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再び自由な渡航ができるその日に向けて。「魅力があるのにもったいない」地域にならないために、いま改めて考えたい地元・亀岡市のブランディング。


昨日参加していた今だからこそできるインバウンド観光対策チーム主催の「これからのローカルブランディング」をテーマにしたイベントを通して、改めて「自分が住むまちを、世界へどう伝えていけるのか?」「どんな入り口があるといいか?」を考えてみたくなったので、一度まとめてみることにしました。

ゲストのお話に頷きながら、同時にすごくもやもやしてしまったので(苦虫を噛み潰したような顔になり思わずカメラをオフにしました。すみません・・)、その正体もわかるといいなと思っていて。昨日、眠い目を擦りながら書いていた部分もあるので、誤字脱字があったらすみません。

(はじめましての方がいらっしゃったら、わたしはこんな人間です。なかなか情報のアップデートができておらずですがよろしくお願いします。昨年、一般社団法人を立ち上げました。)

⚫︎出身・在住者として伝えたい地元・亀岡市の魅力

JR京都駅から快速電車で20分。京都の観光名所・嵐山から美しい渓谷を抜けると、わたしの地元・亀岡市はあります。修学旅行や嵐山観光の一環で、「嵯峨野トロッコ列車」や「保津川下り」「湯の花温泉」あたりを楽しまれたことのある方もいらっしゃるかもしれません。

2020年には、球技専用複合型スタジアム「サンガスタジアム by KYOCERA」がオープンしたり、同年に放送されていたNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公・明智光秀が「敵は本能寺にあり!」と織田信長の討伐を決心した丹波亀山城跡があったりします。

もう少し歴史を遡ると、古くから農村として栄え、平安京造営時には丹波の地から水運を使って物資を運びました。その後も、穀物や野菜などを都へ運び、京(みやこ)文化を持ち帰ったりもしていたようです。文化圏的には、京都・農村・旗本などが混ざっており、まちを巡りながら目にする古い家々にも当時の趣を感じることができます。

神話によると、太古の昔、亀岡市は湖だったそうで、赤土が混ざったこの湖のことを「丹の海(にのうみ)」と呼んだとか。現在の京都市寄りの山を神様が鍬で切り開き、湖の水が抜けてできたのが亀岡盆地というわけです。実際に、嵐山へ向かう保津川の狭窄部には、切り開いた「鍬」に由来する「桑田神社」があり、向かいには、鍬を受けた位置に「請田神社」があります。

すでにたっぷりめの情報量で渋滞気味ですが・・、最後に現在を紹介してこのパートを終えたいと思います。(普段、誰かを案内するときは、相手の興味関心にあわせてお伝えする内容を調整しています。)

亀岡市では、晩秋から春先にかけて「霧」が出現します。霧は昼夜の寒暖差が大きいと発生するのですが、洗濯物が乾かなかったり、せっかくのヘアーセットが台無しだったりで、とても厄介な存在でした(それは今も変わらず)。一方で、おいしい野菜を育てたり、自然環境が保たれているかどうかのバロメーターだったりと、悪いことばかりではありません。現にわたしも、窓から眺める霧はとてもきれいだな〜と思っています。

そんな霧をメタファーに、さまざまなアーティストの知恵や技術を開いていく「かめおか霧の芸術祭」というプロジェクトが、2018年からはじまっています。

かめおか霧の芸術祭では、いわゆる画家や陶芸家などのアーティストだけではなく、生命(いのち)を輝かせる技術を持つ人を「芸術家」と捉え、アートを通じた地域の魅力発見や地域活性化をめざして取り組んでいます。
※取り組みについて、詳しくはHPをご覧ください。

同年には「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」が行われ、2021年1月からはプラスチック製レジ袋の提供禁止条例がスタート。コーディネーターを務めた映像制作でスーパーの方にお話を伺うと、2021年2月時点でマイバッグ使用率も9割近いデータが出ているとおっしゃっていました。

賛否両論のある条例ではありますが、行き過ぎてしまった消費社会を思うと、そこに疑問をもち、身のまわりにある自然環境を大切にしたい方がこのまちには多かったんじゃないかなと個人的には思っています。

ただ、数名から「提供ができなくて実は困っている・・・」という意見も耳にしているので、レジ袋の課題がどこにあるのかは、いま一度みんなで見直してみてもいいかもしれないとも思います。正直、エコじゃないと感じてしまうエコバッグもたくさん見かけるようになったので。

⚫︎もし、わたしが亀岡市でしか体験できないツアーをつくるなら、どんなプランが組めるだろう

地域側としていろいろと伝えたい要素はあるにせよ、ゲストのひとりとして登壇されていた株式会社POPSの田中淳一さんが何度もおっしゃっていた「『伝える』と『伝わる』は違うものである」というお言葉。

ランダムに振り分けられるブレイクアウトセッションでもご一緒させていただくことができ、地域側が発信する情報と、訪れたときのズレや矛盾、あるいはモレをどう解消していけるかな〜とずっと考えていました。

(「伝える」と「伝わる」の違いについては一度、KUJIRAでインターンをさせていただいた時に矢野浩一さんからもお聞きした記憶があり、いまも大切にしています。)

昨年ぐらいからずっと考えているうちのひとつが、「霧の保津川」をテーマにしたツアー。もともと保津川下りの船頭をされていた豊田さんが(現在の代表理事です)、「秋の朝、霧が晴れていく渓谷がとても美しい」と話されていて、勝手に墨絵のような世界を想像しているんですよね。(霧と渓谷は電車からしか見たことがないので、この秋に霧の川下りをチャレンジしてみたいと思っています。)

普段、船頭さんが案内してくださるエンタメ要素たっぷりの保津川下りも楽しいのですが、この時ばかりは保津川と京都のつながりや霧と盆地の関係を知り、2億年前の地層を見て、あとは自然の音を聴きながらゆっくり流れるのもいいなと思っています。英語での案内もできるよう「ON THE TRIP」さんのような、いくつかのポイントでオーディオガイドを利用してもらうのもいいかもしれません。

水量によって前後しますが、トータルで2時間ほど下っていくので、オプションとして地元産のオーガニック野菜をふんだんに使ったお弁当かお粥が食べられるのもひとつのアイデアです。朝食は文化や習慣によって食べたい方とそうではない方がいらっしゃるかもしれませんが。

そして、霧は朝の資源になるので、自ずと宿泊もセットになりますし、観光分野における亀岡市の長年の課題(日帰り旅行)の解決にもつながると思っています。あとは、川を下ってもらう前にもう少しだけ亀岡を楽しんでもらえるとしたら、どんなエッセンスが追加できるかを考えていきたくて。あくまで「霧」と「保津川」を入り口と見立てた時に、そこからわたしたちは何を伝えられるだろう。

例えば・・・
・ラグジュアリーな体験を求める方であれば、湯の花温泉や伝統工芸職人の工房をご案内
・クラシカルなアートに興味のある方であれば、円山応挙ゆかりのお寺を解説付きでご案内
・リトリートを求める方は、写経や座禅、茶道、石門心学などを通して自分と向き合う時間をご提案
・アートに興味のある方であれば、「no-mu cafe」や「KIRI CAFE」「かめおか霧の芸術祭」「みずのき美術館」、アーティストの工房をご案内
・地域文化を掘り下げたい方は、農家民宿、郷土料理、祭、伝統工芸の職人さんの元をご案内
・環境に興味のある方であれば、アップサイクルブランド「HOZUBAG」やオーガニック農家さんの畑、プラごみゼロの施策をご案内

あとは、地域のプロジェクトやまちづくりに興味がある方、ものづくりをされたい方、地域の暮らしを体験されたい方であればオーダーにあわせていかようにもプランが考えられそう。

稜線に沈んでいく夕日もきれいなので、余裕があれば、保津川下りに向けて「かめおか霧のテラス」で風景を一望してもらうのもいいかもしれません。いかようにもと言いつつ、現段階ではほとんどこれが全てですが、私が6年間で出会ってきた地元です。

どうすれば、誇張せずに地域のありのままを伝えられるか、この場所に心地よく滞在してもらえるかを考え、立ち上げ時から関わらせていただいたのが「Harvest Journey Kameoka」というブランド・コミュニティづくりでした。

『Harvest Journey Kameoka』とは、京都・亀岡への滞在を通して、土地や人と出会い、つながりをつくる新しいツーリズムのカタチです。JR京都駅から快速電車で20分。静かな渓谷を抜けて、ゆったりとした時間を過ごしながら、地域の文化やものづくりを知り、採れたてのおいしい食べものを味わう。ここから「あなた」と「まち」を豊かにする旅がはじまります。

郊外的な土地開発が進んでいるエリアもあるのですが、コアメンバーそれぞれが世界各地を行き来するなかで、関西空港に着いてから亀岡にたどり着くまでの道のりを考えた時に、背伸びしすぎずに魅力を伝えられる、滞在した方が楽しんでくださるポイントが「Harvest」という単語で表現できるのではないか?とここに着地しました。田園風景に由来する、野菜やお米の収穫という意味合いももちろんあります。

正直なところ、昨日のイベントではなかなか耳を塞ぎたくなるようなお話もあったのですが(笑)、動きやすい組織につくりかえながら、社団法人として事務局を担えることになったので、WEBサイトの改修や予約システムの構築、日々のSNS発信も徐々に整えていきたいと思います。亀岡市が環境先進都市を目指しているので、パンフレットの制作は控えよう。

もうひとつ、ふたつ考えている亀岡の入り口があるのですが、それはご興味のある方がいらっしゃったらお伝えしたいと思います。

⚫︎再び自由な渡航ができるその日に向けて、現在感じている矛盾をどうすれば解消できるのか

先ほどご紹介した「Harvest Journey Kameoka」をはじめ、大河ドラマにスタジアムオープンと、2020年がターゲットイヤーだったはずの亀岡市。

こんなことを言ったら関係の方に怒られるかもしれないけれど、まち全体がずっと明智光秀を押してきたわけでも、サンガのホームタウンだったわけでもなかったので、いい意味でちゃんと見直す時間ができたんじゃないかと思っていました。(もちろん、大河ドラマはすごくおもしろかったですし、スタジアム内に仮設でつくられた大河ドラマ館もとても良かったです。)

例えば、スポーツ×まちづくりの事例を調べれば、カープのキャンプ場とコラボされた油津商店街の取り組みもありますし、ここまで派手にしなくてもいいかもしれないけれど、サンガスタジアムとまちの関わりはもう少し考えられるかなと思います。

まずは、サポーターの方にまちを歩いてもらえるような工夫も必要ですよね。サッカーファンの方がどうやったらまちの滞在に興味をもってくれるのか。飲食店のサンガ応援メニューの開発はもちろんのこと、商店街の軒先などに紫色の朝顔を植えるのもいいかもしれません。(イベント的に、近所のお子さんと一緒に種を植えると楽しさも増すと思います。)

さて、わたしが思いつく程度のアイデアはおそらく誰でも考えられると思うので、話をもとに戻します。

昨日のイベントのブレイクアウトルームでも、「わが町の歴史上の人物を大河ドラマに!」「〇〇を世界遺産に!」と、地域で声の強い人たちが伝えたいまちの魅力と地元の人が住みながら感じているまちの魅力が異なる点について話題になっていました。

たまたま関西で観光・まちづくりに関わっている人たちが振り分けられたグループだったのですが、みなさんすごく前向きで、決して愚痴をこぼしたいわけじゃないんだけれど、どうすればその認識の違いを解消できるのだろう?にあたまを抱えていて。観光事業者として、首長に直談判しに行った方もいらっしゃいました。

まちの魅力が自然や歴史であるならそれを残すべきなのに、歴史ある建物や民家は救済をせず、駅前にはビジネスホテルを建ててしまう。ビジネスホテルに滞在する方が次に求めるものは、コンビニですよね。そうすると、どこの駅前も同じような風景になっていくわけです。この辺りは、行政や事業者のみなさんともちゃんと考えなければいけないことだと思っていますし、次世代のことを考えると土地の開発よりは、そろそろ価値観を開発する時期に差し掛かっているかもしれません。

観光地紹介パンフレットも旅前に手に入る情報でなければ意味をなさず、それでも成果物としてはわかりやすいため、補助事業等で毎年量産されていく。ほかにも、利用までの導線が整備されていない音声コンテンツ開発やレンタサイクル整備など、ユーザーの立場で「どう伝わるか」「どう使えるか」ではなく、自分たちが「何を伝えたいか」が主導になってしまっていることに対するモヤモヤも、グループ内のみなさんがそれぞれの地で感じているようでした。

この辺りは、ひとりの市民として「世界に誇れる環境先進都市」をうたう亀岡市でも考え直してもらえるといいなと思っています。例えば、駅前のホテルが世界中から来たくなるような、プラスチックフリーの資源循環型ホテルだったらどうでしょうか。そこで働く人たちは常に世界中からゲストを迎えるわけなので、自ずと仕事が誇らしくなってくると思いませんか?そこに、環境をテーマにしたアート作品が飾ってあったらどうでしょうか。このまちはアートを大切にしているというメッセージが伝わるのではないでしょうか。

「誇り」-- すなわちシビックプライドをどう育んでいけるのか、その辺りは教育分野にもまたがる大切なことだと考えています。地域の大人たちの背中を見て、子どもたちが何を感じるか。多様な人たちが行き来する環境で、子どもたちの感性がどう育まれていくのか。


わたしは、イベントのブレイクアウトルームで、「来てほしい人たちに来てもらえるようになるために、まちの発信にも『コンセプト』が必要だ」と話しました。ユーザー側へ伝えたいメッセージを考えると同時に、地元側への理解・浸透が鍵になると思っていますし、情報発信・お土産・体験プログラム・ツアーなど、さまざまなコンテンツはコンセプトに紐づいていることが必須です。

ちなみに、最近オープンした「Entô(エントウ) 」が話題の海士町では、「ないものはない」というキーワードを掲げているそうです。だから、おもしろい人たちが集まる地域になっているのかもしれません。


冒頭で書いたもやもやの根元は、地元の方は来る側の視点でありとあらゆる課題や導線を想像できているか、よそ者は地元が大切にしたいことを汲み取ろうとしているか、そのスタンスにあったのかも。

正直なところ、地域は「よそ者」の視点を借りなければ地元の魅力にすら気づけなくなってしまったのか?がずっと疑問でした。もちろん、わたしも国内外から亀岡にやって来る友人たちのおかげで自信をもてたことは確かですが、自分自身が地元に対する解像度を高めていかないと、ずっとパワーバランスがちぐはぐだと感じていて。求心力をつくるのはプロモーションではなく、その土地に関わる一人ひとりの意志。

あとは「やっぱり、ここはこれがいいよね!」と分かった資源をベースに、稼げることの自信をつけていかないと、持続可能な状態にはなりづらいと思っています。強くしなやかなまちをつくれるとしたら、本当にいましかない。再び大きな流れがきたら抗うことができなくなってしまうから。



思うことはキリがないですが、そろそろわたしの「伝えたい」が強くなってきた気がするのでこの辺りで締めたいと思います。答えも取り留めもない文章を最後まで読んでくださったみなさん、本当にありがとうございました。

大きなことをたくさん書きましたが、いまは小さく発信するためのオンライン体験の開発を進めています。ありがたいことに、京都の企業さんもお力を貸してくれることになり、とてもワクワクしています。ひとりではできなかったことが、こうして少しずつできていく。

それから最近は、亀岡を発信できる場をぼちぼちつくれたらと思っています。どれだけ崇高なビジョンを掲げても、日々の発信をしたとしても、まちの風景が変わるのは、ひとつの「お店」だということを地元の先輩方からたっぷり学ばせてもらったから。このままもやもやしている場合ではないですよね。



最後におまけとして、デザイナーの山中俊治さんが2年前に投稿してくださった宝物のようなツイートをご紹介。普段、逆方向の電車に乗るわたしたちが、「あぁ、帰ってきたな〜」と思う風景です。

例えば、明智光秀を入り口にしてしまうと歴史好きの方にしかリーチしないと思うのですが、この風景を入り口にすると、明智光秀にまで想いを馳せられるという。興味の入り口って、「きれい」とか「おいしい」とか「おもしろい!」とか「心地いい」という発見だと思うんですよね。

ちなみにですが、明智光秀が楚を築いた城下町は、400年前の地図と照らし合わせても歩けるくらいおもしろいです。わずかではあるけれど、お堀の跡や辻子も残っているし、歴史ガイド付きで歩くとまちの見え方が本当に変わってくるんです。伝統的建造物群保存地区ではないので、残念ながら当時の街並みまでは残っていませんが、100年以上つづく酒蔵やお醤油蔵もあります。

いまはなかなか動きづらい時期ですが、わたしでよければご案内もできるので、ぜひぜひ京都府亀岡市に遊びに来てください。

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