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木崎喜代子の場合 Ⅺ【心療内科の魅力を伝えるために、心療内科の医師・臨床心理士・関係者が、心療内科を舞台に小説を書いてみた。⑪】
#11(9回目) 正太郎にメモを送るようになって、2ヶ月。梅雨も明け、季節は夏になろうしていた。相変わらずメモは喜代子からの一方通行だが、以前ほど焦る気持ちはない。物事は、そう簡単には動かない。この1年半で少し喜代子の腹も据わってきていた。 明後日は病院へ行く日だ。三野原に何を話そうか考えながら、洗濯物を畳む喜代子の指先に、何か固いものが触れた。驚いて確かめると、それは薬の空きシートだった。いつの間にか紛れ込んでいたようだった。 けれど、と思い返す。彼女は飲み忘れな