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【寅さんへの誘い】そもそも『男はつらいよ』ってなに



たくさんの方に『男はつらいよ』楽しんでもらうため、寅さんコンシェルジュを行っています。「寅さんへの誘い」では、寅さんってよく聞くけど、どんな映画か知らないという方にいろいろな角度から寅さんをご紹介します。

『男はつらいよ』とは

映画『男はつらいよ』は、松竹株式会社によって1969年から1995年までの26年間に全48作品が公開された大人気シリーズです。一年間に二作、正月とお盆の風物詩として公開されました(一部の時期を除く)。監督は、山田洋次氏が務めています(第3,4作を除く)。「ひとりの俳優が演じた最も長い映画シリーズ」として1983年にギネス世界記録に登録されています。48作目以降も脚本の案はあったようですが、1996年に主演の渥美清さんが亡くなったため、シリーズは終了しました。渥美清さんはこの作品での功績が称えられ国民栄誉賞を受賞しており、国民的映画であると言えます。
シリーズ終了後1997年に『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇』、2019年に50周年を記念して『男はつらいよ おかえり寅さん』が公開されました。『男はつらいよ ハイビスカスの花特別篇』は、主に過去の作品『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』の映像を使用しており、一部のみ新しく撮影されたシーンが使われています。渥美さんの映像をCGで加えた場面もあります。『男はつらいよ おかえり寅さん』は、寅次郎の甥である諏訪満男を主人公として、主に新しく撮影された映像が使われていますが、過去の作品の映像も頻繁に登場します。

実はテレビドラマだった寅さん

映画の第1作目は1969年に公開されましたが、その前年の1968年、フジテレビのドラマシリーズとして『男はつらいよ』は、全26話が放送されていました。原案・脚本は山田洋次氏、監督は小林俊一氏です。ドラマ版の映像は初話と最終話しか残っていないそうです。そして驚くべきことに、最終話で主人公・車寅次郎は沖縄でハブに噛まれて死んでしまいます。その結末に全国の寅さんファンからの抗議が殺到し、映画で寅さんを復活させたのです。ちなみにドラマ版と映画版では、妹役のさくら等キャストが少し変わっています。

第1作『男はつらいよ』あらすじ

では、映画の話に戻ります。
第1作は、主人公・車寅次郎が中学生のとき家出して以来、約20年ぶりに故郷である東京都葛飾区柴又に帰ってくる場面から始まります。寅次郎が家出している間に、両親と兄は亡くなり、唯一の家族である妹・さくらは父の弟の竜造(おいちゃん)とその妻つね(おばちゃん)に育てられ、OLとして働いています。寅次郎とさくらは腹違いの兄妹で、さくらは実の両親の子ですが、寅次郎は父と芸者の間にできた子です。竜造たちは家族で協力しながら寅次郎の実家の団子屋を営んでいました。久しぶりに帰郷した寅次郎を、家族は歓迎しますが、寅次郎は、非常識な振る舞いで家族を困らせます。さくらは独身で、お見合いをしますが、その席で寅次郎は下品な行動を連発。お相手の家族をうんざりさせます。果たして、さくらは結婚できるのでしょうか。また、寅次郎は幼馴染の冬子と再会し、一目惚れ。美人で上品な冬子への恋は実るのでしょうか。

全作に共通するあらすじと細かなちがい

1作目以降、寅次郎は頻繁に柴又に帰郷します。そして映画の展開は毎作品あまり変わりません。

寅次郎が帰郷し、家族とけんかして旅に出る。旅先で美人に恋をして柴又に帰ってくる。そこに想い人が訪ねてきて恋が盛り上がり、決着。また旅にでる。

という流れです。恋をするのが柴又であるパターンや、想い人からの好意を受け取るも寅次郎が身を引いてしまうというパターンなど、少しずつ違った展開も存在します。
大きな流れは同じなので、予定調和で安心して観られるという方も多いのではないでしょうか。
一方、流れは概ね同じですが、マドンナの性格や寅次郎の旅先、家族げんかの原因やゲスト俳優のキャラクターなどは毎作異なります。そのちがいは細かいことかもしれませんが、そのなかには作品の無限の広がりを感じることができます。細かな脚本や演出のこだわりこそ『男はつらいよ』が質の高い映画と言われるひとつの所以ではないでしょうか。

48作品早見表

日付は公開日です。

1 男はつらいよ       1969,8,27
2 続・男はつらいよ     1969,11,15
3 フーテンの寅       1970,1,15
4 新 男はつらいよ     1970,2,27
5 望郷編          1970,8,26
6 純情編          1971,1,15
7 奮闘編          1971,4,28
8 寅次郎恋歌        1971,12,29
9 柴又慕情         1972,8,5
10 寅次郎夢枕        1972,12,29
11 寅次郎忘れな草      1973,8,4
12 私の寅さん        1973,12,26
13 寅次郎恋やつれ      1974,8,3
14 寅次郎子守唄        1974,12,28
15 寅次郎相合い傘      1975,8,2
16 葛飾立志編        1975,12,27
17 寅次郎夕焼け小焼け    1976,7,24
18 寅次郎純情詩集       1976,12,25
19 寅次郎と殿様        1977,8,6
20 寅次郎頑張れ!       1977,12,24
21 寅次郎わが道をゆく     1978,8,5
22 噂の寅次郎        1978,12,27
23 翔んでる寅次郎      1979,8,4
24 寅次郎春の夢       1979,12,28
25 寅次郎ハイビスカスの花  1980,8,2
26 寅次郎かもめ歌      1980,12,27
27 浪花の恋の寅次郎     1981,8,8
28 寅次郎紙風船       1981,12,29
29 寅次郎あじさいの恋    1982,8,7
30 花も嵐も寅次郎      1982,12,28
31 旅と女と寅次郎      1983,8,6
32 口笛を吹く寅次郎     1983,12,28
33 夜霧にむせぶ寅次郎    1984,8,4
34 寅次郎真実一路      1984,12,28
35 寅次郎恋愛塾       1985,8,3
36 柴又より愛をこめて    1985,12,28
37 幸福の青い鳥       1986,12,20
38 知床慕情         1987,8,15
39 寅次郎物語        1987,12,26
40 寅次郎サラダ記念日    1988,12,24
41 寅次郎心の旅路      1989,8,5
42 ぼくの伯父さん      1989,12,27
43 寅次郎の休日      1990,12,22
44 寅次郎の告白       1991,12,21
45 寅次郎の青春       1992,12,26
46 寅次郎の縁談       1993,12,25
47 拝啓車寅次郎様      1994,12,23
48 寅次郎紅の花       1995,12,23 

よく見ると、前半は1年に3本公開されています。いったいどんなスケジュールだったのか気になるところです。「翔んでる寅次郎」「サラダ記念日」など変わったタイトルもあります。

今回は、『男はつらいよ』の概要についてご紹介しました。この記事を読んでくだされば、第1作から順番に、という観方でなくても、どの作品からでも楽しんでいただけるのではないでしょうか。次回以降、とらやのメンバー紹介や、マドンナ紹介を行う予定です。


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