見出し画像

格闘技における減量の意味(白帯は減量するより練習しろ!)

 今日も今日とて柔術が楽しい。指の慢性的な痛みで塗るタイプの湿布薬を寝る前に指に塗ってます。なんとなく指の痛みがマシになる気がします。

 今日は、減量の話。試合を考えている白帯、MMA歴の浅い方は参考にどうぞ。減量のテクニックよりも「なぜ減量をなぜするのか」がメインテーマです。


最初に アンディの減量の話(飛ばしても問題なし)

 簡単に自分の話を。MMA試合は20試合くらい。アンダーカードですが一応プロ興行にも出たことあります。柔術は50試合は多分出ています。通常体重は72~76。階級はライトかフェザーで出ていました。MMAはフェザーで出ることが多かったので最大で8キロくらい落としていました。当日計量の水抜きほぼなしでやっていたので前日計量の水抜きアリならもっとできたのかもしれません。今は通常体重73㎏前後で柔術の試合にライトで出ているので減量はなし。1-2キロアンダーです。いままで計量オーバーは一度もありません

1.格闘技における減量とは(なぜするのか)

 最初に減量はどんなものか、メリットデメリットをまとめます。

前提:減量は弱くなる

 シンプルに減量は弱くなります。格闘技において重さは強さです。相撲では「1つの技を覚えるよりも10kg増やせ」などと言われます
 自身の経験でも減量前は弱くなる体感はあります。また、いつもはボコボコにされている人とのスパーでも試合前の軽い時はけっこう勝負できることも多いです。トップ選手やプロ選手の話を聞いても同様です。

 余談ですが、若い子や初心者の方はとにかく減量しがちです。後述しますが経験の浅い人は減量よりも直前までしっかり練習した方がいいです。自分もそうでした。なんとなく初心者の頃って減量がかっこよく見えるんですよね。「減量してるストイックな格闘家な俺イカしてるぜ」的な。

減量のメリット

 弱くなる減量をなぜするのか、それは試合に有利になるからです。

「減量は”絶対的に”弱くなるけど、”相対的に”強くなる」

です。

 あとは、「減量することで気持ちが研ぎ澄まされて試合へのメンタルが作れる」という話もよく聞きます。自身もこれは体感してます。

減量のデメリット

 前提に書いた通り、一番のデメリットは「弱くなること」です。以下まとめました。

・弱くなる
・コンディションが悪くなる
・健康によくない(特に水抜き)
→石井慧選手が「重量級の選手寿命が長いのは減量がないから」、青木真也選手が「健康は強さにつながる。過度な減量は長期的に見てマイナスが多い」といった旨のことを言っていました。
・練習の質が落ちる
 →体の動きも集中力も柔軟性も関節・筋肉の強さも落ちて、ケガのリスクも上がる
・メンタルに良くない。イライラする
 →人間関係も悪化の可能性
・生活に制限
 →食事含む人生の豊かさを失う可能性

デメリットが多い。これらがあっても勝つためにプロは減量をします。

 これらのメリットデメリットを考慮して選手は減量するかを選択します。

2.減量するか否かの判断基準

相対的強さが優位な階級を選ぶ

階級別の強さは個人差が大きい。

 基本的に重い方が強いけど、相対的な強さは変わります。上記の図では、ライト以上で試合をしたら佐藤選手が強く、フェザー以下だと鈴木選手の方が強いといった感じになります。
 これはあくまで一例。個人差が大きいので本人なりに試行錯誤して自分の適性階級を見つける必要があります。
 適性階級の見つけるのは難しい。。。スパーの体感、減量のキツさ、試合結果、先生のアドバイス、自身の体格や年齢、水抜きとリカバリーができる体質かどうか、などを総合的に判断して相対的強さを把握していくしかありません。

フィジカル(体格差・パワー)が不足しているなら減量をする

 何を当たり前のことを。という感じですが、、、 選手にはそれぞれの能力があって、足りない部分を埋めていきます。

黒帯のステータス

 黒帯の選手はテクニックの完成度が高く、試合前の数週間で白・色帯の様に劇的に伸びることは少ないです。しかし、減量によりフィジカル面(体格差)で優位に立てる可能性があります。

白帯のステータス

 白帯の場合。減量をしてフィジカル面で優位に立つことよりも未熟で伸びしろの多いテクニックを伸ばした方が勝てる可能性が上がると思います。

①減量あり。練習の質を落とす代わりに試合でフィジカル面で優位になる

②減量なし。しっかりと練習をして、試合直前まで技術を伸ばす。フィジカル面では優位にならない(不利にもならない)

白帯は②を選んだ方がいいことが多い。黒帯はぶっちゃけ数週間練習してもそこまで技術は伸びないので減量のメリットが大きい
フィジカルといっても色々ある

 また、減量で優位に立てるのはパワーと体格差の部分です。減量しても、フィジカルのスタミナやスピードは優位になりません。むしろマイナスになるかも。その場合は減量よりスタミナやスタミナをあげるトレーニングをしましょう

減量の効果が大きいのは、「立ち技>寝技」「ノーギ>ギあり」 

体重差の影響が大きいのは
「打撃>立ち組技>寝技」
「ノーギ>ギあり」
です。
(※追伸で詳しく考察。)

 寝技中心で道着ありの柔術は体格差をテクニックで埋められる部分が多いです。(無差別級で軽量級が優勝することもある)また、柔術で減量をしない場合、たくさん試合に出ることが可能です。自身は今年6大会出て30試合近くしていますが、減量をしていたらこのペースで試合をするのは不可能でした。MMAはダメージがあるので減量なしでも何試合もするのは不可能です。

 雑な減量の基準はこんな感じです ↓

柔術の場合
・~1kgの減量 ◎
・1~3kgの減量 〇
・4kg~の減量  △
MMAの場合
・~3kgの減量 〇(競技的に△、コンディション的に◎)
・5~7kgの減量 〇(競技的に◎、コンディション的に△)
・8kg~の減量  △

柔術は当日計量で、プロMMAは前日計量なのでそれも考慮しなくてはいけません。

まとめ 減量より先にやることはないか

 暴論のような結論をいうと

「白帯、MMA初心者は減量せず、直前まで練習して技術を伸ばす」
「プロやトップ柔術家は、精一杯練習して技術を最大限伸ばして、その上で1%でも勝つ確率を上げるために減量をする」

 例えば、初心者がスイープできない理由は、体格差があるからではなく崩しとムーブの精度が低いからです。要は技術不足。もし仮に体格差がなければ決まっていたとしても、初心者の段階だったら技術を伸ばした方がその後成長できます。トップ選手のやる減量とは意味が違います。

・自分に足りない要素(負けている部分)は本当に体格差か?
・練習の質を落としてまで減量する価値はあるのか?
・技術の不足や伸びしろはどれだけあるのか?
・自分の体質、体格、その階級での相対的強さ、などを考慮したか?
・格闘技以外の人生の豊かさを犠牲にする価値はあるか?

適性階級を見つけるのは本当に難しい。

 これらの要素を自分なりに考えて減量するかどうかを選択しましょう。

 減量するか悩んでいる人の参考になれば幸いです。

2023/10/19 アンディ

追伸.階級の影響を受けやすいのは打撃?組技?寝技?

 格闘技をやる前は「組技は体格差の影響をモロに受ける。打撃はスピード使ってヒット&アウェイで触れさせないことができる。だから打撃の方が体重差の影響が少なく、組技の方が体重差の影響が大きい」と思っていました。漫画の影響もあります。

 実際のところは、打撃の方が体重差の影響が大きいと思います。それは体感としてもそうですし、他のプロの人に聞いても同様の意見が多いです。また、組技競技に無差別級があるのに打撃ではほとんどないことや、ボクシングが細かい階級を設定していることなどから打撃の方が体重の影響が大きいことがうかがえます。(ざっくりですがボクシングの階級差は2-3キロ、柔術やMMA、柔道は6-8キロです)
 元プロボクサーの方に聞いたら2-3キロ変わるだけでパンチの効きが全く変わるとのこと。。
 脳へのダメージの配慮もあります。組技なら体格差があってボコされてもタップすればいいですが、打撃では脳にダメージが残るため安全性を考慮して細かい階級を設定しているのでしょう。

 組技でも立ち技(レスリング、柔道)の方が、寝技のよりも体格差の影響が大きいです。立ち技の方が同じ条件でアタックする場面が多いですが、寝技はガードでコントロールして有利な状態からアタックできるので体格差をテクニックで埋めることができます。

 そして、道着ありのほうがない場合よりも体格差を埋めやすいです。道着を使ったテクニックで体格差を埋められます。ノーギにもテクニックはありますが、どうしても体格差の影響が大きくなります。

体格差(フィジカル)の影響の大きさ
「打撃>立ち組技>寝技」
「ノーギ>ギあり」

これは、総合をやっている人は体感として感じている人は多いです

 体格差(フィジカル)の影響の大きさ
「打撃系(ボクシングなど)>総合格闘技≧レスリング>柔道>柔術」

多分こんな感じです

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?