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ふるさと を 想う。 今年の夏は帰れない って決めたから。


こんばんは。noteさん。

嵐のあとの、抜けるような青を見たのに、厚い雲はすぐにやってきました。
夢をみた余韻の中で、だんだん強くなっていく 悲しみの雨が降り続けます。


8月の、夏を、浴びて。

遠くに見えていた山並みが、少しずつ、近づいてきます。
見慣れた、景色が、流れてくると、
私の中に隠れていた、幼い ぬくもりが、
積み重なって、かすれていた記憶、を連れ出します。

数年前なら、必ず、そこにあって、
優しく出迎えてくれた、あの笑顔は、
もう見ることが出来なくなってしまったけれど。

揺れる足元から、なだらかに続く、斜めを踏んで、
湿った風を頬に感じながら、ここに立つと、
あの頃に戻ったような、やわらかさに包まれて、
タイムトラベルの、穏やかな、時間が、はじまります。



すき だけど、一緒に、いられない。
そんな、もどかしさを感じ続けた、日々があって、
青い心で、ちゃんと考えた、から、
あのとき、ここを離れた、のだけれど。

歳をかさねていくにつれて、
過ぎていく、時間も、人も、
おんなじ繰り返し、に見えてきて。

幾重もの、余計な、なにか、を削ぎ落としていくと、
そこには、ただのわたし、だけが残っていて、
これまで気付かずにもらっていた、
ここにしかない、あたたかさを、求めてしまいます。

好きな気持ちは、今でも想うたびに、感じているし、
選ばれた、この場所で、
わたし、という命を得られて、育んでもらえたことは、
本当に、幸せ、だって、素直に、言えます。

出来るのなら、いつでも、ここにいて、
優しい時間と、なだらかに、過ごしたい、
そう、思ったりもします。

いつの間にか、長過ぎる、馳せるだけの、 時が過ぎてしまって、
そうさせるほどの、追いこまれた状況も、
ひとつ、ひとつ、消えていきました。
だから、前よりも、もっと難しくなってしまっているのに、
このまま手を離したくない、という想いは、
何かひとつあるたびに、より強く、なっていきます。


ずっと一緒に、続いていく、方法を、
あれこれと、考えては、みるけれど。

まだ、何者でもない、から、
窮屈さにとらわれてしまう、わたしを見ないふりして、
ここに居られるほどの、強さはないし、
広い世界をもっと感じていたい、そんな自分を、
どうしても、諦められない、のです。

答えを決めることは出来ない、のに、
大切だって思う気持ちは、確かなものになってきて、
どうしようもできない、自分に、
行き先のない、腹立たしさを覚えます。



縁側から、見える、青と緑。
その境界には、繁った木が静かに揺れていて、
その奥に重なった、深い山の、なだらかな、肌に沿うように、
風に運ばれる雲が、ゆっくりと、通り過ぎていきます。
短く刈られた、じゅうたんの上には、
かつて、そこにあった、水の面影があって、
降りてきた、寄り道の、鳥たちは、
彩った花を愛でながら、のびのびと、楽しんでいます。


これが、わたしの、ふるさと。


眺めているだけで、こころが穏やかになるのは、
幼い頃に見ていた、鮮やかな色を重ねた景色が、
生まれ変わる細胞にも、ちゃんと残っている、からなのかもしれません。


当たりまえ、だと思っていたことが、
当たり前、に出来なくなりそうなとき、
そのことの、大切さに、気付きます。

この手が、届かなくなる、前に、
しっかりと、つなぎ止めて置かなければ、
二度と、戻れなくなる、ことも分かっているから。

今できる、すべてをかけて、守りたいって、
今日、この、生きている姿を見て、思いました。



これから先、どんなことがあったとしても、
必ず、わたしを、守ってくれる、
そう信じられる、見えない何かが、
ここ、にはある、んです。

清く澄んだ、水と空気に包まれながら、
しわしわの、からだを休めて、力を少しずつ蓄えたなら、
立ち上がって、また、踏み出せる、って、
そんなふうに思える、のです。

だって、ここは、わたしが、
初めて、歩き始めた、場所、
なのだから。



思い出に続く、アスファルトの、小路で、
立ち話の、知っていた、古い声に、
名前を呼ばれて、微笑みを返しました。

これも、また、ふるさと、です。



追伸。
もっともっと、高いところまで、
そう願いながら、
いつもの、ここから、
消えそうなほどの、白い炎を届けます。



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