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【サステナブルな働き方#10】職住近接で働くプロジェクトがSDGs達成に貢献できること(前編)

目に触れる機会が増えた「SDGs」。目標のひとつであるジェンダー平等については、記憶に新しい女性蔑視発言騒動により関心が高まっていたので考えるきっかけになった方も多いのではないでしょうか。

“変わりゆくライフステージに合わせて柔軟に働き方を変え、職住近接でサステナブルに働く”を実践している&donutsプロジェクト。このような働き方を必要としている方に活動を知っていただくことは、私たち広報チームの任務のひとつです。そこで昨年、外務省主催の「第4回ジャパンSDGsアワード」にチャレンジしました。残念ながら審査通過はかないませんでしたが、エントリーする過程で気付きや学びのある良い機会となりましたので、ここに綴ります。

SDGsとは

SDGs(Sustainable Development Goals)は「エス・ディー・ジーズ」と読みます。2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標で、主に経済・社会・環境の3つの側面があり、17分野のゴールを掲げて統合的に捉えています。

地球上の誰一人取り残さない(Leave No One Behind)ことを誓っており、企業や団体、個人、…それぞれの力を結集させなくては実現が難しい世界共通の目標です。だからこそ、社会問題を自分ごととして捉え、周りを巻き込みながらアクションを起こすことが求められているのだと思います。

プロジェクトの構想と実践が、SDGs達成とどう共鳴しているのか。詳しくお伝えしていきます。

&donutsが着目した社会問題

都市近郊の生活圏での職住近接プロジェクトが始動したのは、2016年8月のこと。都心に向かう満員電車が象徴するように、仕事が都心に集中していました。&donutsプロジェクトを運営するイノベーター・ジャパンでも、都内のIT人材の高い競争率ゆえ、採用が思うようには進まないことが課題となっていました。

そこで、家族で暮らす地として選んだ郊外に住む人材、なかでも都心への通勤は難しく郊外では希望の求人がないためキャリアの断念が起きている“子育て中の女性”に着目しました。彼女たちの積み上げてきた経験やスキル、ポテンシャルの高さは、「人の可能性を最大限に引き出しウェルビーイングな社会を実現する」をミッションとするイノベーター・ジャパンにとってはダイヤモンドの原石とも思える貴重なIT人材でした。

課題解決のためのアプローチ

上述の課題をどのように解決していくか。代表の渡辺がデンマークで出会った「共創のコミュニティ」から得たインスピレーション、また、2017年1月に柏の葉オフィスを設立する前に行ったトライアルの経験を活かしながら取り組んでいきました。

仕事があるところに人を移すのではなく、人がいるところに仕事を移す
利便性と自然豊かな環境を兼ね備えた郊外を家族の生活の地として選択する人たちがいます。魅力的なまちづくりが進められているエリアも多くあります。プロジェクトの構想が始まった2016年、公・民・学の連携で新しいまちづくりを進める柏の葉キャンパスの住民数は右肩上がりでした。その当時、Web関連の仕事や事務職は少なく、その仕事を続けるためには都内へ通勤することが主な選択肢でした。職住近接を優先して他の職種にキャリアチェンジしたり、キャリア断念の選択をする人も少なくありませんでした。

そこで、2017年1月に柏の葉キャンパス駅近にオフィスを開設。東京オフィスで担っていたWebメディアのオペレーション業務を移管しました。短時間勤務者3名でのスタートだったので、まずはひとつのメディアの運用から始め、同時にイベント開催やSNSでの発信を通じて地道に輪を広げ、周辺に住む方々を採用してきました。メンバー増員に合わせ、移管業務も増やしました。

デンマークの共創型コミュニティを取り入れたチーム体制
渡辺がデンマークで出会った“コレクティブハウス”にあった、共創の精神で家事や育児を分担するコミュニティ。これをヒントに、業務をシェアするチーム体制の構築を行いました。

本人が希望する日数・時間数によるシフト制で勤務できるよう、業務の属人化を排して業務をシェア。急な休みにも対応できるようバックアップ体制も整えていきました。複数人で業務をシェアしてもアウトプットの質が下がらないよう、情報をオープンにしたり、マニュアルの共有するなど、メンバー自ら工夫を重ねています。

子どもを連れて来られるオフィス
&donutsには子育て中のメンバーが多く在籍しています。メンバーの子どもたちは、オフィスにいつ来てもOKです。休園や休校、習い事に行くまでの時間やこどもルーム(学童)に入所していても休みたい気分の放課後などに活用されています。

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ビフォア・コロナには、共働き家庭にとって悩みの種となりがちな長期休暇で在宅勤務のトライアルしたこともありました。

継続的なパートナーシップの構築
2019年3月、2拠点目となる湘南オフィス(神奈川県茅ヶ崎市)を開設しました。「生活の地にしごとの和をつなぐ」をコンセプトとし、各拠点で同じ思いを抱いて活動されている地元企業様とのつながりを大切にしてきました。自社開催のイベントにゲストとしてお呼びしたことも。イベント当日は近隣にお住まいの方たちをお招きし、同じような課題や価値観を持っている方たちとの対話の場を作ってきました。

2020年8月からはフルリモート勤務が可能なワークスタイルを導入したことで、採用エリアを全国へ拡大しました。岐阜県、群馬県、北海道、グアム、オーストリアと居住地の多様化が進んでいます。

SDGsのゴール達成に向け、&donutsが貢献していること

「メンバーがイキイキとウェルビーイングに働く、多様な働き方が共存するプラットフォーム」の形成を通し、SDGsのゴールのうち主に3項目で貢献できていると考えています。まだまだ微力ではありますが、紹介させていただきます。

─── 適材適所の配置でチームを構成する

【貢献した目標】No.5:Achieve gender equality and empower all women and girls(ジェンダーの平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う)

「政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する」というSDGsのターゲットがあります。日本では政府が「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする」目標を掲げていましたが、2030年までに先送りされました。

そのような中、&donutsでは女性管理職の数や制度設定にこだわるのではなく、無理のない自然な女性活躍を進め、メンバーが働きやすいと実感できる有意義な制度や仕組みを取り入れたいという思いが根本にあります。子育て中の女性が働きやすければ、他の理由で働き方に制限がある人たちも働けるだろう、とのもくろみもありました。

&donutsでは業務の属人性を排し、バックアップのあるチーム体制をとることで、メンバーの希望する日数や時間で働ける仕組みを築きました。その際、サービスプロジェクトごとにメンバーのバックグラウンドを活かして適材適所に配置することで、個・組織ともにアウトプットを最大化したいと考えています。

また、入社後はプロジェクトの成長や拡大をメンバー一丸となって取り組んでいます。ここに居るのは、自分らしく楽しく働くことへの不自由さを感じた経験のあるメンバーばかり。「過去の自分のように働き方に悩む人に、少しでもヒントとなれば」と&donutsで働くことで解決できた課題や仕事と家庭を両立するコツなどをSNSやブログ、自社開催イベントを通じて発信しています。

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出典:パーソル総合研究所「働く1万人の就業・成長定点調査2020」

上の表を見ると、「働くことを通じた成長は重要」と考えている人が全体でも81.4%。年代別に見ても20代 79.8%、30代 82.3%、40代 79.9%、50代 80.7%、60代 85.0%。男女別では、男性 78.7%、女性 84.8%となっています。

私自身は、この結果を見て働きながら自己成長させたいという意思は、ライフステージの変化に関わらず高いと感じました。だからこそ、ライフステージが変化してもキャリアを分断せずに働き続けられる&donutsに関心を寄せてもらい、仲間が増やすことができたとうれしく感じています。

日本で指導的地位を避ける女性が少なくないのは自信や興味がないということもありますが、出産や子育て、介護、パートナーの転勤など働き方を維持できないことを先読みして諦めることも関与していると思います。&donutsでは、家族の近くで安心してサステナブルに働ける場として個々の理想とするキャリア形成をしていけるよう、Will(やりたいこと、なりたい自分)の共有やキャリアチェンジを可能にしています。

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─── 自らキャリアをデザインする

【貢献した目標】No.8:Promote sustained, inclusive and sustainable economic growth, full and productive employment and decent work for all(包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用を促進する)

運営元であるイノベーター・ジャパンは「人の可能性を最大限に引き出しウェルビーイングな社会を実現する」をミッションとしています。そのため、&donutsではライフステージが変化しても働き方を柔軟に変化させることで、無理なく自分のライフスタイルに合わせて長期的に働くことを支援しています。

また、ワークもライフも人生を構成する大事な要素ととらえ相乗効果を図って生活の質の向上に取り組むワーク・ライフ・インテグレーションを大切な価値観のひとつにしています。職住近接で家族の側で働けることは、子育てや介護中のメンバーの安心感につながります。フルリモートワークが可能となったことで、働く場所の選択肢が増え、働きやすさが向上したとの声もあります。

仕事内容についても、各メンバーはWillを軸に自己成長に意欲的ですし、新しい仕事をオープンチャンネルで募集するなどチャレンジする機会も設けています。

このように、各メンバーは他人と比べるのではなく、自分らしさを大切にしながら自分でキャリアをデザインしています。目標設定や統括責任者による面談、1on1などを通じてのサポートも行っています。

─── 住む場所で差を作らない

【貢献した目標】No.10:Reduce inequality within and among countries(各国内及び各国間の不平等を是正する)

&donutsでは、居住地による賃金差はありませんし、制度も共通です。業務の質や組織の熱量を保つためには、正確な情報を組織で共有することが不可欠です。そのため、個人情報が含まれているもの以外、情報はオープンにして働く場所や働き方による情報の格差が出ないように心がけています。

フルリモート勤務が可能なワークスタイルの導入により、オフィス採用(柏の葉・湘南)から全国採用に拡大しました。書類や捺印申請などもオンラインに移行しているので、日本各地や海外在住のメンバーが入社しても問題なくチームで仕事を進められています。時差など、今後検討が必要なこともありますが、都度対応を考えていきたいと思っています。

前編まとめ

SDGsを世界共通の言語として経営戦略と統合し、企業価値を高めたり、ビジネスチャンスとしている企業が増えています。&donutsでは戦略的にSDGsに対応するビジネスモデルを実装するのはこれからになりますが、「こうだったらいいのに」と理想の働く社会を描いて実現をめざしてきた過程そのものがSDGsの実現と共に歩んでいたという実感があります。

例えば、食品ロス問題では、2030年までに世界全体一人当たりの食料廃棄を半減という目標が掲げられています。これを実現させるには、企業側も生産を減らすという痛みが生まれ、消費者側も現在のような品切れのないサービスが受けられなくなるかもしれません。地球や社会の持続性を高めるためには、今あるものを手放す必要があり、痛みを伴うこともあります。

その点、&donutsは逆の発想です。事情があって「フルタイムでは働けない」、「家族の側で安心働けたら」という悩みがプロジェクトへの参画をもって解決しています。このプロセスこそ、&donutsらしいSDGsへの貢献だと感じています。

次回は&donutsのアプローチを多角的に見ていきたいと思います。それでは、またお会いしましょう♪

後編へ続く…。