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泣いた商談

誰にだって人生でひとつやふたつぐらい、忘れられないできごとがあるだろう。
あの夏の想い出、青春の1ページ、あわてて病院に駆けつけた寒い冬の日、仕事で成果をあげた日…。

平々凡々な毎日でそんなイベントはなかなか起きないのだが、昨日はわたしのキャリアにおいて、いや人生においてといっても過言ではないぐらい、重要なできごとがあった。

しかし、今はそんなふうに思っていても、時が経てば記憶も薄れてしまうかもしれない。
忘れたくない昨日のことを、ここに書き遺しておきたいと思う。

∽∽∽

昨日は1件の商談があった。

そもそもの入口は、その数日前にいただいたごくふつうの問い合わせ。
でも「なんかチャンスの匂い」を嗅ぎとったのは確かだ。

資料づくりも自然と熱が入る。
このままでもおそらく、受注にはつながるだろう。
しかしもうすこしなにか工夫できる気がしてならない。

資料をひと通りつくり終えてもなお迷いは消えなかった。
なにか足りない気がする。でもその「なにか」がわからない。

わたし、こういうときの図々しさには自信がある。
恐れ多くも祝日に師匠を呼び出し、2時間みっちりアドバイスをいただいた。

まるで自分では思い浮かばない内容だったが、まさしくわたしが求めていたスパイスだった。
…ただし、今の自分にとってはチャレンジングな内容でもある。
これぞスパイシー。

もともと数ページだった商談資料は倍のボリュームになった。
あれだけ的確なアドバイスをいただいたはずなのに、いざスライドにするとなると難儀する。
ああでもない、こうでもないと切ったり貼ったりを繰り返し、ようやく完成した頃には外がうっすら明るくなっていた。

別に途中で切り上げて床についてもよかったのだが、どうにも止められなかった。

∽∽∽

商談当日。

商談の前に、ロープレを依頼した。
パートナーにはクライアントになりきってもらって、とくに不安なポイントに絞って予行演習に取り組んだ。

…ボロボロだった。
声は上ずるし、緊張で舞い上がりすぎて、商談の場に似つかわしくないサンシャイン池崎さんのようなテンションになってしまった。

「説明せねば」と焦るあまり、相手の発言にかぶせてしまう。
ヒアリングもぜんぜんできていない。

ただの押し売り池崎だった。

事前に「このあと本番の商談があるので、自信をつけたい。フィードバックはやさしめでお願いします」と伝えておいてよかった。

とってもやさしいフィードバックと、熱い励ましをもらう。

すぐに資料をすこしだけ手直しし、外の空気を吸ってこようと散歩に出た。

∽∽∽

自分の足取りや、周囲の景色、風の匂い、川が流れる音に集中しようとしても、どうしても商談のことが頭をよぎる。

外の空気をたっぷり吸い込むんだと意識して深く呼吸しても、腹から吸えない。
焦ってどんどん呼吸が浅くなる。

「商談で失敗したって、死にゃあせんのだから」と言い聞かせてみても、やっぱりあれだけ師匠や仲間にいろいろ協力してもらったのだから、失敗したら申し訳なさすぎる。

商談45分前に帰宅し、Slackをみると師匠から「腹から声出すために、歌を歌おう!」とメッセージ。

やれることはもうなんだってする。

それでは聴いてください、郷ひろみさんで「2億4千万の瞳」

ルールールールールルルルー、おーくせんまん!おーくせんまん!

ふだんカラオケに行くと「やかましい」といってマイクの音量を下げられるわたしだが、蚊の鳴くような声しか出ない。
それでも3分40秒、歌いきるころには多少、腹を使えるようになった気がした。

∽∽∽

迎えた商談、最低限押さえたかったポイントだけは意識して実践できた。
そして、無事に準備したプランで受注できた。

クライアントからしたら、まさかそんな提案が飛び出てくるとは思っていなかったようだ。

そりゃそうだ。
だって当の本人でも想像の上をいくものたったのだから。
さすが師匠。

有意義な提案をありがとうございます

クライアントからのひと言が最高に嬉しかった。

オフラインに戻ると、一気に脱力してしまった。
とりあえず渇いた口を潤すためによろよろと席を立ち、温かいお茶を淹れる。

お湯が沸く様を眺めながら「ほぉー」っと思わずため息。

と、同時に涙がポロポロこぼれた。
商談の準備を手伝ってくれて、応援してくれていた師匠や仲間にSlackで報告する。

続々と「おめでとう」の反応。
師匠とは10分ちょっとZoomでお話ししたのだけれど、わたしが泣いているもんだからか、師匠も涙ぐんでいた。

その姿を見てまた、ぐっとくる。

書きながらまた泣きそうなのだが
まるで自分のことのように喜んでくれる心の温かさ。
たくさんの時間と、知恵と、労力をわたしに使ってくれたこと。

わたしが受注したなんて、おこがましい。
みんなの力で受注したんだ。

本当にありがとうございます。
この大きな1歩、ぜったいに自分の糧にする。
そして、もっともっと成長して、今度はわたしがみんなの役に立ちたい。


…とても嬉しかったので、お祝いのコメントはぜんぶスクショを撮りました。
落ち込んだとき、初心を忘れそうになったとき、ニヤニヤしたいときに、いつでも振り返れるように。



今日も読んでくれてありがとうございます。
あなたが最近成し遂げたできごとは、なんですか?

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