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お金だけではない価値がある~コミュニティ「生活共同体TSUMUGI」の可能性

「生活共同体TSUMUGI」の第1期メンバーとして加入して、もうすぐ1年。
自分が好きなこと、ハマっていることを聞かれると、TSUMUGIのことを話すようになりました。
TSUMUGIのことを知らない人に対しては、いつもこんな感じで説明しています。

「趣味のコミュニティに参加して農業をやっていて、メンバーと一緒にお米や野菜を育てたりしてます。自分たちで作ったものはとってもおいしいし、自然と触れあうのが良い気分転換になって楽しいです」

今は農業に関心を持つ人も増えてきており、こういう話をするとだいたい興味を持って聞いてもらえます。
でも、これだけではTSUMUGIの本質を十分説明しきれていない気がするのです。

TSUMUGIのコンセプトは自分にも地球にも無理のない「善い暮らし」を探求すること。
耕す~食べる~還すのサイクルで成り立つ循環型の暮らしを実践するため、例えばこんなことをしています。

  1. 耕す
    田んぼや畑を耕し、自分たちで食べ物をつくる。

  2. 食べる
    収穫したお米や野菜をおいしくいただく。
    手間のかかる仕込みをみんなで行い、時代を超えて受け継がれた保存食などを作っておいしくいただく。

  3. 還す
    生ゴミをコンポストで処理し、堆肥化する。

詳しい活動内容は下の記事に載っているので省略しますが、ただ農業をやるだけではなく、食の循環を生み出していくことがポイントです。
食や農業、環境問題に興味がある方にはぜひおすすめしたいコミュニティです。

ですが私は、食そのものとはちょっと違った切り口から、「生活共同体TSUMUGI」の魅力を語りたい。
ちょっと硬めの話になりますが、おつきあいいただけたら嬉しいです。

共有資源=「コモンズ」という概念

コモンズとは?

TSUMUGIが持っているもの、活動の中で生み出されたものは、共有資源=「コモンズ」とされ、メンバー全員でシェアしていきます。

循環型の暮らしを仲間と共に探求することで、誰もが「生活のつくり手」でいられる環境を作りたい。そして、生活者が連帯し、「豊かな食循環」という共有資源(コモンズ)を守り、育んでいきたいと考えています。

https://note.com/tsumugi_commons/n/nbf18b50861af#6a383bf3-6923-4952-9051-d1b621be75b4

具体例として、私たちは田んぼを全員でシェアし、そこでの収穫物をみんなでシェアしています。
つまり田んぼや収穫物は「コモンズ」です。

豊作の年は収穫物をたくさんもらえますが、不作だと全然もらえません。
もしかしたら災害で田んぼがまるごと流されて、収量がゼロになるかもしれない。そのようなリスクも含めて、全員でシェアしています。

コスパが良くない、不合理な仕組み?

では実際、どれだけの収穫物をシェアできたのか。
私が2021年度に受け取った収穫物を挙げてみました。

お米:約6kg
小瓶に入った保存食:7~8種類ほど
野菜:約5kg
※じゃがいも小7~8個、ズッキーニ特大1本、人参7~8本、かぶ3~4個、日野菜かぶ特大約10本、紅芯大根3~4個
(生鮮品の配送は行っていないため、手渡しで受け取れるかどうかにより個人差があります)

TSUMUGIのメンバーは、毎月共益費(≒会費)を支払っています。
1期では、基本的に毎月1万円を支払っています(2022年4月からは5千円)。
身も蓋もない話をしてしまうと、2021年度に受け取った収穫物を普通に買ったなら、1ヶ月分の共益費よりも安く済むと思います。
お金を払った分だけのサービスを期待している人にとっては、TSUMUGIのシステムは明らかに不合理といえるでしょう。

また、農作業に参加した回数に関係なく、メンバーであればその年の収量に応じた一定量の収穫物をもらうことができます。
つまり農作業に一度も参加していなくても、収穫物は手に入ります。
働いた分だけの見返りを期待している人にとってもまた、TSUMUGIのシステムは明らかに不合理といえるでしょう。

TSUMUGIが大切にしている価値

TSUMUGIが食の生産活動を通して行っているのは、有機野菜のお届けサービスでも、農業体験サービスでもありません。
払ったお金に見合うだけのモノ(収穫物)やコト(農業体験)といった、お金で測れる価値が提供できているかどうかを基準に成果を測っているわけではないのです。

では、食の生産活動からどのような価値を生み出しているのか?

まず、耕作放棄地をコミュニティで管理し、田んぼという資源を守ることや、持続可能な方法でお米を作り、地域の自然と共存した農業を行うこと自体が価値だと考えます。
自分たちで汗水たらして田畑を耕し、収穫したものを食べることで、一人ひとりが食や地球環境について考える機会を持てることも価値といえます。

農作業のポイントをシェアしたり、収穫物をおいしく食べるためにレシピをシェアしたりすると、コミュニティとして知識が増えていきます。これも新たに生まれる価値です。
さらに、その営みの中でコミュニティ内外にできる人とのつながりも、新たに生まれた価値といえます。

こうした価値は全てコミュニティの共有資源=「コモンズ」です。

こうして文字にしてみると、「確かに価値は生み出せているかもしれないけど、大げさに言いすぎでは」と感じるかもしれません。
経済的な価値(=お金)が増えているわけでもありません。
でも、お金では決して測ることのできない価値が増えていくことによって、私たちの暮らしは確実に豊かになっていきます。

私は、TSUMUGIがお金では測れない価値を大切にし、それをはっきりと掲げて実行しているところに、大きな魅力を感じています。

これからの社会の、新たな仕組みを作る実験

私個人の話 - 資本主義社会への疑問

私がお金では測れない価値に魅力を感じるきっかけは、大学の受験勉強をしていた頃にぼんやり抱いた、資本主義社会への疑問でした。

「自分や会社の利益を追求して、お金を稼ぐことがよいことなの?」
「ずっと経済成長し、GDPを増やし続けることには限界があるのでは?」

ちょうどリーマンショックが起こった時期でした。
それまで親に言われるがまま法学部を目指していた私は、志望学部を経済学部に切り替えました(同じ学校でも経済学部の方が偏差値が低く入りやすいから、という打算もあったけれど)。

結局、大学では受験生時代に抱いた疑問を掘り下げることもなく、普通の大学生として楽しく4年間を終えています。
最初の就職では営利を追求しなくていい公務員の道を選びましたが、頭の片隅に資本主義に対する疑問は残り続けました。

「幸福度が高い国と日本では何が違うんだろう?」
「長時間労働をしてお金を稼ぐより、プライベートを大切にする生き方の方が幸せなのでは?」
「収入が増えなくても、支出を減らして満足できる暮らしができれば幸せになれるのでは?」
「家事、育児、介護など、何もかもをお金で解決しようとすると、いくらお金があっても足りないのでは?」

少しずつ時代が変わり、新たな価値観や選択肢は増えていきましたが、湧いてくる疑問をすっきり解決するような答えはまだ見つかっていません。
でも、TSUMUGIの活動に参加する中で、これまでの疑問を解決できるヒントがつかめそうな感覚はあります。

TSUMUGIが持つ可能性

お金では測れない価値を大切にし、それをはっきりと掲げて実行しているTSUMUGI。
とはいえ、現代社会で生きていく以上、完全にお金や資本主義の枠組みから離れることは至難の業。
コミュニティの活動を維持していくためには、コミュニティ内外からお金を集めることは必要です。

それに、TSUMUGI自体まだ発展途上のコミュニティです。
これから長く続いていくかもしれないし、途中で失敗に終わって解散してしまうかもしれない。
それでも、TSUMUGIには最近言われている「ポスト資本主義」の一つのカタチを作れる可能性を秘めていると思うのです。
(これはコミュニティの立ち上げからの中心メンバーが話していたことなのですが、私も同じ気持ちです)

お金では測れない価値を無視することなく認め、大切にしていくこと。
コミュニティの中で、価値を増やして循環させていくこと。
そのことにより、より豊かで幸せな「地球にも自分にも善い暮らし」を実現すること。

それが具体的にどのような形になるのかはまだ分かりません。
しかし、これからの時代のモデルとなりうる仕組みを実践し、作り上げていくという、面白い取り組みができることは間違いないと思っています。
この取り組みはコミュニティの裏テーマだと勝手に思っています(笑)

おわりに

TSUMUGIでは、2022年4月から一緒に活動する、新メンバーの募集が始まっています。
循環型の暮らしを実践しながら、小さくも壮大な社会実験を一緒にやってみませんか?

詳しい活動内容や、申込方法は下の記事をご覧ください。(最初の方で貼ったリンクの再掲です)

TSUMUGIへの参加に当たっては、オンライン説明会への参加が必須となっています。
まずは気軽に参加してみて、フィーリングが合うかどうか確かめていただけたらと思います。

どこかでお会いできるのを、楽しみにしています!

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