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香りの記憶①

街を歩いていたり、何かしているときにふと感じる香りに記憶が蘇ることがある

香りの元がはっきりしているものの場合もあるし、なんの香りかわからないけどその香りを嗅ぐと遠い過去の記憶や風景が思い浮かぶ

その中で今は廃盤となった「資生堂vocalise(ヴォカリーズ)」という香水の香りを嗅ぐと蘇る光景や想い出がある


☆生まれて初めて買った香水「資生堂vocalise」


「vocalise」は1997年に資生堂から発売されたオード・パルファム
現在は廃盤で入手しようとするとメルカリなどで個人が出展販売している物を買うしかない

1997年の春に大学を卒業して留学費用を貯めるために派遣社員で働き始めた私はパソコンを触るのも初めてで、派遣会社の面接で「OSは何が使えますか?」と質問されて真顔で「書院やオアシスが使えます」とワープロの名前を答えていた(笑

それでも当時は派遣社員が引く手数多の時代ですぐに勤務先は決まった

仕事内容は単純作業でワープロで数字を打ち込むキーパンチャーと言えばいいのかな、とにかく「点キー」が打てればいい感じで、私の1日の処理件数は所属する課の中でもTOPに

しかも派遣社員ではあるけれど、仕事を頑張れば「インセンティブ」が毎月いただけて、その上、夏と年度末にボーナスがわりの商品券がいただけた

商品券の金額は業務成績で幅があり、私は1番高額な金額でいただけたので「社会人初のボーナスで両親にプレゼントする」という人並みなセレモニーも商品券で賄えた

そのとき、自分にも何か記念にと思い購入したのが「vocalise」だった

☆vocaliseと共にイタリアへ


1998年9月に念願のイタリア留学となったのだが、その際、「vocalise」をイタリアにも持参した

円柱をスライスしたようなフォルムのボトルは少し歪めてある

1997年に購入したものの「なんとなく」つけるのが気恥ずかしくて「イタリアなら使うかも」と思ってのことだった(笑

イタリアへ行くと「香水」は化粧品というより「日用品」的にみなさんお気に入りの香水を身に纏っているので、自分も気後れすることなく使い始めた

☆再び入手したいと思ったが・・・


香水を使い切って留学も終えて帰国後、「イタリアに関係する仕事」「デザインに関係する仕事」を探したがなかなか厳しい

なんせ美大卒業して「そっちの道」へ就職していないのでデザインに関しては「実務歴」がない イタリア語も「通訳」になるほどの語学力はないし、イタリア関連の会社でも「公用語は英語です」と言われ、英語が大の苦手な私には無理

結局、留学前に派遣され勤務していた会社が派遣事業も始めたということで、そちらの派遣会社から21年働くことになった企業で勤務することになる

時給×勤務時間(+残業)だけの給与、交通費も手当も賞与もない生活
「働けば働くほど」給与はいただけるのでとにかく働いた(とはいえ、楽しいこともたくさんあった)

それなりに充実した日々を送っていたある時、ふと「“vocalise“欲しいな。」と思ってデパートを訪れたら、なんと廃盤になっていた

今ほどインターネットが充実していない時代に、検索しまくるとヒットしたのが「香水マニア」が量り売りしているページで、そちらに「vocalise」があったのだった

さすが香水マニアで保存状態もよく、私は量り売りで買うことにした
正確な量と金額は今思い出せないが「割高」なのは確実で(笑
それでもどうしても欲しかったので

これが量り売りで買ったvocalise

どれだけ探していたか、なんで欲しいかを伝えてあったのでおまけで空の「vocalise」のボトルをつけてくれた

☆香りから甦る光景


探しに探して個人の香水マニアから量り売りで入手した「vocalise」
手元に届いて蓋を開けて・・・・・

「ハァ〜。。。この香りよ!この香り!」

もう、感激の一言だ

1997年に初めて買って再び手にしたのは2015年(2006年に廃盤になっている)
20年近くぶりに私の手元にやってきたのだから

そして甦る光景

◆池袋のデパート

当日の勤務先は池袋にあった
商品券をもらった夏の日、定時で退社してデパートへ向かう
まずは両親への贈り物を購入(何を買ったか覚えてない。笑)してから、化粧品のフロアへ向かう

フロアをうろうろして、資生堂のカウンターの1番目につくところに置かれた「vocalise」が目についた(発売の年なので資生堂でもイチオシだったんだろう)

透明のボトル、少し歪んだフォルムが美しい
香りもとても爽やかなのに甘く女性らしい

迷わず購入した

ちなみにネットで見つけた「vocalise」の香りの表現は

クールな透明感が、近づくほどに甘く官能的に、清楚にも妖艶にもパラドックスに香り、女性の内にある複数の感情やスタイルをクロスオーバーする香り

@cosmeより

◆フィレンツェのNovella宅のバスルーム

9ヶ月のイタリア留学のうち、最初の半年はシエナの外国人大学に通っていたが1995年、1996年の短期留学はフィレンツェだったので「やはりフィレンツェがいい」と思い、自力でフィレンツェの語学学校を探し、授業内容・学費とホームステイ先の相談を語学学校にする(今思えばよく交渉したな・・・)

そこで紹介してもらったのがNovellaだった
彼女の住むエリアはフィレンツェの中心からバスで10分程度の場所で、目の前には幹線道路と川があり、ちょっと行くと大型スーパーがあるような場所だった

2世帯分のマンションを間の壁をぶち抜いて1世帯にしているので広いリビングにはグランドピアノ、キッチンは1つ防音室にリフォームして趣味のコーラスを仲間と歌っていた

部屋数は5〜6部屋あってうち3室を留学生に間貸ししていた
私の部屋はマンションの中庭に面した部屋で窓があり、明るかった

今まで間借りした中で1番快適だった
壁はNovella自身で色を塗ったのだとか

驚いたのは間貸ししている各人用にバスルームがあったこと
写真がないのだが私のバスルームの壁も部屋と同じ明るい水色(スポンジでポンポンしたような感じ)で長細く一つ窓があって日中はとても明るかった

その洗面台に取り付けられていた白い陶器のトレーに「vocalise」を置いていたので、香りを嗅ぐと明るいバスルームの洗面台のトレーにある香水瓶を思い出す

当時別室を借りていたギリシャ人のモニカと

◆大好きな大型スーパー「エッセルンガ」への道

エッセルンガに行くときに香水つけていたからとかではなく、Novella宅のバスルームを思い出すとセットで思い出すのがマンション前の道をエッセルンガまでカートをコロコロ引いて歩いて行ったことを思い出す

季節は4月半ばか5月で街路樹の花?綿毛?がふわふわと宙を舞っていた(多分ポプラだったかな)

限りある留学資金での留学、オープンで買った航空券なのでやりくり次第で留学期間が短くも長くもなるので日頃の生活は倹約していた

だからマンションからバスで行く距離を行きだけは歩いて行った
帰りは1週間分のミネラルウォーターやトイレットペーパーなど重いものや嵩張るものを運ぶので流石にバス利用

「vocalise」の香りから前述の3つの記憶がいつも甦る

☆ボトル入りのvocaliseを入手


2015年に量り売りで購入したものはずっと使わずに冷蔵庫に保管して、時折出してきて香りを楽しんでいたが、やはり身に纏いたい

メルカリなどが盛んになってきた頃に「もしや?」と思って検索したところヒットした!

9割残っていて価格も7000円ととても良心的だったので即決購入した(通常50mlで6000円/1997年当時)

量り売りではなく、ちゃんとボトルに入ったものだから余計に嬉しい
実際届くと保存状態もよくで、なんと使いかけではあるもののミニボトルと未開封のボディクリーム(使用期限は過ぎているが多分使える。ということで)をおまけにつけてくださっていた

この光景だけでニマニマしてしまう

想い出の詰まった香り、香りを嗅ぐだけで幸福感を味わえる
多分、今も販売されていたら感じ方はまた違うと思う

◆念願のボトル入り「vocalise」を手にして身に纏っているのか?

実はもったいなくて量り売りの小瓶と一緒に冷蔵庫に保管されている・・・(笑

大切な私の「タイムマシーン」なのだ

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