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36. さくら詣で。毘沙門天王の総本山 奈良の信貴山朝護孫子寺


私の高校時代の友に、パワースポット好きな子がいます。神社仏閣が好きなので、同行するうちにはや5年くらいーー。

なんといっても、社寺の荘厳な雰囲気は、日頃の穢れを払い、気持ちをあらたかにする。美しい草木を愛で、庭にぽつんと座っていると、ここがいつのどの時代なのか、錯覚してしまいそうなほどに、ぼんやりしてきます。そういうひとときがたまらなく好きなので、この日も御朱印を鞄の中へ入れて、いざ出発しました!

今回は、寅の信仰で知られる、奈良の信貴山(朝護孫子寺)まで桜詣でにいきました。

いまから数えて1400年前(西暦582年)、聖徳太子が物部守屋の討伐の時に、信貴山を訪れて祈願すると、毘沙門天王が出現されて、必勝の秘法を授かったとされています。この日が、寅年寅の日、寅の刻だったことから、寅の信仰がされるようになったとか。

それからまた300年、後醍醐天王の時代(910年)。醍醐天皇がご病気のため、命蓮上人(みょうれんしょうにん)が毘沙門天王に病気平癒の祈願をしたところ、天皇の病気は、癒えたといいます。それで、聖徳太子は天王の姿を彫刻し伽藍を建立し、信ずべく貴ぶべき山として「信貴山」と名付けたという謂われがあるそうです。

さあ、「信貴大橋バス停」から、仁王門をくぐり、信貴山観光センターの方角へ歩きます。



最初のパワースポットが、この開運橋です。

信貴山の山並みと、大きな谷の緑(大門池)が見渡せる、なんとも気持ちいい。バンジージャンプが行われていました。ひょー!真っ逆さま。緑が映る川のすぐそこまで、脚がふれそう。ロープで引き上げられて……! 手を振って笑顔で観客らに応えていました。山、水、花の絶景でした。

いよいよ赤門へ。福を呼ぶ大寅へ挨拶して、かやの木稲荷に参拝。


樹齢1400年のご神木が背後に控えています。かやの木の実は仏果として絞った油は、灯明や修法に用いられるそうです。かやの木と白檀の線香を買いました。

ここから、まっすぐ上がったら成福院の融通殿へ。如意融通尊をお祭りしています。融通がつく、融通がきくというのは、ここからの由来だそう。ひょうたん好きなわたしは、願いごとを書いて自宅における「融通ひょうたん」をまたまた購入しました。


本堂から、僧の読経が山全体に響いています。腹から絞り出すようなうーっと呻きにも似た声音。ものすごい迫力です。鐘をつく高い音。二月堂のお水取りの、だだんと激しく脚をならす音、祈りの声音を思い出すのです。信貴山の寺院にいると、どこからともなく、声がずっと聞こえているのです。

広い境内のあちこちに寅を模したオブジェや、土産がありました。

あれ、そういえば普段なら脚が重いのに、石段も、どんどん駆け上がれてしまうのが不思議でした。汗をかきかき、ふーふー言うはずが、タタタッと上がれてしまうのです。(全く辛いと思わない)なぜ? 気持ちが高揚しているからなのでしょうね。

次は、玉蔵院(ぎょくぞういん)に。
また寅と遭遇。ここもパワースポットだそうです。玉蔵院から本堂を眺めると、奈良市街の眺望が開けており、大和の山々や空が。


融通堂へお参りし、その名に惹かれて「浴油堂」にも立ち寄りました。

小さい御堂ですが、夜明けとともに護摩祈祷が行われているらしく、参拝した時から、ひそかにひきつけられます。

5月と11月には一週間ずつ、秘仏「双身毘沙門天」に油を濯ぐ浴油祈祷が、寅の刻に執り行われるのだそうです。

参拝後、さあ、と次へ急ごうとしたところ「奥に秘仏がありますよ」と、見知らぬ人に声をかけられました。え! と振り返って顔をみようとしたら、「左奥です」と教えてくださり、さっさと歩いていかれました

例のパワースポット好きの友人が、「いってみるわ」と突き進んでいくので、わたしも付いていったのです。ご本尊様の左側へまわり、奥へ、奥へと脚を踏み入れていきます。

なんとも、いえぬ仄暗さ。なんだろう、と思っていると、先に参拝した友人が、神妙な顔を。なになに? わたしも素直に参拝してきました。
後で調べたところですが、秘仏本尊のご分身として獅子に乗られ十二本の腕を持ち、八本の刀を持たれた「刀八毘沙門天像」と「八臂弁財天像」「三面大黒天像」が祀られていたそうです。

「刀八毘沙門天像」は毘沙門天像ともいわれ、源平合戦、南北朝、戦国時代の名だたる武将たちが信仰され、立身出世を遂げられたので、「出世毘沙門天」として、崇められていらっしゃる秘仏だったとか。戦う神さまです。

ありがたい気持ちで、参拝させていただきました。

日本には、ほんと素晴らしい秘仏が、鎮まりおわすのだと思いました。いまも、こう書いているところを視ておられるような錯覚を覚えます。


次は千手院さんに。山内では最古のお寺だそうで、ここも毎日護摩が焚かれ、福徳開運の祈祷がされているのとか。銭亀堂は、金運を呼ぶ神さまだそうで、商売繁盛や金運の招福を祈願される人が絶えず、感謝の言葉を書いた札が貼られていました。

ようやく本堂へ達することができて、ほっと一息です。

いきなり、パッと開けたかのような気持ちになり、眼下に奈良平野が見渡せました。古い御堂。近づくにつれて、僧らの読経の声が大きくなり、それは厳かな雰囲気に包まれていました。


ここまで来たら、本堂真下にある「戒壇めぐり」を(約800年前、当山に納められた如意宝珠に触れたと同じ功徳が得られるようです)しなくては!

階段を下まで降りたところ、暗闇とはこのことをいうのだというほど。一緒の友人の顔が全くみえず。闇が強すぎて、人の気配すら消えてしまうのです。わたしは小心者なので、その先へ進めずここは参拝料を払いながら、先へ行くことはためらわれて、前進することができませんでした。次回は、ぜひ勇気をもって挑戦してみよと思います。

お昼ごはんは、大門池を眺めつつ「松月」さんへ。

なんだろうな。すごい食欲が湧いてきて、キツネうどんをぺろっと平らげたあとで、山菜のいなり寿司も、3つストーと入ってしまった。

それから歩いて、信貴山観光ホテルの喫茶室「ふうちん」へ。ストレートティーと、アイスクリームのパフェをいただきました

新緑がすぐそこまできています。緑とピンクの饗宴。桜にはウグイスが蜜を吸いに、あちらにもこちらにも、飛んでいて、日本の春なのだなぁとしみじみと。安寧の心地を感じることができました。

体が軽いのと、すごい食欲!
ここのところコロナ禍でとじこもりっきりで仕事ばかりしていたのですが、一気に春が訪れたという、いい一日でした。


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