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スタートアップがテレビに出るリアルーー #アベプラ 郭プロデューサーに聞く「取り上げにくい」ケースその理由

朝日メディアラボベンチャーズは、スタートアップメディア「BRIDGE」とスタートアップ広報向けのイベント「スタートアップPR Day」を共催しています。

メディア企業に由来を持つVCだからこそ実現できる幅広いつながりを生かし、毎月様々なメディアから「Media Talk」コーナーにゲストをお招きして業界のリアルをお伝えしています。

動画メディア「bouncy」の津田啓夢(つだ・ひろむ)編集長と、CNET Japanの藤井涼編集長のお二人が登壇した初回に続き、今回のゲストはABEMA Prime チーフプロデューサーの郭晃彰(かく てるあき)さん。

郭さんは2010年にテレビ朝日に入社し、情報番組ディレクターや社会部記者を経験した後の2016年に「ABEMA」開局に参加、夜帯のニュース番組『ABEMA Prime』のチーフプロデューサーを務めています。

モデレーターを弊社パートナーの山田正美が務め、ABEMAだけでなくテレビというマスメディアにスタートアップが取り上げられる意味や方法をお聞きしました。

本稿ではイベントの様子をポッドキャストにてお送りします。また、内容の一部を書き起こしにて公開します(本文の太字はモデレーター山田の質問、回答は郭さん。文中の敬称は一部省略しています)。


アベプラ、どう作ってます?

ABEMA Primeの郭晃彰チーフプロデューサー

取材テーマをどう選ぶか。などを教えていただきたいんですけど、テレビはどのような感じでしょうか?

郭:私は報道のことしか分からないですけど3パターンぐらいですね。ニュースと、情報・報道番組の中の特集っぽいものとドキュメンタリー。それぞれ制作のペースも違います。ニュースのコンテンツだと鮮度が悪い魚で食べる寿司はうまくないんで、今日伝えることはその日に決めて取材する。

特集は2〜3週間くらいです。取材先と「どういうシーンがありますか?」とお話ししながら、ちょっと余裕を持って作る。ドキュメンタリーは最低でも3カ月くらいで、NHKスペシャルなどは3年くらいかけて1時間作るみたいな世界だと聞きます。

アベプラは、他でも作れるようなコンテンツには興味がなく、新しいことにチャレンジする番組なので、まだ存在してないニュースの切り口とかを探してる感じになります。

テレビに出たいというスタートアップの声も多いのですが、どういう切り口があると取り上げやすいですか

郭:お手本があると扱いやすいです。ビジネス系だと東洋経済さんなどで既に記事があって、それをガイドに「あれとこれを取材すれば成立するな」というイメージを膨らませる。それが見えたら「はい、今日の仕事終わりました!」となります。お手本がないと踏み込めないディレクターも意外と多いです。もしくは、経営者か会社のメンバーが抜群に面白い!みたいな「人」や「キャラ」で売っちゃうパターンはありますよね。

食べチョクの代表、秋元(里奈)さんがよく露出されているようなケースですよね

郭:そうですそうです。Tシャツで出まくります!みたいな。彼女は人間的な面も面白いし、話も豊かだから、素晴らしいと思います。やはりシーンで描く場合、先ほどメルカリのお話がありましたけど、画面自体は別にテレビ的に映えるかというとそうではなくても、例えば家に引きこもって自分の家のものを切り売りして、なんとか15万円稼いでますという人がいたらちょっと映像で見たくなったりすると思うんです。

家の中に定点カメラがあって、今日はどこ行こうかなとか言いながら本棚から本を出して売って儲かりました、みたいな。そういうユーザーのシーンで再現したりするケースもあると思います。また、会社側を取材する「プロダクト開発の舞台裏」とかはテレビは大好きなんです。

自社のサービスがすごいです、という持ち込みはどうですか?

郭:クイックゲット(※)代表の平塚登馬さんと初めてお会いした時、「10分でコンビニ商品が家に届きます」といった話をされて「へぇ」と思ったんです。よくよく後で調べてみたら、コロナの自宅療養者の人の分析などをしていて、感染者が増えるといつもよりポカリが売れますとか、ゼリーのようなものが売れて、固形物が売れなくなるみたいなリリースを書いてたんです。

ニュース番組を作ってる僕の立場からしたらビンビンに刺されるんですよ。「まじか!」みたいな。コロナが増えてますと言わなくても、このデータをスケッチするだけで今の人の暮らしが見える。こういうケースは、結構多いなと思います。

※QuickGet:日用品が短時間で届く次世代型のデジタルコンビニ


スタートアップがマスメディアに出る意味とは?

ABEMA Primeの郭晃彰チーフプロデューサー(手前)と対談する朝日メディアラボベンチャーズの山田正美パートナー

スタートアップがマスメディアに出る意味をどう思いますか

郭:基本的にはやめた方がいいと思います(笑。全く得じゃない。叩かれますし、思ってないことを言わされたりということもあります。例えば、1時間ぐらいインタビューしても、番組で使うのは15秒だけってことは良くあります。僕たち制作者は「ここだ」というのを狙っていますが、それはスタートアップの皆さんが発信したいこと・言いたいこととは違うことが多いです。

もしメディアに出るというならば、そういう人たちと付き合うっていうことを強く自覚していただいてから、出た方がいいかなとは思います。

そうは言ってもメリットもあります(笑。例えば、企業の皆さんがメディアの人から言われて気付くこともあると思います。あなたの会社はここが面白いんだから、ここをアピールすればいいじゃないですか?みたいなことを指摘してあげることは、僕たちにできることだと思っています。

先日、支援先のスナックミーがテレビでポジティブに取り上げられたのですが、どういう観点が受け容れられるポイントでしょうか

郭:スナックミーってお菓子が届くサービスですよね。コロナ禍が続く今の時代に合っていて、家に配達するし、在宅ワーク中にお菓子を食べたくなる。その辺の要素が一番デカいと思います。よくプレスリリースで「いくら調達しました」とか見るんですけど、テレビではそこで評価できないんです。スナックミーやクイックゲットは、時代に合っていて描きたくなる企業っていう要素があるんじゃないかなと思います。

社会や時代の流れに乗っている、先取りしているという文脈の方が取り上げたくなる。それをどう伝えたらいいですか?

郭:メディアにプロダクトやサービスを売り込んだ時は、「断られてから」がチャンスです。「どうしたら取り上げてくれるの?」と、懐にガッと入って「どうしたら出れるんだ」っていうことを聞いちゃうのがいいと思いますね。例えば、僕が「〇〇みたいに紹介できたら取材できるかも」とアドバイスをして、その企業さんがそれを実現してくれたら、僕はやらないといけないですよね?つまり、責任を押し付けるんですよ、メディア側に(笑。

あと、みなさんは取り組んでるビジネスにおいては、専門家だと思うんです。そしてこちらは超素人なんですよ。テレビのことしか知らない人が多い。だから「あなたの専門家になりますよ」っていうアプローチは有効だと思っていて、制作者にとって「〇〇が分からない時は、この人に相談しよう」という存在になることが重要です。皆さんの専門分野をキーワードでタグ付けして制作者にインプットしちゃうのは大事だなって思います。

専門的な業界の動向や企業の情報をどうやって収集していますか?いきなりドアノックで話を聞いてください。って言われても困ると思うんですが

郭:この前、TwitterでクラウドワークスさんからDMをいただきまして、最初は「クラウドワークスです、こういうビジネスしてます」という内容だったんです。僕も「そうなんですね」って返して2、3日やり過ごしたら「あの成田修造がいます」って言われて。その瞬間にピカーンと反応したんです。成田悠輔さんブームの最中に、その弟さんを売り込んでくる。テレビ屋の心理を突いた素晴らしい広報だと思いました(笑。



セッション全ての様子はポッドキャストで公開しています。スタートアップの広報・PR担当の方はもちろん、兼務している起業家、経営者のみなさんもぜひ参考にしてみてください。



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