つに分ける、審査員席は別室にするなど、普段と大きく違うものだった。
 ステージを自在に使った密で派手なパフォーマンスというのはやはり見られず、スタジオも次々と移っていったため、長尺の「SONGS」という印象もあった。(白組司会は大泉洋だし。)
 しかし、だからこそ例年のような間に挟まってくるお楽しみ企画がほとんどなく、純粋にそれぞれのアーティストのパフォーマンスを集中して観ることができた。(またステージが違うからこそ転換に余裕が出たことにより、進行の滞りが少なかった印象もあった。)
 なんだかんだ言ってYOASOBIやヒゲダンといった2020年の音楽シーンの中心アーティストから、ユーミンやMr.Childrenといったレジェンドまでが一つの番組で楽しめるということはすごいことだと思うし、アーティストがテレビにおけるパフォーマンスではどの番組よりも気合いを入れてくる番組でもある。
 紅白離れなどと言われて久しいが、SNS上の盛り上がりや実際のパフォーマンスからも、まだまだこの番組は日本に必要なのだと思った。


その他メモ

・二階堂ふみは本当に噛まないし流暢。相当練習したんだろうな。(キャラクター的に綾瀬はるからと違って一回噛んだだけでSNS上で文句言われそう。)
・大泉洋のぶっこみ方は進行の妨げにギリギリならないくらいで止まっているところがすごい。こっちも相当リハーサルしたんだと思う。
・Hey!Say!JUMPはいつになったらその年の曲を歌わせてもらえるんだろう。(「明日へのエール」は良かった。)
・氷川きよし×二階堂ふみの「A Whole New World」はここ数年のカバーでTop 3に入るくらい好き。
・「Dream Fighter」もっと長尺で聴きたかった・・・。
・「やさしさで溢れるように」はどれだけカバーがあっても本家が圧倒的。
・関ジャニ∞の「前向きスクリーム」は2年連続3回目の披露だが、まったくマンネリ感がないのが不思議。
・あいみょんって何で昨年出なかったんだっけ?
・Superflyブラボー。
・Mr.Childrenはさっさと最新アルバムをストリーミング解禁してほしい。←(追記:2021年2月14日、ダウンロード&ストリーミング配信開始。本当にありがとうございます。)
・福山雅治は27年ぶりのNHKホール。(2010年代すべての紅白をパシフィコ横浜から中継という偉業を達成。2019年はNHK・ゼネラル・エグゼクティブ・プレミアム・ディレクターの三津谷寛治氏にもツッコまれていましたね。)
・審査員の存在感・・・。
・Mr.Childrenはさっさと最新アルバムをストリーミング解禁してほしい。←(追記:2021年2月14日、ダウンロード&ストリーミング配信開始。本当にありがとうございます。)



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