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筋トレでみつめる「らしさ」

先月から読書熱が高まっていて、まだ冷めない。
今月も、漫画も含めよいペースで本を読めている。

わたしは本を読める自分が好きだ。
「読書って高尚な趣味よねうふふ」と自慢したいわけでなく、本を読める時間と心のゆとりを持てている自分に酔いしれているのだ。
読書はただ本を読んで感動するだけでなく、自分に酔えるところもまた魅力のうちだ。
手元の本をまだ全然読み進めていないというのに「次はなにを読もうかな」と考えることも楽しいし、本屋はディズニーランドより楽しい。

人から薦めてもらった本・貸してもらった本というのも、よいスパイスである。
洋服と同じように、手元の本も似たりよったりになってくるものだから。

∽∽∽

かくしてわたしは遡ること3ヵ月前に仲間から薦めてもらった本を、ようやく読み終えた。

もちろんわたしが筋肉好きだと知っていて教えてくれた一冊。
3月末のある日、フリーランス仲間と昼から飲んでいたときに、同じく読書好きライターから薦めてもらって鼻息荒くその場でAmazonで購入したことを今でも鮮明に覚えている。

筋肉好き×読書好きのわたしとしたことが、こんなおもしろそうな本の存在を知らなかったなんて!

翌日届いた本を手に取り、ふと不安がよぎる。
「もし、あまりおもしろくなかったら、どうしよう」

筋肉を愛するあまり、この一冊への期待値はものすごく高まっている。
刃牙をはじめ最近ではマッシュルなど筋肉をテーマにした漫画はあっても、小説は少ない。

「あなた、この期待に応えてくれるんでしょうね」
そんな期待と不安が入り混じり、なかなかページをめくれずにここまできてしまった。


結論からいおう。
シンプルに最高でした。

∽∽∽

ゴリゴリの筋肉小説。
表紙にあるとおり、主人公は女性。

ボディビルといえば男性のイメージが強いけれども、女性ボディビルをテーマに、ごくふつうのトレーニーがコンテストを目指す過程、葛藤が描かれている。

女性のボディビルは男性とは違うすさまじさがある。
第一に「大丈夫?そこまで絞って生理止まってない?」と、観ていてまず感じる。
なのに、審査基準に「女性らしさ」が含められているなど、少々矛盾も感じる競技である。

ただでさえ人の体(筋肉)は人それぞれであり、ボディコンテストは評価が難しい。
「美しさ」だとか「らしさ」だとか、評価基準も抽象的にならざるをえないことも理解できる。
でも選手にとってはハードな減量という極限状態のなかで答えのない問答を繰り返すことになり、本書はまさにその心の揺れ動きがしっかり描かれている。


今でこそ女性がジムに通うこともごく一般的になりつつあるけれども、ヒョロガリで筋肉がなくて20kgのバーベル(というか、バー)も挙げられないわたしがジムに通っているというと「恥ずかしいからやめたほうがいいって、家でやれよ笑」と冗談交じりでいわれたことも少なくない。

だからジムに通っているのに。
筋肉のない自分を変えたいから、ジムに行くんだよ。

わたしは大会を目指そうなどとは考えていないし、そもそも目指せるラインにすら立っていないけれども、理想の身体も、筋トレをする理由も、人それぞれでいいじゃないか。

すこし前、カーリングの選手がボディコンテストに出場して話題になった。
否定的なコメントも多くみかけた。
…筋トレに励み、大会に出ることで、あんたにこれっぽっちでも迷惑かけたかね?

女性が筋トレをしているというとやっぱりまだいろいろ面倒がついてまわると思うし、そういう「面倒」を主人公がぜんぶ代弁してくれていると感じた。

正直、もっとライトな筋トレ小説かと思っていたから、度肝を抜かれた。
作者の石田夏穂さん、自身もジムに通っていると記事で読んだけれど、よほど調査と取材を重ねたのだろうなと思う。


タイトルにある「スミス」にピンとくる人なら、おそらくピンとこない人よりも楽しめるはずの一冊だ。

この本を教えてくれたライター仲間に感謝するとともに、理想の身体を目指して筋トレもがんばろうと思う。



今日も読んでくれてありがとうございます。
あなたの「理想の自分」はどんな自分ですか?

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