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骨を拾う

身寄りのないおいちゃん達に寄り添うことを生業にしているので、葬儀に携わることは少なくない。この5年の間にも幾つものお別れを経験してきた。

葬儀でいちばん嫌いなのは棺を閉める瞬間と、火葬場の緑のボタンを押す瞬間だ。記憶は永遠だけど、もう生身のおいちゃんの身体に会えなくなるのが辛くて、いつもその場面でつい涙が押さえきれなくなってしまう。

もう相手の身体に触れられないということは、文字通り身を引き裂かれてしまうかのように辛い。だから、私は棺がしまるその直前まで、もう冷たく固くなった遺体をぺたぺたとつい触ってしまう。遺体でもいいから本当はずっと一緒に居てほしかったなと心では思う。

でも、火葬を終えて骨になった故人に邂逅したとき、私はふと解放された気持ちになる。その人の人生の最後の最後まで寄り添いきれた誇りと安堵。もちろん、私が関われたのは彼らの長い人生の最後の数年にすぎないのだけれども、それでも出会うのが間に合ってよかったと思う。

血の繋がりもなにもない私だけど、信頼してくれてありがとう。必要としてくれてありがとう。孫のように可愛がってくれてありがとう。

元気をもらっていたのはいつも私のほうでした。出会ってくれて本当にありがとう、またね。

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